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貫地谷しほり、真矢ミキ、近藤くみこ……今を生きる女性たちがMs.OOJAと紡いだ『Stories』

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リアルサウンド

 「あなたの人生を、歌にしてみませんか?」

参考:Ms.OOJAの歌声はなぜ支持される? 数々のミュージシャンが“惚れる”理由に迫る

 そう言われたら、あなたはどんな歌詞を紡ぐだろうか。家族のこと、恋人のこと、友だちのこと……これまで歩んできた道のりを振り返り、今ここにいる理由となるターニングポイントを探すのではないだろうか。忘れられない思い出、忘れなきゃともがく悲しみ、そして忘れたくないと抱きしめる想い。その全てが、今の自分を作っているのだと改めて気づくはずだ。

 今を凛と生きる女性の、女性による、女性の大切なものを綴った作品集。“あなたの物語は、わたしの物語“というコンセプトのもと、5人の女性著名人の人生を紐解き、Ms.OOJAが歌う初のコラボレーションEP『Stories』が10月24日に発売される。

 女優の貫地谷しほり、真矢ミキ、お笑い芸人ニッチェの近藤くみこ、元アスリートで2児のママの浅尾美和、そして井上ひさしを父に持つ劇団座長であり作家の井上麻矢。かねてからMs.OOJAと親交の深い女性たちが綴った歌詞は、エッセイのようでもあり、ポエムのようでもあり、誰かへの個人的な手紙にも見える。それぞれがどんな思いでこの作品と向き合ったのか、リリースに先駆けて、特設サイトおよび公式YouTubeにはMs.OOJAが5人と対談している動画がアップされたのも面白い。

 「人はみんな違う星から来た宇宙人みたいなもの。好きになるって奇跡」と屈託なく笑う貫地谷、「夫婦でも友だちでもどこかでいつか別れがくる」と生と死を冷静に見つめる真矢、「最近やっと自分に向き合えてるんですよ。自分がどういう人間なのかを考える余裕ができた」としっとりと話す近藤、「自分より大切な存在ができるなんて」と家族の大切さを噛み締めている浅尾、「大事な人からもらったものをつないでいく。それが生きている人間みんなの仕事」と父の言葉を大切に表現者として生きる井上。彼女たちの顔はリラックスしていて、まるで女子会に混ぜてもらっているような感覚になる。あまりに赤裸々な家族や恋愛のエピソードに、聞いていいのかなとドキドキするほどだ。

 Ms.OOJAは、対談中も言葉を熱心にメモしたり、一緒に笑ったり、泣いたり……そんな共感力の高い彼女だからこそ、この作品が生まれたのだろう。改めて5曲を見つめていくと、1人のシンガーソングライターの作品とは思えないくらい、個性が光っている。それは、Ms.OOJAが一人ひとりに向き合った証でもある。

 今作のリード曲となっている「星をこえて」では、恋愛に真っ直ぐな貫地谷らしさが随所に感じられる等身大の言葉が印象的だ。「好きになることは奇跡」と話す貫地谷は、恋にも自分の感情にも素直であることが伝わってくる。恋を失ったときにも、思い切り泣いて、友だちに話して……と、真正面からぶつかっていく姿が目に浮かぶようだ。

 人と人は違う星から来ているくらい、別の生き物だと話す貫地谷。すれ違うことは当たり前で、自分の星の言語や価値観を押し付けていても一緒にいられない。理解しようと努力するのは、簡単なことではない。それでも、星をこえてわかり合いたいと思える相手に出会えたら。そんな巡り会いは、まぎれもない奇跡なのだ。

 また、人は出会えば、いつか必ず別れが来る。砂浜に絵を書きながら夢を語り、共に城を作ったとしても。そのときがくれば、波がさらっていってしまう。何もなかったかのように。そんな無常を抱えながら生きる苦しみを見つめたのは、真矢との共作詞曲「蒼波」だ。

 〈あとどれくらい/あなたと笑うだろう〉明日も同じように笑えるという保証など、どこにもない。大切な人との出会いは、別れの始まりとも言える。幸せは切なさは、いつも背中合わせでやってくる。だが、それでも私たちは生きていくのだ。波がさらっていくことを、知っていても。悲しみを知っているからこそ、日々を大事に生きていく、真矢の信念を感じさせる。

 今を生きる女性たちは、どこか強くあろうと頑張っている人が多い。「自分一人で生きていけちゃう」と伏し目がちに笑った近藤は、お笑い芸人という職業柄、いつも面白いことを優先して、時には思ってもいない言葉を口にすることさえあるという。だからこそ、忘れられない恋を「イヤフォン」に込めた。浅尾は何気ない日常の風景に幸せを感じているのだという、ふだんは言葉にすることでもないとしてしまいそうな想いを「愛しい人よ」にしたためる。「古いものを見つめないと新しいものは生まれない」と語った井上は、生まれ育った家のまわりにあった森の中で、ハーモニカを吹いている原風景をテーマに「あの日のメロディー」を記した。原風景とは、その人の根本となるいちばん古い思い出。思わず、“自分にとっての原風景ってなんだろう“と、頭の中の最も奥にある引き出しを開いてみたくなる。

 人生には、いくつもの分岐点がある。特に女性は、社会的にも肉体的にも、その変化が大きいようだ。少女から大人の女性になる過程は近くても、結婚・出産・育児となると、同じところにいた友人が、急に遠く感じることも。特に、今の時代はその枝分かれの仕方も複雑で、いつも最善を選んでいるとは思っていても、「これでよかったのかな」と、ふとまわりを見渡したくなることもある。

 だからこそ、こうした作品が求められているのだろう。そして、同じように感じている人と繫がる新たな喜びを知るのだ。もしかしたら、今を生きる女性はもちろん、次世代の迷える女性たちの新たな道標となるかもしれない。自分が誰の歌詞に共感したのか、そして自分なら「こんな歌詞ができるかも」と、この作品を女子会トークのテーマにする。そんな楽しみ方もできそうだ。(佐藤結衣)