冨田ラボが俯瞰する、日本の音楽シーンの今「Jポップの構造を再考すべき時が来ている」
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冨田ラボによる、通算6枚目のアルバム『M-P-C “Mentality, Physicality, Computer”』がリリースされた。
前作『SUPERFINE』では現代ジャズの意匠を取り入れるなど、これまで得意としてきた「60〜70年代ポップミュージックのシミュレーショニズム」から、「アップ・トゥ・デートなポップス」へと大きくシフトした冨田。本作もその延長線上にある作品で、ヒップホップやトラップ、ドラムラインなど様々なエッセンスを抽出しつつ、「冨田ラボ印」ともいうべき洗練された楽曲を並べている。Ryohu(KANDYTOWN)やchelmicoといったラッパーをはじめ、ペトロールズの長岡亮介やシンガーソングライターのRei、無名の女子高生シンガーNazなど、ゲスト陣も相変わらず豪華でバラエティ豊かだ。
「その時、一緒にやりたい人と常にコラボしてきただけ」と語りつつも、結果的にシーンの“今”を独自の視点でキャプチャーしながら作品を作り続けてきた冨田。本作『M-P-C』でフィーチャーしたアーティストとの共作を経て、彼は今、日本のポップミュージックをどのように見ているのだろうか。(黒田隆憲)
Jポップの構造を再考するにあたって、ラップは非常に有効
ーーまず、アルバムタイトルのことからお聞きしたいと思っていて。「MPC」というと僕などは、AKAIプロフェッショナルの定番サンプラーシリーズを連想するのですが(笑)、資料には「M-P-Cとは、Mentality(精神)、Physicality(肉体)、Compute(コンピューター)の略」と書かれていました。さらに、「重要な作品コンセプトであり、 今の人間社会に必要な三要素でもある」と。
冨田ラボ(以下、冨田):まずは自分の制作環境を考えましたね。僕が音楽を作り始めたのは80年代ですが、最初の頃から音楽制作にはコンピューターが取り入れられていました。さらに僕自身でいうと、オーディオの波形エディットや演奏の解析、数値化もかなり早くからやっていたので、M、P、Cという三要素を本当に不可分に思っていたんです。精神的、心理的なものは作曲から始まって常に最優先で働かせていますが、演奏では肉体が大きく介在するし、結果はコンピューターに録音され編集される。で、その結果を聴いて今度は……みたいなね。こういった一連の作業が延々とループされ相互に影響されるのを長く体験しながら、これら三要素が不可分なのはもちろん、自分自身が三要素の結合の結果みたいにも感じていたんです。で、現代社会というか、いま生きている人の大部分も同じ状態だな、と思ったんですよ。僕に限った話じゃなくて、みんな当然のようにこの三要素を、それぞれバランスは違えど駆使して暮らしているわけですよね、無意識でも。つまりコンピューターが肉体や精神と同じくらいの働きをしているというか、その存在自体が「前提」になっている状態なわけです、今は。
ーーそうですね。
冨田:なんだか20世紀のSFか2045年の話してるみたいですけど(笑)、そのどちらでもなくて、現状すでに人間の精神や思考、生活もコンピューターやまつわる諸々に影響を受けて変化してますからね。もちろん僕らの世代は20世紀から生きているから現代と比較できるけど、例えば2006年に生まれたうちの子なんかはもちろんこの状態が当然なわけ。彼らや続く世代が、揺り戻しも含めどう変化していくかは興味深いですよ。当然、ともなって音楽もね。今まで辿った音楽の変化にしても、コンピューターの登場によって演奏も変わったし、作曲の仕方も変わった。演奏を必要としない音楽もたくさん生まれましたよね。方法論としてはそれに対してのアンチテーゼもあったけど、でも精神的、感覚的な影響に関しては簡単には戻らないからね。20世紀も知っている人間としては、その変化の大きさも感じるからさ。そこでコンピューターと人間の関係をタイトルにしたわけです。自分の音楽を端的に表してる感じもしたし、しかもイニシャルがMPCになった(笑)。AKAIのMPCは使ったことないんだけどね、今回ソフトサンプラーなどはたくさん使っているのだけど。
ーーたくさん使っていますよね。驚きました。
冨田:このアルバムは、前作『SUPERFINE』から地続きというか。あの時にやり始めた手法を推し進めた結果が、本作という感じかな。前にも話したけど、自分が聴く音楽もいわゆる「リイシューもの」からリアルタイムのものに移行して、それが面白くて作風自体も変わっていったんですね。ジャンルでいえば、ヒップホップとR&Bが増えたけど、ラッパーを入れたいという気持ちは、実は『SUPERFINE』の時からあったんです。あの時は人を選びきれず実現しなかったのだけど、「今度こそはやろう」という気持ちもあった。
ーー冨田さん自身は、ポップミュージックにおけるヒップホップやラップの可能性は、どんなふうに考えていますか?
