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第4回:今後のマーベルを楽しむ上で『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』が“必見”の理由とは?

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ディズニープラスで独占配信中のオリジナルドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、新エピソードが公開されるたびにファン層を拡大し、先ごろ全エピソードがいつでも視聴できる状態になった。

過去のシリーズを知らなくても楽しめる間口の広い物語、他の映画・ドラマでは見られない“本作ならでは”のアクションの数々、そして私たちが自分の問題として考えられるテーマが展開される本シリーズは、マーベル入門編としても楽しめるだけでなく、今後のマーベル作品を語る上でも絶対にハズせないものになった。

本作が描くもの。それはマーベルが10余年に渡ってこだわり続けてきたもの。つまり、“変化=成長”と、何があっても決して“変わらない”信念の物語だ。

マーベル作品が描く“変化=成長”と”変わらない信念”

様々な能力を持ち、熾烈な戦いに身を投じる登場人物たちを描いたマーベル作品は、基本的に“変化”していく者たちの物語だ。

平凡な青年ピーター・パーカーはある日、偶然に不思議なクモに噛まれたことで、特殊な能力を得てスパイダーマンになった。富豪にして天才発明家のトニー・スタークは誘拐・監禁された場所で脱出をはかるべくアインマンになるスーツを開発する。貧弱な青年スティーヴ・ロジャースは愛する人々を守るため、“スーパーソルジャー計画”に参加し、キャプテン・アメリカと呼ばれることになる。驚異的な力を手にしたことで変化し、そのことで大いなる責任や困難に立ち向かい、成長を遂げていく。私たちも年齢を重ねるごとに悩みの種が少しずつ変化していくように、マーベルのキャラクターたちも戦い、成長することで、新たな困難に向き合うことになる。

マーベル作品を長年に渡って見続けているファンが多いのは、敵が変化するだけのワンパターンな物語ではなく、登場人物が成長し、その度に問題や立ち向かう壁が変化していくからだ。その一方で、マーベルの登場人物たちはみな、どれだけ強くなっても、どれだけ厳しい状況になっても“変わらない”信念や想いを抱き続けている。

トニー・スターク=アイアンマンはスーツをバージョンアップさせ、世界中に顔を知られるヒーローになるが、いつだって反骨精神を捨てず、愛するペッパーには頭が上がらない。ピーター・クイル=スター・ロードは神にも匹敵する力を持つ実父の誘いを断り、銀河一の落ちこぼれチーム=ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと共に行動することを選ぶ。何が起こっても、どれだけの力を手にしても、変わらない信念がある……私たちはその“ブレない”姿勢にエールをおくるのだ。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の主人公コンビ、サム・ウィルソン=ファルコンと、ジェームズ・"バッキー"・バーンズ=ウィンター・ソルジャーも、変化と変わらないことの間で揺れ動いている。

誰もが愛するヒーロー、キャプテン・アメリカからシンボルの盾を受け継いだファルコンは、自分がその立場にふさわしい人間になれるのか自信が持てず、盾を博物館に寄贈することを決める。しかし、盾は新しいキャプテン・アメリカ=ジョン・ウォーカーに引き継がれ、ファルコンは戸惑う。なぜなら初代キャプテンと行動を共にし、その想いを引き継いだのは他でもない自分だからだ。

一方のウィンター・ソルジャーも、変化することに向き合う日々をおくっている。かつて暗殺者として活動していた彼は、自身の過去に向き合い、その罪をつぐない、前に進もうとしている。彼は親友のスティーヴ・ロジャース=キャプテン・アメリカの信念や想いを共有している。自分はもう暗殺者ではないのだ。しかし、過去に向き合う道のりには痛みが伴い、孤独や苦しさが彼を襲う。

確かな想いを胸に秘めたまま、変化の一歩を踏み出せないでいるふたりの前に、ある事件が起こる。

最強のコンビが立ち向かう“絶対的な正義や悪が通じない迷路”

始まりは、“フラッグ・スマッシャーズ”と呼ばれる謎の集団の出現だった。サノスによってある時期、全宇宙の生命の半分がこの世から消えていたが、アベンジャーズの活躍によって彼らがこの世に帰還した時、世界は“残された者”と“消えて戻ってきた者”に分断され、社会の様々な場所で歪みや格差、問題が起こっていた。フラッグ・スマッシャーズは、国境や境界のない“ひとつの世界”を目指して活動する武装集団で、難民を救うと宣言して物資の強奪を繰り返している。

その正体が完全に掴めぬまま、彼らに接触したファルコンとウィンター・ソルジャーはそこでキャプテン・アメリカのような驚異的な能力をもつ敵に遭遇する。キャプテンはその昔、超人血清を投与されたことでパワーを手にしたが、その技術や血清はもうこの世に存在しないはずだ。なぜ、彼らはこんな力を? ふたりは世界各地を飛び、その手がかりを探す。しかし、苦境にあえぐ人々を支援し、物資を与えてくれるフラッグ・スマッシャーズは世界中に支援者がおり、捜査は思うように進まない。

