小西遼生×瀬戸カトリーヌが語る、ミュージカル『ピーターパン』の魅力とは?
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インタビュー
小西遼生(右)瀬戸カトリーヌ(左) 撮影:五月女菜穂
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すべて見る日本公演40周年を迎える、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』が2021年7月22日よりめぐろパーシモンホール 大ホールで開幕した。 今回、フック船長/ダーリング氏役で出演する小西遼生と、ダーリング夫人役の瀬戸カトリーヌに、作品の見どころはもちろん、互いの印象などを仲睦まじく語ってもらった。
――現在のお稽古の状況を教えていただけますか。
小西:稽古は順調です!毎日、笑い声が響き渡っています。(演出の)森さんを中心に、この作品を良くしようと奮闘しております。
――瀬戸さんは製作発表のときに「本役よりも力を入れてらっしゃる役がある」というお話をされていました。
瀬戸:そうなんです。「ダチョーン」!
小西:(昭和のギャグの)「ガチョーン」みたいに言わないで(笑)。
瀬戸:はい、ダチョウの役もやることになっていまして。先週も今週も、ダーリング夫人よりもダチョウの役の方に時間を割いています(笑)。どんなダチョウになるのか、期待していてください。
小西:そうですね。夫のダーリング氏役である私から見ても、今の瀬戸さんは完全にダチョウの方に力を割いています(笑)
――瀬戸さんのダチョウ役、とても楽しみです(笑)。改めてこの『ピーターパン』という作品の見どころや、なぜ愛され続けているのかを教えてください。
小西:芝居としても、まずすごく良い戯曲ですよね。演出家によって、色を変えることができて、幅広い人に楽しんでもらえるから。
森さんも稽古初めに言っていましたけど、全シーンが見どころなんです。これはもう原作者のバリさんが、子どもの頭の中でしか発想しえないような世界観を描きつつ、それを客観的に見ているバリさん自身の大人の観点も入っていて。それが、大人が見ても子どもが見ても、しかも何回見ても楽しめる理由なのかなと思います。
瀬戸:やっぱり音楽が素晴らしいなと思って。ミュージカルは見終わった後に、何か口ずさめるものが名作と言われると思うんですけど、『ピーターパン』は、「クックゥー!ククー!」とか言いたくなりますよね。
小西:びっくりした、突然大きな声出したから(笑)。
瀬戸:ごめんなさい(笑)。そういう、ついつい口ずさみたくなるような名曲がそろっていることが魅力の一つだと思います。
私は過去に2回出演させていただいていますが、演出家が変わる度に、同じ作品とはいえ、セットから何から違うものになりますよね。ピーターパンのイメージ像も演出家によって各々違うので、その違いが面白いなと思います。
今回の森さんの演出は、すごくその想像力をかきたてる演出。映像技術などに頼らず、人間が作る舞台だからこそできる表現が多いと思うので、最終的にどんな出来上がりになるのか。私自身も楽しみですね。
――何かまた「新作」に取り組んでるような感覚なのでしょうか。
瀬戸:そうですね。だって過去にダチョウが出てきたことありました?
小西:いや、世界初でしょうね。お母さんのダチョウは(笑)
瀬戸:あ、それからピーターパンとフック船長の歌が初演ぶりに復活するんですよね。すごくチャーミングな曲で、面白い仕上がりになってます。
お母さんとお父さんがうるさくなる可能性があります・・・
――それぞれが演じられる役の見どころを教えてください。
小西:僕は最近、原作者のバリさんのことをいろいろ調べているんですけど、フック船長は初演が明けて、しばらく経ってから、関係者みんなが「これはもうけ役なんだ」と気づいたらしいんです。フック船長という役は、もちろん映画によっては主役になるような有名なキャラクターですけど、ピーターパンという絶対的な存在のキャラクターがいて、その、ある意味兄弟のような部分もあり、でもやっぱり敵同士であり、もっというと、子どもが想像で作ったという抽象的な部分もあり。かなりポテンシャルが高い役なんです。なので、役者自身としても、やりどころが多いです。ピーターパンと表裏一体の部分が、とても魅力的ですね。
瀬戸:光と影みたいですね。私もやってみたいです、フック船長(笑)
小西:あはは、確かにちょっと見てみたい(笑)
――瀬戸さんはダーリング夫人役についてはいかがですか?