冨田:僕は日本のポップミュージック……Jポップと呼べばいいのかな。僕自身がそれをやっている人間ではあるのだけど、その「歌謡曲性」や「Jポップ性」みたいなものを、再考すべき時が来ているんじゃないかなと思っていて。そこにもっと色んな可能性があるということを、僕ら音楽家は探っていくべき時期なんじゃないかと思っているんですよね。例えば楽曲の構成にしても、現行の洋楽ではループするトラックにバース、あっても短いブリッジ、そしてコーラスという構成が多いけど、それを僕自身も気持ち良いと感じるんですよね。たぶんサブスクはじめ現代の聴取環境に合っているのは大きいと思うけど、時代のスピードという言い方でもいいかな。それに比べるとJポップ、特にメインストリームにあるものはもっと説明的というか、もちろん曲によるんだけど、説明過多と感じることがある。
ーーイントロがあってAメロ、Bメロ、サビ、そして大サビという60年代の構造が未だに主流ではありますね。
冨田:そう。ストーリーを構成でさらに説明するという構図だね。それって、日本語の特性とも大いに関係があると思うんです。例えば英語だったら“I love you”を3音節で言えてしまうのに対して、日本語だと“私はあなたを愛しています”となる(笑)。伝えるのにそれだけ時間がかかってしまう言語だから、歌謡曲の形式が今も残っているのかもしれないなと。で、そんなJポップの構造を再考するにあたって、ラップは非常に有効だと思っているんですよね。
ーーなるほど。ラップならメロディよりも言葉を詰め込むことができますからね。では、現代ジャズに関してはどうでしょうか。例えばbirdの『Lush』(2015年)から冨田さんは、現代ジャズの手法を積極的に取り入れていて、『SUPERFINE』はもちろん今作でもいくつかの楽曲に、その手法が引き継がれています。それも今おっしゃった、「Jポップの再考」の一つであったりしますか?
冨田:そうだね、そういう要素もポップスになりうると僕は思っているからね。もしかしたら、「そこまでやったらポップミュージックとは言えないよ!」という人もいるかもしれないけど(笑)、そのスリリングさこそが“心躍らせる要素”なんじゃないかなと。「こんなの、聴いたことないけど面白い」とか、「わけがわからないけど感動する」とか。言葉での説明を一切必要としない魅力は必ず必要だと思っている。
ーー例えば今作にも参加しているものんくるや、前作に参加していたcero、他にもCRCK/LCKSなど、ポリリズム的な要素を楽曲に組み込んでいるバンドが、このところ同時多発的に現れていると思うんですよ。それって、なぜなのでしょう?
冨田:4拍子や2、4のバックビートがあるリズム以外もポップスだと捉えるようになったんじゃないかな。”グラスパー以降”という言葉で散々語られてきた現象だと思うけど。ポップスでは、というか実験音楽や習作段階にあるもの以外では、聴いただけで心動かされることが重要なので、ポリリズムがそういった縛りの中でも機能する手法、かつ新鮮だと感じられた結果だと思います。あとはみんな上手いから、演奏家としての側面も大きいんじゃないかな。ポリリズムはやってても楽しいから(笑)。数学的なのと肉体的なのと両方の快感が得られる。ジャズ界隈を中心とした話だけど、ポリリズムは2010年代初頭くらいに一旦飽和状態になった気がするんですよ。とんでもなく難解なところまで行ったけど、そこまで行くとね、その前段階のものはポップスにも有効だと感じられるようになったんだよね。
ただ、ceroの場合は髙城(晶平)さんは“演奏家”ではないから、作曲家〜プロデューサーとして刺激されたんだろうね。聴いていてスリルや新鮮さを感じたものは、取り入れたいと思うのが音楽家じゃない? あと、そこに日本語の歌詞を乗せることが、彼にとっては重要だと言っていたな。2年前の話なので今はわからないけど。
ーーなるほど。
冨田:でも、僕に関して今作では、あからさまなポリリズムや、リズムの訛りみたいなことはあんまりやっていなくて。音色の出入りとか、音色の捻れ、急にハーフスピードになった落差とか、そういった違和感でグルーヴを形作る方が新鮮で、そちらに興味がいってましたね。
ーー新鮮さということでいえば、今作では「アルペジオ feat. chelmico」と「POOLSIDEDELIC feat. Rei」が特に驚きました。
冨田:実は、最初に作ったのが「アルペジオ」だったんです。さっきも言ったように今回はラッパーを入れようと思っていて、最初に決まったのが彼女たちだった。で、どんなトラックにしようかをそこから考えたんです。作ってた頃、世間は今以上にトラップ一色みたいな時期だったんですが、それは彼女たちには合わないと思い、ジャンル問わずいろいろ聴いたり試したり、グリッチものとかも、結構好きで聴いていて。で、そういった要素を取り入れつつ、骨格としては割とポップに聴こえるようなリフなりビートにしようと思って。それをアイゾトープのStutter Editというプラグインで、大幅に切り刻んだトラックにしようと。
ーーこれまで冨田さんが手がけたラップは、例えばm-flo loves Crystal Kayの「REEEWIND!」にしても、前作の「冨田魚店 feat.コムアイ」にしても、一筋縄ではいかない楽曲でした。今回はかなり正攻法のアプローチですよね?