ファルコンとウィンター・ソルジャーが彼らを追うごとに、衝撃の事実が次々に明らかになっていく。フラッグ・スマッシャーズがスーパーパワーを手に入れた謎を追う正体不明の犯罪組織、捜査の過程で明らかになった“政府が隠し続けてきた衝撃の過去”、そしてテロリストの行方を追うワカンダ(ブラック・パンサーの故郷)の人々……物語は複雑に絡み合い、ふたりは何度も絶体絶命の危機に立たされる。

ポイントは、この物語は我々が生きている現実の世界と同じく“明確な悪”がいないことだ。フラッグ・スマッシャーズは暗躍するテロ集団だが、その行動を支援する人たちが世界中に存在する。博物館から取り出された盾を受け継いだ男ジョン・ウォーカーは、二代目キャプテン・アメリカとして行動を開始するが、その重圧に押しつぶされて何が正しい行為なのか見失っている。ファルコンとウィンター・ソルジャーも捜査が進展しない苦しさから超法規的な手段で情報を得ようとする。

この物語には絶対的な正義もなければ、絶対的な悪もない。だから次のエピソードで何が起こるかまったく予想できないスリリングさがあるのだ。

「私たちは、重要なアイデアすべてをキャラクターたちに入れ込むことで、観る者を倫理的に“グレーな領域”につれていこうとしました」と本シリーズを手がけたカリ・スコグランド監督は語る。「だから、私はヴィラン=敵役が平面的なものにならないようにしたかった。敵役が話すことの多くは理にかなっている。それがどのようにして暴力的で、止めなければならないものになっていくのかが重要なんです」

ファルコンとウィンター・ソルジャーが力を合わせて、敵をブチのめすだけでは物語が終わらない。登場するすべてのキャラクターに正義があり、それらが物語の中で衝突し、ボタンの掛け違いがあり、事態は観客の予想外の方向に転がっていく。だからこそ本シリーズは初見ではその展開を迷路をめぐるように楽しみ、リピート鑑賞では細部に仕掛けられた葛藤や迷いを見つけていくことができるのだ。

「私たちが今作で取り組んだテーマは、どんな映画やヒーローものでも見ることができないものだと思います」(スコグランド監督)

クライマックスは必見。今後のマーベル作品に欠かせない“新キャラクター”とは?

さらに注目すべきは、誰もが息をのむアクションシーンの数々だ。多くのアクション映画では登場人物たちが銃撃戦をするか、素手で格闘するか、カーチェイスを繰り返すが、本シリーズでは瞬時に折り畳み可能な翼をつけたファルコンと、片腕を改造されたウィンター・ソルジャーの設定や能力を生かした“ここでしか見られない/描けないアクション”が次々に登場する。

劇中で敵に対峙したファルコンは、単に空を飛ぶだけでなく、相手と格闘中に素早く宙を舞い、飛び出す翼で相手に攻撃を加え、絶体絶命の危機でもとっさの判断で仲間や協力者と通信し、即席のチームを結成し難局を解決する。ウィンター・ソルジャーも驚異的な速度で相手に近づき、改造された腕を駆使して敵に立ち向かう。このふたりにしかできない、ふたりの能力だから可能になったアクションシーンは一度ならず二度三度と楽しめ、観る度に新たな発見があるはずだ。

さらにふたりは最初こそソリが合わないが、共に行動し、共に戦う中で最強のコンビになっていく。ふたりが力を合わせて、時に連携しながら戦うアクションシーンも必見だ。

物語はクライマックスを迎えるにあたって一気に加速し、それまで積み上げられてきた伏線やキャラクターが怒涛の勢いで束なり、巨大なドラマを生み出していく。

ファルコンは、キャプテン・アメリカから一度は受け取った盾を自ら手放した。しかし、熾烈な戦いの中で自分の中に確かにある信念を改めて確認し、その想いに呼ばれるようにして星条旗の盾は再び、彼のもとに戻ってくる。ウィンター・ソルジャーはファルコンと共に戦う中で、自分を苦しめる過去に向き合い、親友キャプテン・アメリカの意思を引き継ぐために自分ができることを発見する。

そして、シリーズの結末で私たちは“キャプテン・アメリカの意思が生き続ける瞬間”を目撃するだろう。それは変わらない信念を持ちながら、苦しみの中で変化・成長していく登場人物たちのドラマによって描かれる。かつてマーベルの人気ヒーローが集結した最強チーム“アベンジャーズ”を率いていたリーダーはキャプテン・アメリカだった。つまり、本作の結末は、これからマーベル作品に決定的な影響を与えるはずだ。今後のマーベル作品を楽しむ上で、本シリーズは“絶対にハズせない”と断言できる。

ちなみに本作は、壮大なユニバース、緊迫感のあるドラマを描いてはいるが、観客がキャラクターを身近に感じ、共感したり、一緒に行動しているような“親近感”を感じさせてくれる不思議なシリーズでもある。ファルコンを演じたアンソニー・マッキーは語る。

「今の時代に繋がっている設定の中にキャラクターを入れるのは、とても理にかなったことなんだ。そうすることで、観客とキャラクターの間に関係が生まれ、一緒に成長することができる。キャラクターが前に進む時、観客も彼らと共に前に進んでいくだよ」

まだ観ていない方はシリーズ第1話から、すでに全話を視聴した人は改めて、ファルコン&ウィンター・ソルジャーと共に歩んでほしい。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
ディズニープラスで全話独占配信中

(C)2021 Marvel.