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シルビア・グラブ、熱い思いを胸に挑む『日本の歴史』再演

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インタビュー

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シルビア・グラブ 撮影:藤田亜弓

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歌って踊って日本の歴史を駆け抜ける!? 三谷幸喜の作・演出、荻野清子の音楽によって誕生し、絶賛を博したオリジナル・ミュージカル『日本の歴史』が帰ってくる! 卑弥呼の時代から太平洋戦争までの約1700年にわたる日本の歴史をギュギュっと詰め込み、そこにテキサスの家族の歴史物語も重ね合わせていく斬新な構成、耳に残るキャッチーなメロディと軽妙なダンス、それらをキャスト7人で華やかに、またしっとりと魅せていくゴージャスな舞台。始まりから終わりまで休みなし! の7人のひとり、三谷の熱き信頼を受けるこの人、シルビア・グラブに、再演に懸ける思いを聞いた。

7人で60役以上を演じた初演時の舞台裏

――大好評だった『日本の歴史』が再登場! シルビアさん扮する織田信長にまた会えることが嬉しいです。

ええ、信長にも、西郷どんにも(笑)。再演の話は結構早い段階から出ていて、中井貴一さんなどもとても乗り気でいらしたんですよね。また皆が同じ気持ちでこの再演に挑める、それが一番嬉しいですね。

――そもそも三谷さんが、シルビアさんの織田信長を切望したことから始まった舞台でもあると伺っています。

『日本の歴史』をやる前から、「シルビーには信長をやってほしいんだよね!」ってずっと言われていたんです。この人は何を言っているんだろう……って思っていて(笑)。初演の時に三谷さんが「歴代一番の信長だ!」って言ってくれたんですけど、そんなわけないでしょ!? って思いながらやっていました(笑)。でもすごく楽しかったですね。

――まずは初演を振り返っていただきましょう。

とにかく、台本を最初に開いた時に……『日本の歴史』なのにテキサスかいっ!と(笑)。もうその瞬間からツッコミどころ満載でした。“テキサス編”と“日本の歴史編”、ふたつの内容が行ったり来たりする構成で、台本の頭に役名がたくさん書いてあるわけですよ。役者は7人しかいないのに、何だこりゃ!? と思いましたね。ひとり何役やることになるのかと……。私が演じる歴史上の人物は、卑弥呼以外、全員男ですし(笑)。

実際に稽古でやってみると、とにかく休む場がない。舞台からハケてもすぐに着替えて、10秒とかで次の場面に出なきゃいけなかったりするので、あれ、今、私はどこで、誰をやっているんだっけ!? って(笑)。それに慣れるまで時間がかかりました。

ただ、わりと稽古のスタートが早かったので、とにかく台詞、歌詞、振付を全部体に入れ込んで、通し稽古の時間をたくさんとったんです。衣装合わせも早い段階でやって、おかげでどうにか間に合った、という感じでしたね。本当に余裕はなかったんですけど、舞台稽古に入ってから、ほかのキャストの皆さんのメイクとカツラと衣装をつけた姿を見たら、最高に面白かったですね(笑)。(宮澤)エマの平清盛なんて最高! 何なの、あの可愛さは!って。中井さんの女装も、なかなか見られないですよね。また、今回の再演には残念ながら出演しませんが、川平慈英の女装がブサイクでね〜!(一同笑)こんなに女装が似合わない人がいるんだ!ってくらい面白かったです。

――再演では、川平さんのポジションに瀬戸康史さんが入られますね。

そう、だから絶対にキレイになっちゃう! 誰よりもキレイになっちゃうかもしれません。瀬戸さんはずいぶん早くから歌稽古をやられているみたいで、すごくやる気を感じますよね。好印象です(笑)。

今こそ深く響く「結局因果は繰り返されていく」というメッセージ

――初演時の印象的なエピソードなどがあれば教えてください。

やっぱり、中井さんが歌って踊るということですよね。一番最初の稽古の時、とても緊張されているのが伝わって来て。こんなにベテランの方でも緊張するんだ! と、ちょっとホッとしたことを覚えています(笑)。あと、“日本の歴史編”のほうで方言を喋らなくちゃいけないんだけれど、最初のうちはまだ指導も受けていないから、あまりに酷かったんです(笑)。

だって鹿児島弁なんて喋ったこともないし〜と思いながら私もやっていて、慈英の京都弁も酷くて、それを中井さんが笑い転げながら見ていましたね。「皆、このまま舞台に立って欲しい」って(笑)。皆で大爆笑して、それで一気に打ち解けたような気がします。誰にも不得意なものはあるよ、というスタートですね。中井さんが「同志だから、皆で頑張っていこう」というオープンな空気を出してくださったので、とてもやりやすかったと思います。

――中井さんも、客席から見て中井さんだか誰だかわからないようなお婆さんの役もされていました(笑)。

そう、最高ですよ。性別も年齢も何も関係ない、そういう作り方も三谷さんのメッセージなのかもしれませんね。

――本作は、荻野清子さんの音楽なくしては成り立たない舞台です。シルビアさんから見た荻野さんは、どんな方なのでしょうか。

普段お会いしている時は、とても柔らかい、ホワンホワンした空気感をお持ちの方なんですけど、言う時は言う! という人です(笑)。ちゃんと芯があって、アイデアをたくさん持っていて、とにかく芝居が大好きで。だから三谷さんとの相性がよく、素晴らしい作品を作られるのだと思います。荻野さんと三谷さんがタッグを組んで、映画や舞台でさまざまな音楽を生み、『SHOW GIRL』を経て、こうしてオリジナル・ミュージカルを誕生させた。ふたりで徐々にステップアップしていって、この作品を生み出したんだな、という感慨があります。

――本作の音楽に関しては、どのように感じていますか?

