初優勝を狙うトヨタか、最多V目指すサントリーか? トップリーグ全勝対決がキックオフ!
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マイケル・フーパー(トヨタ自動車ヴェルブリッツ) (C)F.SANO
『ジャパンラグビー トップリーグ2021』第5節で全勝対決がラインナップされた。トヨタ自動車ヴェルブリッツ×サントリーサンゴリアス。今後のレッドカンファレンス上位争いを占うのはもちろん、プレーオフトーナメントに向けて重要な試金石となる一戦である。最後の『トップリーグ』で最多優勝記録更新を目指すサントリーと、初のタイトル獲得を目論むトヨタ自動車のそれぞれの現在地がわかる80分間になるだろう。
タイトルを見据える両チームだが、『トップリーグ』以降の対戦成績を見るとサントリーが15勝1分2敗と圧倒する。シーズン不成立となった昨季もサントリーが60-14で大勝している。トヨタ自動車の勝利は2010-2011季まで遡らなければならない。
通算成績は差がついたが、白熱した好ゲームを思い出すファンも多いだろう。『トップリーグ2018-2019』開幕戦では終盤までトヨタが25-20とリードするも、サントリーの怒涛の猛攻に遭う。攻めるサントリーに耐えるトヨタという構図の中、後半44分に姫野和樹主将(当時)がシンビンで一時退場……。数的不利に陥っても意地でもゴールラインを割らせないトヨタであったがとうとう後半49分、サントリーに認定トライを許し25-27の逆転負けを喫した。姫野は最後まで諦めないチームメイトの姿を見て涙を流したのだった。
2017-2018季第8節では後半19分までトヨタが31-13とリード。しかしサントリーのスタンドオフ(SO)小野晃征にPGを決められて後半35分、ついに31-32と逆転された。それでもトヨタは後半41分に再逆転のチャンスを得た。ハーフウェイライン超えた地点でトヨタがPGを獲得。だがSOライオネル・クロニエのキックはわずかに届かず、サントリーが32-31の薄氷を踏む勝利を手繰り寄せたのだった。
今季の両軍の戦いぶりを振り返ってみたい。トヨタ自動車は開幕戦で東芝ブレイブルーパスの猛烈な追い上げに遭うも34-33で逃げ切った。第2節では開幕戦の反省を生かし、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスを相手に47-29ときっちりゲームを締めた。第3節・Honda HEAT戦では粘り強いディフェンスを披露、ゲームをコントロールしチャンスを決め切り45-3の完勝。3月13日の第4節・宗像サニックスブルース戦では初めてオーストラリア代表現主将のフランカー(FL)マイケル・フーパーと元ニュージーランド代表主将のNO8キアラン・リードがスタメンで揃い踏み。開始2分、FLフェツアニ・ラウタイミの先制トライを皮切りに前半の内に7トライをマークし勝負を決め最終的には61-29と大勝した。
サニックス後のサイモン・クロスHCは前半の出来に満足したものの、「後半はラックなど密集でのプレーがうまくいかず、仕事をやり切れなかった。またオフロードをやり過ぎて、セットピースのチャンスを生かせず、相手に点を取られてしまった」と反省の弁を述べた。また、初めて同時出場したリード&フーパーについて、「リードはリーダーシップを体現してくれるプレーヤー。素晴らしいスキルを持ち、キャッチ&パス、キャリー、ラインアウトでリーダーシップを発揮し、チームへ付加価値を与える。フーパーはプレッシャー、キャリーで強みがある。特にセットピースでアタック・ディフェンスどちらでも細かいところでいい仕事をしてくれる。ふたりともチームにとても大きなインパクトを与えている」と評価した。
マン・オブ・ザ・マッチに選出されたフーパーは「前半は非常に満足をしている。強いモールや風を強みに生かして、いい形で前半を終えることが出来た。後半に関しては、サニックスの追い返しでの自分たちのディシプリンに課題が残った。個人としてはレッグドライブ、キャリー、タックルといったところでいいパフォーマンスは出来たのかな」と振り返るとともに、「このタイミングで1週間バイウイークがあることは、本当にいいこと。4連勝からいかに進歩していくか、どこがうまくいったか、どこがうまくいかなかったか、4試合通じてレビューを重ねて、次のサントリー戦につなげたい」と第5節を睨んだ。
