『君の名前で僕を呼んで』監督が初のTVドラマに初挑戦！　主演の若手俳優ふたりがその裏側を語る。

10代の少年フレイザーは軍人である母親の異動により、イタリアの米軍基地で暮らすことに。新しい環境に無関心なフレイザーだったが、隣に住むケイトリンと出会い、やがて友情を育むことに……。『君の名前で僕を呼んで』などで知られるルカ・グァダニーノが製作総指揮と脚本を務め、全8話の監督も手がけた『僕らのままで／WE ARE WHO WE ARE』。アイデンティティの探求に身を投じながら、青春の喜びや痛みと向き合う若者の姿を描いた本作で、主人公のフレイザーとケイトリンを瑞々しく演じたジャック・ディラン・グレイザーとジョーダン・クリスティン・シモンにリモートインタビューを行った。

──まず、出演が決まったときのことを教えてください。
ジョーダン　起用を知ったのは、マクドナルドのドライブスルーでフィレオフィッシュを頼んでいたとき（笑）。店員さんに向かって、「ドラマ出演が決まった！」と思わず叫んじゃった。でも、そのときはとにかくワクワクして、本当のすごさを分かっていなかったと思う。最初の出演作がHBO作品だなんてね。キャスティングのサイトで募集を見つけた母に感謝してる。

ジャック　すごくクールで最高なことだと思った。これまでの作品への出演が決まったときと同じようにね。でも、フレイザーを演じるのは大きな挑戦でもあった。役者としても、自分の人生においても。フレイザーはすごくリアルな人間で、共感することができたからこそ頑張らなきゃいけないと感じたんだ。

──このドラマでは、等身大の10代の姿が描かれていますね。 ジョーダン　ケイトリンはジェンダーアイデンティティに関する自問を抱えている。周りの環境に適応できるかどうかの問題もね。武闘派の父親に息子のように扱われていて、男性が支配的な領域にいてほしいと明らかに望まれているの。

そんなケイトリンが（男性の多い）米軍基地で暮らしている設定は物語に大きなインパクトをもたらしているし、他の設定では彼女の話をここまで見せることはできなかったと思う。

ジャック　この物語では、どの登場人物も何かを抱えている。以前、軍基地で育つ子供たちの動画を見たのだけど、彼らは規則の多い環境で暮らしているからこそ、反抗心を持っていた。（外とは隔たられた）泡の中にいる感覚もあるんじゃないかな？　大人たちもそう。社会の期待に囚われてしまっているんだ。

そんな中、登場人物たちはバンドエイドを少しずつ剥がすように自分を発見していく。結局のところ、人は“（原題である）We Are Who We Are（他の何者でもない自分）”だからね。

──演じるうえで難しかったことは？

ジョーダン　難しかったけど、難しくなかったとも言えるかな。演技でも音楽でも、何かに取り組むときは基本的に自分の経験や似たようなことを参考にするものだけど、私自身にはケイトリンのような経験がなかったし、経験している人に会ったこともあまりなくて。

そういった意味では難しかったけど、それが助けにもなった。ケイトリンが学んでいくのと同じように、私も学ぶことができたから。学びながら自分を知っていくようなものだったし、ほろ苦くも最高の体験だった。

──外見はどんなプランで役作りを？　『IT／イット』シリーズや『シャザム！』でのジャックを知っている人は、きっとフレイザーを見て驚きますね。

ジャック　フレイザーはファッションセンスがいいから(笑)。僕の好みとも完全に一致している。今はね。以前はいつも同じズボンを履くタイプだったけど。「おしっこの匂いがしちゃうまでは同じズボンを履いてOK！」という哲学があったんだ。でも、今は毎日がサンローランかセリーヌ。ウソウソ。おしっこの話もウソ。

フレイザーのブロンドヘアもかっこいいでしょ？　ジャックとしては絶対にしないけど、だからこそしたかった。役に深く入り込む助けになるし。外見はフレイザーという役を作るパズルの重要なピースなんだ。ネイルもね。ブロンドは僕のアイデアじゃないけど、ネイルは僕がきっかけを作った。ネイルをしていた僕を見て、ルカ（・グァダニーノ監督）が気に入ってくれたんだ。

ジョーダン　外見やファッションに関して、私はこの作品とケイトリンからかなり影響を受けたと思う。出演する以前は、わりとフェミニンなスタイルが多かったの。ある意味、そういう格好をしなきゃいけないと思っていた。

