削除されたMaison book girl、最後のステージで何が起きたのか
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Maison book girl「Solitude HOTEL」の様子。(撮影:稲垣謙一)
Maison book girlのワンマンライブ「Solitude HOTEL」が昨日5月30日に千葉・舞浜アンフィシアターで開催された。
4月にはおよそ4時間かけて全楽曲を披露するワンマン「Solitude HOTEL 9F」を実施したブクガ。彼女たちはこの4月のライブ内で舞浜アンフィシアター公演の開催を発表したが、その告知ビジュアルは文字化けを起こしていたり、HTTPステータスコードにおいてURLが存在しないエラーを意味する「404」という文字が書かれていたりと、どこか不穏なものとなっていた。さらに「Solitude HOTEL 9F」終演後から時間が経つにつれ、グループのオフィシャルサイトは一部ページが開けなくなる、各メンバーのアー写が原型を留めないほど歪む、トップページのレイアウトが崩れるなど徐々に変貌。加えて「Solitude HOTEL」の特設サイトでは、舞浜アンフィシアター公演の終演時刻である5月30日19:00に向けて謎のカウントダウンが行われていた。
この一連の告知を受けて不安そうな様子を見せているファンも多い中、いよいよ開演時刻に。暗転と共に「last scene」が流れ始め、ペストマスクをかぶった人物がステージに出現。彼がステージ中央に置かれた青い紙を手にすると、その紙に書かれていたブクガのオフィシャルサイトのURLが舞台後方のスクリーンに映し出された。ペストマスクの人物がゆっくりステージから立ち去ると、今度は2017年12月に行われたワンマン「Solitude HOTEL 4F」でも使用されたものと同じVTRが上映され、メンバーが登場。序盤は「sin morning」を皮切りに、「Solitude HOTEL 4F」冒頭のセットリストと同じ曲順で「rooms__」「lost AGE_」「end of Summer dream」といった楽曲が披露された。
彼女たちのいるステージは薄暗く、青空や夜の街中といったイメージ映像がステージ後方のスクリーンに投影されているものの、4人の姿はかすかにしか見えない状況。6曲目「bed」のパフォーマンスを終えるとメンバーは、新型コロナウイルス感染拡大の影響でいくつものライブが延期になったことや、ライブを観ているオーディエンスに対する思いを語り始める。彼女たちがこのMCをしながらぎこちなく客席に向かって手を振ると、時折PCのUSBを抜いたときの音や接触不良を起こしたような音がフロアに鳴り響いた。2017年の「Solitude HOTEL 4F」ではMCのあとに「cloudy irony」が披露されたが、矢川葵が「次の曲は『cloudy irony』」と曲紹介をするものの、始まったのは「karma」。曲が始まると、パフォーマンスする4人の姿をますます見えなくするように、メンバーの手前に張られた紗幕に映る砂嵐のようなノイズが観客の視界を塞ぐ。曲は途中から、「karma」のトラックとメロディで「cloudy irony」の歌詞を歌う「river」へとノンストップで移行。砂嵐はどんどんと荒れていき、曲の終盤になると4人の姿がほとんど見えない状態に。スモークに包まれたステージ中央がせり上がってくると、そこには床に座り込んだメンバーの姿があった。それまでパフォーマンスをしていたかに見えた4人は、実はスクリーンに投影された事前収録した映像だったのだ。映像の4人はそのまま砂嵐の中に埋もれて消えていくが、新たに現れた4人はうつむいたまま歌わず、曲のバックトラックだけが流れていく。そして曲が終わるとサイレンのような音がこだまし、ライブ本編の始まりを告げるように、スクリーンに「Solitude HOTEL」のロゴが写し出された。
