Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 舞台『夜は短し歩けよ乙女』中村壱太郎×白石隼也「原作のワンダーランド感、増してます!」

舞台『夜は短し歩けよ乙女』中村壱太郎×白石隼也「原作のワンダーランド感、増してます!」

ステージ

インタビュー

ぴあ

左から 白石隼也 中村壱太郎 撮影:森好弘

続きを読む

フォトギャラリー(5件)

すべて見る

森見登美彦の小説『夜は短し歩けよ乙女』が、「ヨーロッパ企画」上田誠の脚本・演出、歌舞伎界の中村壱太郎と乃木坂46の久保史緒里のW主演で舞台化され、6月6日(日)から東京・大阪にて上演される。“先輩”役の中村壱太郎と、“学園祭事務局長”役の白石隼也に話を聞いた。

演じても観ても楽しい“ゴチャゴチャ感”

──昨日は初めて通し稽古をやられたそうですが、いかがでしたか?

壱太郎 いやあ、もう一回やりたいですね。

白石 ははは!

壱太郎 めちゃくちゃ緊張しちゃって。「春」「夏」「秋」「冬」と物語が進んでいくのですが、あっという間に「冬」になった気がしました。僕が演じる“先輩”は、「冬」に布団の中にいるシーンがあるんですけど、布団の中でずーっと反省していました。

白石 (笑)。でもまだ段取りの段階で、お芝居の演出がついていないからさ。

──お芝居の手前の段階だったんですね。

白石 はい。ただこの座組は、熟練の舞台俳優の方々がいらっしゃるので、「この短期間で!?」というクオリティで横にいてくださってなんとかできちゃったっていう感じでした。皆さんすごかったよね。

壱太郎 すごいですよ……。昨日はさらにひとつギアが上がっていた気もしました。それに圧倒されつつ、感じることの多い時間でしたね。

──この作品は次々とシーンも変わりますし、描かれていることも幻想的ですし、やることが多そうだなと想像しています。

舞台『夜は短し歩けよ乙女』メインビジュアル

白石 やることたくさんありますよ! 主演のおふたり以外のキャストは本役以外に2~3役ありますし、セットも出演者が動かしますし、途中とんでもないテンポ感でいくところもありますしね。これをまとめていく作業ってとても難しいだろうと思うんですけど、でも完璧にやり切ったら、すごいショーになりそうだなという気配を昨日感じました。

壱太郎 ほんとそうだね。この作品って、この作品のポスターが醸し出している通りのゴチャゴチャ感がある。キャストもいろんなジャンルから集まっていますしね。そのゴチャゴチャ感が観ていても演じていても楽しいところなので。

──原作小説は独特なムードがありますが、それは舞台版でも同じですか?

壱太郎 言葉遣いは森見さんの世界感そのままですよ。だけどよりワンダーランド感が増してると思います。そこが素敵なところ。生の舞台でやるからこその空間が広がるんじゃないかなと思います。

白石 いろんなものがあの手この手で具現化されているもんね。

──ちなみにSNSで作・演出の上田誠さんは「巨大感情絵巻」とおっしゃっていました。

壱太郎 すごい! そうだと思う。

白石 まさにそんな感じです。いろんな感情が次々と出てくるから。お客様もどこに目を向けていいかわからないと思いますよ。まず登場キャラクターの数からすごいですし。

壱太郎 しかも「この人は重要な登場人物なのかな」と思ってもそんなことなかったりするし(笑)。一回観ただけじゃ気付けないことが多々あって、何度も観たくなる作品になるんじゃないかなと思います。

──衣裳が150着あるという情報をもらいました。

壱太郎 150着!? うそでしょ!? でもその中にはきっと5秒くらいしか出ない衣裳もあるよね。

白石 あるね(笑)。

──白石さんは何役も演じていかがですか?