瀬戸:ウェンディを演じた経験もありますが、改めて母親としてのダーリング夫人を演じて感じるのは、帰ってくる場所がある、帰ってくるのを待つ人がいるというのは、すごく素敵だなということ。
母としてこの作品を見ると、子どもが行方不明になって、もしかしたら戻ってこないかもしれないという状況ですから、非常に切ない気持ちになるわけです。
なので、お客様が親子で見に来られたときは、親子で感じることが全然違うでしょうね。それも面白いポイントです。英国のキャサリン妃をイメージしながら、大地のように温かいお母さんを演じられたらいいなと思っています。
――取材の段階からおふたりのコンビネーションの良さが伝わるのですが、お互いの俳優としての印象を教えてください。
小西:僕はひと言で言えます。ひょうきんです(笑)。ムードメーカーですし、今回に関して言うと、『ピーターパン』という作品をよく知っている頼もしい方でもあって。いるだけで、ちょっと安心感がある存在です。
瀬戸:そんな! すごく嬉しいです、頼ってます!
小西:……ただ、お母さんとお父さんがちょっとうるさくなる可能性があります(笑)
瀬戸:確かに。お父さんの蝶ネクタイがなかなか結べないのが、今、一番心配です(笑)
小西:そうそう、そういう感じで、笑いどころではないシーンで笑いが起きる可能性を秘めています(笑)
――瀬戸さんは小西さんに対してどのような印象をお持ちですか?
瀬戸:とにかく優しんですよね。大きい器で私を受け止めてくれています。
それに、小西さんはお芝居から歌への入り方がとても自然で、上手な俳優さんだと思います。歌になると急に変わる人がいるけれど、小西さんは、喋る声と歌の声が同じ。簡単に出来そうで、出来ないことだと思います。
他にもいろいろ魅力はあるのですが、とにかく器用で頭がいい役者さんだと思います。
吉柳咲良は本物のピーターパンに会わせてくれる稀有な役者
――ピーターパン役の吉柳咲良さんについてはどうでしょう?
小西:めちゃくちゃかわいい!初めて彼女と共演するので、今回の姿しか知らないですけど、今の咲良は多分、人生で一番かわいいと思う。
僕が一番最初に彼女に会ったのは、扮装での撮影のとき。なので、最初からピーターパンの格好をしていたのですが、そのとき僕は「本物のピーターパンに会えた」という気持ちになって。
ピーターパンをやるには、いろいろな要素が必要で、テクニカルなことも求められるのですが、まずピーターパンになれる素質があるかどうかがすごく大事じゃないですか。咲良にはその素質があると思います。
森さんの演出はすごく細かいので、今役者全員で戦っていますけど、毎日、咲良は進化している。吉柳咲良ではなくて、ピーターパンとして存在していると思える瞬間が今回たくさんあります。本物のピーターパンに会わせてくれる稀有な役者ですよ。
瀬戸:会ったときから、何か出来上がってる感じでしたね(笑)。年齢を聞いたら、なんと17歳!17歳なのに、本当にしっかり歌えるし、頼れる座長ですよ。
咲良ちゃんが森さんと出会ったことで、より女優としてステップアップしていく様子が稽古を見ていると分かります。きっと今までのピーターパンとはまた違う、無邪気だけれども残酷さも持ち合わせたピーターパンを細かく作れていると思います。
稽古場以外のところでは、かわいらしい17歳の女の子。K-POPが好きで、よくダンスを踊っています。
小西:それから、何より声がいいですよね。本当に鐘がなるような歌声で、澄んでいる。あの声は持とうと持っても、なかなか持てるものではないです。
――改めて観劇を楽しみにされてるお客様に一言お願いします!
小西:今とにかく僕らが皆さんに伝えたいのは、皆さんに観てほしいということです。この作品は、特に子どもはもちろん、幅広い世代に見ていただけると思います。東京公演のみですが21年ぶりに生のオーケストラで上演されるので、その点も注目ポイントです。
毎回違う演出で、新しいものが見られるという魅力もありますが、一方でやっぱり40年間に渡って育ててきた作品でもあると思うんですよね。どんどん作品は深まっていくものだと思うし、特に4度目の出演となる咲良が過去最高のピーターパンを見せてくれると思うので、ぜひたくさんの方に来ていただきたいです。
瀬戸:このご時世、舞台に出させていただけることがまず、すごく幸せです。この『ピーターパン』という作品は本当に想像力をかきたてる作品。想像力って、ダチョウなどの動物にはなくて、人間だけが持ってる宝だと思うんです。想像力や夢がたくさん詰まった世界をぜひこの夏、楽しんでください。劇場で待ってるよー!
取材・文・撮影:五月女菜穂
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