ステージ後方のみを使い、映像を投影した前半から打って変わり、ここからブクガは、中央の円形部分も使用してパフォーマンスを行っていく。「レインコートと首の無い鳥」終盤にはステージ中央の円形の床がせり上がり、シングル「cotoeri」リリース期の衣装に身を包み、フードをかぶって顔が見えないダンサー4人が登場。「townscape」ではこのダンサーも加わり、8人体制でのステージングが繰り広げられた。「闇色の朝」は顔に穴の開いた人物がミュージックビデオに出てくることに合わせたのか、円形のセリ台を下ろしてステージ上に大きな穴が空いたままパフォーマンスを展開。この穴の中で虫がうごめく様子を表現するかのようにレーザーライトを穴に当てたりと、MVとリンクするような演出が施された。最初期のライブで披露されていたポエトリーリーディング「眠れる森」では、ステージ中央の回転床が起動し、メンバーはこの上を歩きながら朗読を行った。
ライブではおなじみの映像を用いた楽曲も、これまでとは異なるエフェクトが掛けられたものに変わった。真っ赤な草原の映像が特徴的な「狭い物語」は白黒に変更。脳活動の情報を解読・再構成した画像を用いた「夢」も画面が白黒にされ、楽曲自体もメンバーの声以外はハンドクラップのみというアカペラアレンジになった。「十六歳_」では「0」「1」の文字コードが後方スクリーンいっぱいに映され、何かのシルエットを示すように各文字が入れ変わっていた。
もう1つのポエトリーリーディング「non Fiction」ではメンバーが1人ずつステージに登場し、ペストマスクの人物に向かって“君になりたい僕”について語りかける。4人とも泣き出しそうなほど声を震わせ、これまでにないほど感情を露わにしていた。ラストに全員がステージに集合し、一緒に「僕を見つけて」と絶叫。ステージは真っ暗になり、鉄を打ち付けるような音がフロア中に鳴り響く。しばらく経つと、メンバーが消えた誰もいないステージから客席に銀テープが発射され、その瞬間、会場はセミの鳴き声でいっぱいに。そこからポエトリーリーディングの1つ「シロの夢」で使用されたノスタルジックなピアノのメロディが流れ始めた。
再びメンバーがステージに戻ると、変拍子のハンドクラップでおなじみの「bath room」がスタート。ところがこの曲は歌詞がすべて差し替えられ、歌メロもまったく別物になっていた。この初披露曲で彼女たちは「僕たちは いくつもの ユメをみる その先で また 君と出会えたね ゆっくりと 影たちの 悲しみが 消えていく 運命を くり返す」「僕たちは いくつもの ウソをつく その愛で また誰か 傷つけて 吐き出した 空っぽな 言葉には 消えていく 運命を 救えない」と歌唱。そして「last scene」が流れると、またもステージは照明が落とされ薄暗い状態に。会場内はどんどんと暗くなっていき、最終的にはメンバーの姿がまったく見えなくなってしまった。サビの「僕らの夢はいつも叶わない。きっと。」という歌詞を彼女たちが歌い終えた直後、曲をぶった切るように突然無音に。ようやくステージが明るくなるが、メンバーはどこにも見当たらない。余韻に浸る間もなく終演のアナウンスが流れ、そのまま「Solitude HOTEL」は終わりを迎えた。
終演後のエントランスでは来場者に、ライブ冒頭でペストマスクの人物が拾い上げた青い紙が配布された。この紙にはブクガのオフィシャルサイトのURLが書かれており、アクセスするとページは真っ青でシンプルなデザインに変化していた。そこに書かれていた「Maison book girlは削除されました。」という短いテキストによって、グループの活動終了が告げられた。
なおStreaming+では6月2日23:59まで、「Solitude HOTEL」のアーカイブ映像が公開されている。
Maison book girl「Solitude HOTEL」2021年5月30日 舞浜アンフィシアター セットリスト
01. sin morning
02. rooms__
03. lost AGE_
04. end of Summer dream
05. veranda
06. bed
07. karma ~ river
08. 海辺にて
09. レインコートと首の無い鳥
10. townscape
11. 言選り_
12. 闇色の朝
13. 眠れる森(ポエトリーリーディング)
14. 長い夜が明けて
15. 狭い物語
16. 夢
17. blue light
18. 十六歳_
19. snow irony_
20. Fiction
21. non Fiction(long ver. / ポエトリーリーディング)
22. bath room:改
23. last scene