白石 楽しいし、難しいです。初めてやります。

壱太郎 僕は自分の役しか演じないので、「みんな大変そうだな」と思いつつも、「ちょっと面白そう」という気持ちにもなるよ。

白石 大変は大変だよ。でも稽古場で隣の席が玉置(玲央)さんでさ、いろんな役「やりたい!やりたい!」って感じなのよ。俺はまだ自分の役でいっぱいいっぱいだから、できればやりたくないんだけど……(笑)

壱太郎 はは!

白石 隣の席で「やりたい!」って言うからさ、「僕もじゃあ……」って感じでやっちゃう(笑)。

壱太郎 (笑)。玉置さんすごいもんね。別のお仕事でお稽古に来られない方の代役が必要な時とか、ほぼほぼ玉置さんが代役で立ってくれる。

白石 尾上さんもそうだしね。今回は、演劇が好きで好きでしょうがない人たちの集まりって感じ。僕自身、これまであまり共演したことがないタイプの人たちなので、すごく刺激を受けています。

久保史緒里さんはただものじゃない

──“黒髪の乙女”役の久保史緒里さんはどうですか?

白石 佇まいや声の質感がとても上品で、古風な雰囲気もあって、役にぴったりなんですよ。すごくナイスキャスティングだと思う。

壱太郎 それでいて緋鯉背負っていてもあんまり違和感ないんだよね。

白石 なのにインテリ感もあるし。

壱太郎 夏目漱石の小説読んでそうだもんね。そう。摩訶不思議なのにインテリ感もあるって、おもしろいよね。それにすごい舞台魂も感じる。ただものじゃない感じがするんですよ。先日、乃木坂46の「9th YEAR BIRTHDAY LIVE」を拝見して、輝きとか、見せ方とか、立ち居振る舞いとか、本当に素敵で圧倒されました。共演できて嬉しいです。

久保史緒里「なんとも愉快な現場です!」 舞台『夜は短し歩けよ乙女』インタビュー

──壱太郎さんは、“先輩”役を演じていてどうですか?

壱太郎 実は稽古に入るまで、なかなかキャラクターが落ちてこなかったんです。僕はどちらかというと“黒髪の乙女”のような好奇心の持ち主なので、性格が真逆なこともあって。でも今皆さんと芝居をしているうちに、「こんな感じなのかな」というのがだんだん見えてきているところです。

──そもそも壱太郎さんは普段は歌舞伎の世界で活躍されている方で、今回のようなタイプの舞台作品は初めてですよね。

壱太郎 そうです、初めての環境です。歌舞伎の稽古って新作でない限り80%は巻き戻さずお稽古が進むんですよ。「このシーンを返します(=繰り返して稽古します)」ということがあまりない。稽古が4日間だとしたら4回しか通さないし、その日の課題は翌日までの宿題になるんです。

白石 そうなんだ! 舞台はその場ですぐだもんね。

壱太郎 そう、だから新鮮。その場その場の対応力も試されているなって感じです。

──歌舞伎が生かされるシーンもあるそうですね。

壱太郎 劇中劇で歌舞伎のシーンがあります。僕は歌舞伎では女方を演じることが多いので、女性役のシーンもあるんですよ。

白石 上田さんは役者それぞれが持っているものを活かしてくれている感じがします。

──楽しみです。白石さんは“学園祭事務局長”の役はどうですか?

白石 すごく難しいなと思っています。

──役柄がですか?

白石 いえ、芝居がです。この作品は展開が怒涛なので、その中で感情を呼び起こして、発散して、次のシーンにいって、別の感情で、みたいなことがたくさんあるんです。さらに別の役もありますし。そこの切り替えが今はまだ難しい。頭ではわかっていても、心が乗ってこないんですよね。

──現状、どうしようと思われていますか?

白石 いったん忘れてみようかなと思います。動きは覚えたので、いったん立ち戻って、これから新たに試行錯誤していこうかなって。これからですけどね。

──ちなみにおふたりは生年月日が同じだそうですね。

壱太郎 そうなんです。「同い年だから敬語はやめてくださいね」って僕のほうから言ったのに、結局僕だけ敬語なんですよ。

白石 そうなんですよ。僕だけため口で距離を感じる……。

壱太郎 距離を感じないで(笑)。大丈夫、今、徐々に変化してるから!