冨田:冨田魚店? あー、Aメロの左右にあるダブル分は確かにラップか(笑)。音程ない感じでってリクエストしたからね。まあそれら以外にも今まで何曲かラップものはやりましたけど、リミックスか、もともとラップのデータがあって、それを元にトラックを作るっていうやり方しか経験なかったんですよね。トラックを作って、そこにラップを乗せてもらうという順番は今回が初めてだったんです。
だから、最初は少し迷ったんですよ。だって、今までの僕はまずメロディを作ってアレンジを構築していくわけだからさ。「あ、このトラックに彼女たちのラップが乗ったら良さそうだな」というイメージは湧くのだけど、果たして「良さそうだな」だけで進んでていいのだろうか? みたいな(笑)。なので、とりあえず2人に来てもらって、まだリリックも完成していなかったんだけど、「なんでもいいから取りあえず仮でラップを乗せてみてくれない?」って頼んだんですよ。
ーーなるべく明確なイメージを掴むために。
冨田:で、やってもらったら、ものすごーく安心した。もうそのままOKでもいいんじゃないか? っていうくらい(笑)。やっぱり、普段ずっと歌モノをやっているから、スピーカーの中央に声があって、その周辺で色んなことが起きているっていう音像にしないと、どうしても納得できないんですよね。で、「この辺で音符が細かくなった方が良さそう」とか、「ここは小節アタマより先行してラップが入るのは可能?」とか、大雑把なリクエストは伝えつつ、現場での改変もあリつつ完成しました。お互いに手探りだったと思います(笑)。
コンピューターには演奏を通して伝えられるものと同等の異質な表現がある
ーーじゃあ、それ以降のラップ曲、例えばRyohuさんとのコラボはスムーズに?
冨田:Ryohuさんとの楽曲は、またちょっと変わっていて。chelmicoは女性ラッパーだから、男性も入れようというのは早い段階から決まっていたんですけど、誰にするかはなかなか決まらなくて。当初はchelmicoの時のように、男性ラッパー用のトラックを作ろうと思ってたんだけど、スタッフと雑談しているときに「インスト曲作ってその中にラップ・パートもある、みたいなのもいいよね」とか思って。だったら、いろんな展開がある長いインスト曲を作って、それを分割してインタールードにしたら、アルバムの統一感が出るんじゃないかと思ったのね。で、そのどれかをラップ・フィーチャーの曲にしたらいいなと思って。
なので、実はRyohuさんをフィーチャーした「M-P-C」や「Interlude 1」、「Interlude 2」、「Outroduction」のトラックは、どれも7分弱のインスト曲だったんです。そのインスト曲をまんまRyohuさんに渡して「前半部分にはラップをお願いしたい。あとは思いついたところあれば」みたいに打診しました。彼からは前半部分のデモを送ってもらったんだけど、録音当日になってさらにリリックを書いてきてくれたんですよ。あとは即興でガヤとかも入れてくれたんで、当初の予定以上にラップ・フィーチャーなアルバムになりました。
ーー結果、Ryohuさんがこのアルバムをナビゲートしているような、重要な役割を担うようになっていますよね。
冨田:そう、まさにナビゲーターだね。そうなったのにはもう一つ理由があって、Ryohuさんにラップをお願いした時に「テーマとかありますか?」と聞かれて。それで、アルバムタイトルのことをざっくりとだけど伝えたんですよ。そうしたら、それに沿った示唆的なリリックを書いてくれたので、おっしゃるようにストーリーテラー的な役割も担っている。