3月23日のメディア対応にはクロンHCとラウタイミが登場。指揮官は「サントリーはすべてにおいてとても優れたチーム。どのポジションも選手層が厚く、ゲインラインを突破できる選手も多く、幅を使った鋭いアタックができる。チームとして成熟している」と分析し、「サントリーは東芝戦でも早いラックスピードからオフロードにつなげ、さらにラックスピードを上げていく攻撃を展開していた。そうさせないディフェンスが必要になってくる」と明かした。ラウタイミも「サントリーはすごくボールを動かすチームなので、それを止めることが必要。フィジカル面で勝てれば、勝機は十分あると思う」と同調した。
一方のサントリーは問答無用のアタッキングラグビーで4連勝をマーク。三菱重工相模原ダイナボアーズとの開幕戦ではウイング(WTB)テビタ・リーの5トライなど計11トライを量産し75-7と大勝。第2節はHondaの魂のこもったタックル、粘り強いディフェンスに手を焼きながらも31-14ときっちりボーナスポイントも獲得した。第3節・サニックス戦もセンター(CTB)ケレビの3戦連続トライ、オールブラックスの司令塔ボーデン・バレットの1トライ10ゴールなどで75-10と圧倒。
極め付けは前節だ。3月13日わずか12分での雷雨中止を受けて、20日に仕切り直しとなった東芝との第4節再試合である。サントリーは東芝が規律を乱しペナルティをおかせば、すぐさまPGで加点、バレットの3連続PGで主導権を握った。またバレットの多彩なキックで東芝の前へ出るディフェンスの出足を止めると、スピーディな連続攻撃やバレットのセンスが光るパス、中村亮土&ケレビのCTBコンビやNO8テビタ・タタフら個の能力を生かした突破で一方的にライバルを攻め立てる。ケレピの2試合連続2トライやタタフのハットトリック、バレットの24得点など府中ダービーで73-5の記録的大勝を収めたのだった。
試合後、ミルトン・ヘイグ監督は「今日の試合結果については大変満足している。ボールを持っている時も持っていない時も、相手にいいプレッシャーをディフェンスで与え、いいターンオーバーもいくつかできた。今日はチームの総合力が出る形になった。これはノンメンバーを含めた選手たちがハードワークをしてくれた結果」と選手たちを称えた。
第4節の中止・再試合によって貴重な休息がなくなった影響について問われたが、指揮官は「今週少しローディングは抑えた形でのトレーニングをした。ここからビッグマッチが続く。チーム内の競争がチームの総合力を生む。ポジションごとにしっかりチーム内の競争をした上で結果につなげていきたい」と選手層の厚さでカバーすると語った。
ピッチ上で異彩を放つSOバレットが「来週はトヨタ戦があるが、しっかり自分たちのやっているシステムを信じてプレーすること。また、自分がチームに対して何か付加価値を与えられることがあれば、それをやりたい」とコメントすれば、マン・オブ・ザ・マッチに選出されたタタフも「来週の試合に向けてしっかり準備したい。相手にはインターナショナルレベルのプレーヤーがいるのでバトルに負けないようにがんばっていきたい」と前を向いた。
キックオフ48時間前に発表される試合登録メンバーは以下の通り。
【トヨタ自動車】
1三浦昌悟、2彦坂圭克、3淺岡俊亮、4秋山大地、5マイケル・アラダイス、6吉田杏、7マイケル・フーパー、8フェツアニ ラウタイミ、9茂野海人、10ライオネル・クロニエ、11ヘンリー ジェイミー、12マレ・サウ、13ロブ・トンプソン、14高橋汰地、15ウィリー・ルルー、16加藤竜聖、17高橋洋丞、18伊尾木洋斗、19ジェイソン・ジェンキンス、20タウファ オリヴェ、21滑川剛人、22岡田優輝、23チャーリー・ローレンス
【サントリー】
1森川由起乙、2堀越康介、3垣永真之介、4ハリー・ホッキングス、5辻雄康、6ツイ ヘンドリック、7ショーン・マクマーン、8テビタ・タタフ、9流大、10ボーデン・バレット、11テビタ・リー、12中村亮土、13梶村祐介、14中野将伍、15尾﨑晟也、16中村駿太、17石原慎太郎、18セミセ・タラカイ、19飯野晃司、20小澤直輝、21齋藤直人、22田村煕、23サム・ケレビ
トヨタはリードがメンバー外となったことを受け、ラウタイミは本職のNO8でのスタメン出場となり、サントリーはCTBの先発を梶村が勝ち取り、ケレビが後半からの登場となる。
果たして、トヨタ自動車がタイトルにふさわしいチームだと証明するのか、サントリーの快進撃が続くのか。全勝を守るのはどっちだ。『トップリーグ2021』レッドカンファレンス第5節・トヨタ自動車×サントリーサンゴリアスは3月27日(土)・パロマ瑞穂ラグビー場にてキックオフ。
取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)
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