白石 (笑)

壱太郎くんは背中で語るタイプの座長

──稽古場での印象は?

壱太郎 (白石は)抜け感というのかな、そういうものがあるなと思います。事務局長の芝居もカッコいいんだけどそれだけじゃない。そういうところが見ていて面白いし、素敵です。

白石 ありがとう。壱太郎くんは本当にストイックでまじめです。その姿勢がキャラクターに滲み出て、今、“先輩”は壱太郎くんにしかできないものになってきていると思います。いわゆる“それっぽい芝居”もできるような役だと思うんですけど、壱太郎くんは自分が感じるままに演じていて、「彼がやるとこういうふうになるんだ!」という面白さを感じる。それは僕にとっても新鮮です。

初めての環境で苦労していると思うけど、初日から台詞がちゃんと入っていることとかもそうですし、背中で語るタイプの座長で、自然と「みんなで支えていこう」という雰囲気になっています。その雰囲気が“先輩”をみんなで応援している感じにもつながっていますね。

壱太郎 ありがとうございます。本当に不安でね……ありがたい。

白石 でも俺もマジで不安よ!?

──白石さんの不安はなんですか?

白石 俺にはできない!と思って。

壱太郎 そんなことないじゃん(笑)。

白石 皆さんすごいんですよ。うまい人ばかりだから。「向いてないな」と思う時がある。みんな稽古場で、いろんなアイデアをパッと出すじゃん。はって思う。

壱太郎 しかもその役に合った案が出るからね。すごいことだよね。

白石 そう……。でも焦らずに、開幕までに持っていけばいいと思って今はやっています。

壱太郎 それはほんとそうだね。上田さんにすべてを託して。

白石 稽古場で脚光は浴びたいけどさ。

壱太郎 ええ?(笑)

白石 こんなアイデア持ってきたぜ!って脚光を浴びたい気持ちもあるけど、その欲に惑わされずにやっていこうと思う。まずは真面目につくっていけばいいと思うんだよね。真面目にやってるうちに余裕が出てくるはずだから。そしたらアイデアも出せるはず。

壱太郎 ああ、本当にそうだよね! いや、昨日すごく落ち込んでいたからさ。今この話できてよかった。ありがとう。

──では最後に、開幕に向けておふたりが楽しみにされていることを教えてください。

白石 僕はこの作品が、劇場でどんなふうになるのかが楽しみです。

セットも豪華絢爛だろうし、映像も使われるし、転換もあるしで、まだ想像しきれていない部分も多いんですよ。特に僕はスクリーンの前でお芝居するところがあるので、劇場に入ってやっと見えてくるところもあるはず。そこが楽しみですね。

壱太郎 僕は、この作品はきっと何度も観たくなるものになると思っているから、そういう反応を見られるのが楽しみです。「あれ? あの人あの時どうしてたんだろう」とか、観た後にふと気になったりすると思うんですよ。それでまた観たくなると思う。映像だったら誰かのアップになるようなシーンでも舞台は全部が見える、その面白さが味わえる作品だと思いますし、そういう芝居にしていきたいです。



取材・文:中川實穂 撮影:森好弘

舞台『夜は短し歩けよ乙女』
原案・原作:森見登美彦
劇作・脚本・演出:上田誠
出演:中村壱太郎 / 久保史緒里(乃木坂46)
玉置玲央 / 白石隼也 / 藤谷理子 / 早織
石田剛太 / 酒井善史 / 角田貴志 / 土佐和成 / 池浦さだ夢 / 金丸慎太郎 / 日下七海 / 納谷真大
鈴木砂羽
尾上寛之 / 藤松祥子 / 中村光 / 山口森広 / 町田マリー
竹中直人

【東京公演】
2021年6月6日(日)~2021年6月22日(火)
会場:新国立劇場 中劇場

【大阪公演】
2021年6月26日(土)・2021年6月27日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2170716

フォトギャラリー(5件)

すべて見る