ーーインストといえば、「Introduction」は狂ってますよね(笑)。The Beach Boys『Smile』の21世紀バージョンというか。
冨田:ああ、確かにThe Beach Boysっぽいね! コーラスをかなりサンプリングしているからそう聴こえるのかも。あの曲は、マスタリングの前日に思いついて作ったんです。最初から「コンセプチュアルなアルバムを作ろう」という強い意志があったわけじゃないのだけど、今話したようなRyohuさんとの一件があって、すごく一貫性のあるアルバムに結果なりつつあるなと思った時に、「あ、こういうアルバムにはイントロダクションがあるべきだな」と、ギリギリになって気づいて。ほら、作業を詰めてやっていると、なかなか全体像って俯瞰できないじゃないですか。
ーーそうですよね。
冨田:で、イントロダクションは収録曲の断片をサンプリングして作っているんです。ある曲のコーラスと、ある曲のベース、ある曲のコーラスを組み合わせて。あと、ほんの少しのシンセとサンプリング素材を重ねて完成させました。
ーーReiさんの曲もぶっ飛んだエキセントリックな曲です。
冨田:あの曲は、最初バキバキのエレクトロ路線だったんです。でも歌入れ後にちょっとエレクトロから離れようかと思ったんですよね。アルバム内でのバランスとか歌との相性かな。どんな風にしようか考えながら、いろんな音楽を聞いたり動画サイトを漁ったりしているときに、鼓笛隊みたいな、スネアやタム、バスドラが何人もいる「ドラムライン」をやったら面白いんじゃないかと思ったんです。最近のアメリカのドラムラインってすごいんだよ、ヒップホップっぽいビートとかもやっていて。ちょっと訛らせたようなビートも大人数でやるからわけわかんなくて(笑)、でも本当にカッコよくてね。この曲はそこまで訛らせてはいないんですけど、ドラムラインの人数感がすごく面白いと思ったんです。
ーーメインリフの、あのサーランギー(インドの古典楽器)のようなエスニックな響きが病みつきになりますよね。
冨田:でしょう?(笑)。あれはボイスシンセですね。あの不思議な音色とドラムライン、それから吹奏楽の組み合わせがしっくり来たんです。アレンジが定まるまで結構行ったり来たりしたのですが、最終的に満足のいく仕上がりになりました。
ーー「OCEAN feat. Naz」も驚きました。Nazさんはまだ18歳なんですね。
冨田:冨田ラボは1st『Shipbuilding』を出したときから、まだデビューしていない無名のシンガーをフィーチャーしたいという思いがあったんですよ。でも、なかなか「これ!」という人がいなくて。彼女は、『Xファクター』(イギリスのリアリティ音楽オーディション番組。Nazは2014年『X FACTOR OKINAWA JAPAN』に出演)の映像を観たときにピンと来たんですよね。
ーー「無名のシンガーをフィーチャーしたい」と思ったのは何故ですか?
冨田:普段のフィーチャリングって、ある程度名前の通った人だから、その人たちの今までの作品を聴いて「だったら、冨田ラボではこんな曲を歌ってもらおう」みたいに考えることが多いわけですよね。でも、無名のシンガーなら、その人の「声」を聴いて純粋に「こういう歌を歌ってほしい」という思いを反映させやすいわけです。実際、Nazさんの声を聴いた時に、「こんな歌を歌ってほしい」というイメージはすぐに浮かんだんですよね。まあ、実際にそれを形にするまでには、いつも通り時間がかかったわけだけど(笑)。
ーーレコーディング経験もまださほどない彼女に、冨田さんはどんなアドバイスをしたのですか?