でも、今はそう思わない。以前より着やすい服を着ることが多いし、もっとマスキュリンなスタイルも楽しんでいる。マスキュリンとフェミニンを混ぜた感じかな。新しいスタイルをいろいろ試しているところよ。

ルカ・グァダニーノ監督はいつだって背中を押してくれた

──ルカ・グァダニーノ監督とのお仕事はいかがでしたか？

ジョーダン　本当に懐が深い人で、いつだって背中を押してくれた。脚本と少し違っても恐れないでいいと感じさせてくれたの。撮影当初の私は、脚本どおりに演じないと怒られるんじゃないかと勝手に思っていたのに。

彼は常にオープンだったし、だからこそ私もオープンになれた。誰かを叩くのも、突然駆け出すのも、何だって試せるくらいにね。それが本当に気持ち良かった。

ジャック　ルカは言葉の使い方や演出の仕方、仕事の取り組み方が斬新で、緻密でもあって、ジョーダンの言うとおり懐も深い。僕はいつか監督もしたいから、彼から学ぶことは多かった。

僕はルカに結構依存していて、何か映画を観たら、彼がその映画を好きかどうか聞くんだ。もし「好きじゃない」と言われたら、「うん、サイテーだよね！」とかって合わせる(笑)。その後、「…ええと、何で好きじゃないの？」と聞くと、彼は理由を教えてくれるんだ。「なるほど！　頭がいいなあ」と思う理由をね。

何に対しても洞察力が深いルカの意見を、僕はいっぱい聞いてしまった。そうやって、役者と監督としても、友達同士としてもすごく仲良くなったんだ。

──監督とあなたが映画談義をしたように、『ラストタンゴ・イン・パリ』や『ブルー・ベルベット』など、フレイザーにもお気に入りの映画がありますね。その他、クラウス・ノミの音楽など、劇中に登場するポップカルチャーが印象的です。

ジャック　フレイザー用のプレイリストを作ったんだ。クラウス・ノミ、フランク・オーシャン、カニエ・ウエストから無名のアーティストまで、フレイザーが聴く音楽を入れてね。あとは、ジョン・アダムズも。

撮影前、僕はアーバノ・テルメという場所に泊まっていて、ひと月ほど誰とも会わなかった。いつもはキャストと一緒にワイワイ過ごすタイプなんだけど。役をとにかく理解したくて、ホテルの周りや町をひとりで歩き、フレイザーとしてコーヒーを飲み、人を眺めたりしていた。ちょうどそのとき、通りがかった年配女性ふたりがジョン・アダムズの曲を聴いていて、フレイザーとしてプレイリストに入れたんだ。

ジョーダン　ちょっと恥ずかしいのだけど、私は劇中に登場するポップカルチャーのことをあまり知らなかったの。フレイザーの部屋にポスターが貼ってある映画のことも知らなかった。でも、ケイトリンもあまり知らなかったから、それでいいかなって。

──個人的にはどんな作品が好きですか？

ジョーダン　古い映画をよく観るかな。ひとりっ子だからいつも大人と一緒で、子供向けの作品よりは大人が観たり聴いたりするものに親しんできた。最近観たのは『いつか見た青い空』ね。すごくいい作品で、みんなに薦めたいくらい。

ジャック　一番好きな映画はたぶん『グッドフェローズ』。他にも好きな作品はあるんだけど、今は出てこないや（笑）。バンドはドアーズかな。レッド・ツェッペリンやオールマン・ブラザーズ・バンドも大好きで、クラシックロックが一番好きな音楽のジャンル。ラップ、クラシック、ジャズ、ブルースも好きだけどね。あとは……、（リズムを口ずさみながら）ジョーダン、これはなんて言うんだっけ？

ジョーダン　テクノ？

ジャック　そうそう、今はEDMも好き。それにレディー・ガガも好きだし。なんでもいけるよ（笑）。

取材・文：渡邉ひかる

『僕らのままで／WE ARE WHO WE ARE』

【配信】Amazon Prime Videoチャンネル 「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」
字幕版： 2月18日(木)より配信中（毎週木曜更新）
※4月8日(木)より最終話配信開始
公式サイト：https://www.star-ch.jp/drama/wearewhoweare/

【放送】BS10 スターチャンネル
5月5日(祝・水)より 毎週水曜夜11:00 ほか
※5月5日(祝・水)字幕版 第1話 無料放送

公式サイト：https://www.star-ch.jp/drama/wearewhoweare/

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