再演をやるにあたって、サウンドトラックを聴き直したんです。それまでは、スタジオ録音じゃなくてライブ録音だし……と思ったり、なんとなく恥ずかしかったりして聴いてなかったんですよ。どうかな〜と思って聴いたら、楽しくて、ものすごく良かったんです。メチャメチャいい作品じゃない! とあらためて思ったのは、清子さんの音楽の力が大きいと思いますね。

――再演には新曲があるという噂も。また台本も、三谷さんが新たに加えたり、変えたりしているのでしょうか?

新曲、あるかもしれない(笑)。楽しみです。新しい台本もいただいていて、チョイチョイいじっているな、という感じですね。稽古に入ってからまた変わっていくんじゃないかと思います。

――シルビアさんにとって、本作の一番心に響くポイントとは?

いつの時代であろうと、世界のどこであろうと、結局人間は一緒なんだということ。救いようがないという意味じゃなく、結局因果は繰り返されていく……というところに、三谷さんのメッセージが込められていると思います。また今年のこの状況下で上演すると、そのメッセージがさらに深まっていく気がするんです。それこそ「人生で大事なものは、人生で大事じゃないもの〜♪」という歌なんて、エンタテインメントの意義について考えさせられて、もう今だからこそ伝わるのでは! なんて、やる側としては完全にそんなふうに考えますよね。

――再演に向けての、ご自身の課題は?

次は、もうちょっと余裕を持って出来るんじゃないかなと(笑)。三谷さんの作品の中では、わりと私、再演をやっているんです。『国民の映画』も、『SHOW GIRL』もそうで、明らかに2回目のほうが余裕を持って舞台に立てている。三谷さんの意向を分かったうえで稽古に入りますしね。だからなんとなく気が楽……、いや、この作品は全然楽じゃないですけど(笑)。絶対にレベルアップした舞台にしたいですね。

『SHOW GIRL』初日の拍手で号泣・・・ 観客がいる前で舞台に立てる事の尊さ

――劇場で、観客の皆さんの反応が楽しみですね。

本当にそうです。お客様がいての演劇ですからね。やっぱり、お客様の目の前でやらないと意味がない、と思ってしまうんですよね。昨年はコロナ禍で、全公演中止となった作品をふたつ、経験しました。この一年ずっと不安の中にいて、やっと舞台に立てた時の喜びといったら……。昨夏の『SHOW GIRL』の初日、もう慈英とふたりで、舞台上でオジサンとオバサンがあんなに号泣して……(笑)。思い出しただけでも涙が出て来るんですけど、お客様の前で舞台に立てる、それが私にとってどれだけ大事なことだったのかを、あらためて知った日でした。

演劇の灯を絶対に消したくない。だって、やる側も観る側も、舞台を好きな人がこれだけいるんですもの。あの時のお客様からいただいた拍手は、忘れられないですね。貴一さんからも連絡が来たんですよ。貴一さんも準備していた舞台が中止になってしまって(編集部注:インタビュー時、PARCO劇場オープニングシリーズ『月とシネマ』の東京公演中止が決定。その後、緊急事態宣言の延長により大阪公演も中止に)、「あとは幕が開くだけという状況まで来たのに、それをお客様に届けられなかったことが本当に辛い」と。新納(慎也)くんもやっぱり、公演(ミュージカル『スリル・ミー』)が途中で止まったり、大阪公演がなくなったり。皆そういったことを経験しているので、メチャメチャ熱い気持ちでこの『日本の歴史』に集まってくると思います。

――お客様も「やっぱり劇場で観たい!」という気持ちでいらっしゃると思います。

そう! 去年の夏、その思いがすごく伝わって来て、感動したんですよ。この舞台も、たった7人でこれだけバラエティー豊かな役柄を見られる舞台はそうそうないと思います(笑)。楽しく観ながらも、とても考えさせられる作品でもあると思うので、ぜひぜひ多くの方に観に来ていただきたいですね。ミュージカルが苦手と思っている人も、絶対に大丈夫です(笑)!



取材・文:上野紀子 撮影:藤田亜弓

公演情報
『日本の歴史』
作・演出:三谷幸喜
音楽:荻野清子
出演:中井貴一 / 香取慎吾 / 新納慎也 / 瀬戸康史 / シルビア・グラブ / 宮澤エマ / 秋元才加

【東京公演】
2021年7月6日(火)~2021年7月18日(日)
会場:新国立劇場 中劇場

【大阪公演】
2021年7月23日(金)~2021年7月30日(金)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

★5月23日(日)10:00より東京公演分のチケット一般発売開始!

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