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【おとな向け映画ガイド】

本好きにはたまらない『ブックセラーズ』、ネット性犯罪の実態『SNS-少女たちの10日間-』、やばすぎるシリアルキラー『スプリー』の3本をおすすめ!

ぴあ編集部 坂口英明
21/4/18(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(4/23・24)に公開される映画は12本。コロナ禍の影響もあり、まだまだ少ない本数です。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』『るろうに剣心 最終章 The Final』『BanG Dream! Episode of Roselia I:約束』の3本、中規模公開とミニシアター系の作品が9本です。このなかから、ぴあ水先案内人がオススメする3本を紹介します。

本に恋をして
『ブックセラーズ』



おしゃれな本屋さんで、本にまつわるグッズが売られていたりします。そのなかで、STRAND というロゴが入ったトートバックをみかけることがあります。ニューヨークの老舗古書店の店名です。この映画はSTRANDを始めとするニューヨークの本屋さんや、希少本を扱うブックディーラー、作家など、本にかかわる人たちを通して、本そのもののすばらしさを謳うドキュメンタリーです。

日本にも神保町の古書街がありますが、その店頭の商売だけなく、プロ同士の売買には多くの大取引があります。かつて、弘文荘という無店舗で国宝級の古典籍を扱う古書店主の反町茂雄さんを取材したことがあります。古武士か学者のような風格のディーラーでした。彼に似た感じのブックハンターたちが多く登場します。レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿の取引は約28億円のビッグ・ディールで、競り落としたのはビル・ゲイツだった、といった本にまつわるトリビアでいっぱいです。悲しいことですが、この業界が黄昏を迎えていることもわかります。

ニュー・ジャーナリズムの旗手といわれたゲイ・タリーズ、『ラスト・ショー』『ブロークバック・マウンテン』のラリー・マクマートリーなど、作家も多くでてきます。なかでもニューヨークの古本屋さん事情や、本そのものについてうんちくを傾け、コメントも、毒舌のスタンダップコメディアンのようにおかしいのがエッセイストのフラン・レボウィッツです。

「本の上にグラスを置くなんて、死刑よ」「私はぜったいに本は捨てないわ」…。彼女のコメントは最後の最後まで続きます。この映画をみて、レボウィッツに興味を持っても、日本では、例えば代表的なエッセイ『嫌いなものは嫌い』なんて本は絶版ですし、amazonの古書でも扱いなしです。皮肉なことに、いまをときめくNetflixでデジタル配信されているマーティン・スコセッシのドキュメンタリー『都市を歩くようにーフラン・レボウィッツの視点ー』でのみ見ることができます。この作品も、おすすめです。

【ぴあ水先案内から】

池上彰さん(ジャーナリスト)
「……この作品は、次第に姿を消していくリアル書店への鎮魂歌のようでもありながら、電子書籍の時代になっても確固として残る紙の本への愛の告白にもなるドキュメントです。……」
https://bit.ly/2RBOEH4

渡辺祥子さん(映画評論家)
「……本の素晴らしさを語る書店の主人やコレクター、書評家を見せる、本好きの人のためのドキュメンタリー……」
https://bit.ly/3tpQVTy

伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)
「……ブックセラーとは探検家。映画的に言うならインディアナ・ジョーンズってとこ。そしてその本の魅力を引き出す工夫もブックセラーのセンス次第…」
https://bit.ly/3uSxl2S

植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……登場する書店主いわく「本に正しい家を見つけてやるのは医者が患者を治すのに似ている」。そんな彼ら彼女らの本への愛情……」
https://bit.ly/3slhb0b

高松啓二さん(イラストレーター)
「……。やっぱ古本屋はいいなあ!」
https://bit.ly/32ibLso

村山匡一郎さん(映画評論家、大学講師)
「……書籍の取引や書店をめぐる裏話や歴史的エピソードが次々と描かれ、本好きならワクワクするほど堪らない世界である。……」
https://bit.ly/32ffren

禁断のリアリティショー
『SNS-少女たちの10日間-』



おとり捜査風ドキュメンタリーというか、これはまた、すさまじい内容の映画です。10代の若者が、SNSにより、どれほど性犯罪の危険にさらされているかを告発しているのですが、その手法は大胆で、少女にむらがる大人たちの性欲も尋常なものではありません。

2017年、チェコ。撮影スタッフは、12、13歳想定で少女3人の偽アカウントを巧妙に作り、接触してくる男性とのやりとりをカメラに収めていきます。少女役を演じるのは3人の女優(18歳以上)。らしく見えそうな女性をオーディションで選びます。さらにスタジオに、ディテールに気を使った3人の部屋をセットとして用意します。登録後たった5時間で、83名の成人男性がコンタクトしてきます。

それから10日間。なんと2458人の男たちが、10代と知りながらアプローチ、その多くが性犯罪に近い行為に及んだのです。撮影には、精神科医、生化学者、弁護士など、バックアップスタッフを用意、興味本位でないことはわかります。映像にはぼかしが入っていますが、これを生で見せられたらと思うとぞっとします。

【ぴあ水先案内から】

池上彰さん(ジャーナリスト)
「……この映画は、幼い娘を持つ親に対し、子どもがネットでどんなやりとりをしているかに無関心だと、どんな危険が待ち構えているかを警告しています……」
https://bit.ly/32js5cm

村山匡一郎さん(映画評論家、大学講師)
「……SNSが常態化した今日の子供たちの危機を訴える効果はあるとはいえ、その作為性は、隠し撮り手法の延長にある盗撮に似て、倫理的な問題を改めて浮上させないだろうか。……」
https://bit.ly/3tyLW3j

ライドシェア・アプリ連続殺人鬼!?
『スプリー』



これはフィクションですが、SNS時代ならではの設定と内容、毒気のきいたアクション・スリラーです。「スプリー」というのはライドシェア(相乗り)アプリのこと。アプリで申し込むと近くを走る契約者がそれに応えて車に乗せてあげるというサービスです。

そのスプリーのドライバー、名前はカート。みためは普通ですが、SNSにどハマりしていて、フォロワーを増やしたいがために、乗客の殺害現場をライブストリーミングで実況中継しようと思いつき、決行する、そんな内容です。狂っています。

ドライバーもおかしいし、乗ってくるお客もへんなのばかり。映像は、カートがライブ中継用にセッティングした車載カメラのものから、客のスマホで撮った映像、SNS画面など入り乱れます。みんながみんな、どうしたらバズるかにいのちをかけていて、笑えます。

アメリカ・インデペンデント映画シーンの晴れ舞台、サンダンス映画祭でのプレミアでバカウケ。小規模公開から始まり、バスりに成功したというやんちゃな作品です。監督はウクライナ出身のユージーン・コトリャレンコ。これまでもビデオチャットを使った野心的な作品で知られています。彼の作品が日本で上映されるのはこれが初めてです。カートを演じたジョー・キーリーはInstagramのフォロワー数が700万を超える人気者、次回作はディズニーの『フリー・ガイ』という注目の俳優です。

首都圏は、4/23(金)からヒューマントラストシネマ渋谷他で公開。中部は、4/23(金)からセンチュリーシネマで公開。関西は、5/7(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。

【ぴあ水先案内から】

佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)
「……「ああこういう人、日本のSNSにも確かにいるなあ」と思わせる妙な説得力がすごい。……」
https://bit.ly/32hhWg9

相馬 学(フリーライター)
「SNSの普及により承認欲求なる言葉が、しばし聞かれるようになったが、本作が描くのはその暴走だ。……」
https://bit.ly/3dlWP2B