冨田:最初、この自宅スタジオに仮歌を録りにきてもらった時、その時点で素晴らしかったのだけど、「発声やニュアンスはすごくいいから、練習のときには機械的に音程とリズムだけ意識してみて。で、本番ではそれを完全に忘れて歌ってね」みたいなアドバイスをしたんです。そうしたら、数週間後のレコーディングでは、驚くほど上達していて。
ーーもちろん、彼女の吸収力もずば抜けているんでしょうけど、冨田さんのアドバイスも彼女にとって適切だったのでしょうね。あと、七尾旅人さんの起用は、今回のラインナップからしたら異色な感じがしたのですが。
冨田:以前から七尾さんの声がすごく好きで、実は過去作でも人選で何度か名前は出ていたんです。七尾さんって、音楽的にはフォーキーな側面が強いと感じるんだけど、実は宅録の人だったり、すごく歪ませたものがあったり、エレクトロ要素が入ったりと表現の振り幅が広い。伝えたいメッセージに合わせた振り幅だと思うんだけど、サウンドがどうであっても彼の声が入ってくるとすべてにリアリティを感じる。そこに強く惹かれてましたね。制作はお会いしないまま電話とメール、データのやり取りだけで完成させたんだけど、今度ライブでご一緒できるので今から楽しみですね。
ーー今回アルバムを作っていく過程で、どんなことに気づきましたか?
冨田:今作に封入した「ダイアリー」にも書いたのですが、「演奏されていても、されていなくてもどちらでもいい」ということは常に思ってましたね。今までの反動からか、作り始めには「されていない方がいい」に寄ってたくらいに(笑)。もちろんどちらにするかは最善の方法を選ぶんだけど、音楽を左右するのはそこじゃないっていうのは何度も思いました。でもね、肉体を介在しない方に寄っていたと言ったって、ついこの間まではマシーンを模した演奏に興奮していたわけだしね。冒頭の話に戻っちゃうけど、コンピューター登場からだいぶ経った今の耳はそういった差異も楽しめるようになったけど、すでにそれさえもどうでもいい、ともなる。特に録音物という耳だけで鑑賞するものに関しては、コンピューターには演奏という行為を通して伝えられるものと同等の、だけど異質な表現があるというのは再認識しましたね。
ーー『M-P-C』のバランスでは、今回はMとCの比重がかなり増えたと。
冨田:そうですね、以前よりは。でもレコーディング中盤以降には演奏を選ぶことが増えたし、こだわりなく瞬間瞬間で新鮮な方を選べるようになったかな。おかげで、いま最適なバランスになったと感じています。
(取材・文=黒田隆憲)
■リリース情報
『M-P-C “Mentality, Physicality, Computer”』
発売:2018年10月3日(水)
完全生産限定盤(CD + Blu-ray + BOOK) ¥5,800(税抜)
通常盤(CD)¥3,000(税抜)
参加アーティスト(収録順) : Ryohu(KANDYTOWN)、長岡亮介(ペトロールズ), chelmico、Kento NAGATSUKA(WONK)、Naz、Rei、七尾旅人、吉田沙良(ものんくる)、Lori Fine(COLDFEET)※作詞, 鴨田 潤(イルリメ / (((さらうんど))))※作詞、角田隆太(ものんくる)※作詞、Ei Kaneko ※Artwork
<収録曲>
1.Introduction
2.M-P-C feat. Ryohu
3.パスワード feat. 長岡亮介
4.アルペジオ feat. chelmico
5. Interlude 1 feat. Ryohu
6. Let it ride feat. Kento NAGATSUKA
7. OCEAN feat. Naz
8. POOLSIDEDELIC feat. Rei
9. Interlude 2 feat. Ryohu
10. rain on you feat. 七尾旅人
11. 緩やかな毒 feat. 吉田沙良
12. Outroduction feat. Ryohu
※Blu-ray:M-P-C RECORDING DOCUMENTTARY
9カ月に及んだレコーディングを密着撮影し、冨田を中心に全参加アーティストのインタビューを交えたドキュメンタリー。制作秘話を語り、長岡亮介との対談や、スタジオで一人作曲を行う冨田を撮影した貴重な映像も収録している。約47分収録。
※Book:M-P-C RECORDING DIARY
冨田恵一本人が執筆したM-P-C RECORDING DIARY BOOK。冨田と各アーティストらが当時どのような状況で、作曲・アレンジを考え、またどのような楽器・機材を使用していたがわかる。歌詞と一部譜面も掲載している。124P掲載。
■ライブ情報
『冨田ラボ 15th Anniversary LIVE < M-P-C “Mentality, Physicality, Computer” >』
11月2日(金)東京・マイナビBLITZ赤坂
ゲストシンガー第一弾&第二弾発表(五十音順) : AKIO、安部勇磨(never young beach)、城戸あき子(CICADA)、Kento NAGATSUKA(WONK)、坂本真綾、髙城晶平(cero)、chelmico、長岡亮介(ペトロールズ)、Naz、七尾旅人、bird、堀込泰行、吉田沙良(ものんくる)、Ryohu(KANDYTOWN)