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第43回ぴあフィルムフェスティバル開幕 OP上映作品『裸足で鳴らしてみせろ』舞台挨拶レポート

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左から、PFFディレクター荒木啓子、工藤梨穂監督、佐々木詩音さん、諏訪珠理さん、伊藤歌歩さん

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黒沢清、諏訪敦彦、塚本晋也、山戸結希などなど、これまでプロの映画監督になったのは160名以上。「映画の新しい才能の発見と育成」をテーマに、現在日本映画界の第一線で活躍する映画監督を多数見出している映画祭<第43回ぴあフィルムフェスティバル>(※以下PFF)の開催が9月11日(土) にスタートした。

開催を告げるオープニング上映作品に選ばれたのは、PFFスカラシップ最新作『裸足で鳴らしてみせろ』。初のお披露目となる完成上映に、工藤梨穂監督、出演者の佐々木詩音、諏訪珠理、伊藤歌歩が来場した。

PFFスカラシップ作品は、「PFFアワード」の受賞監督からオリジナル企画を募り、毎年1名を選出。PFFが作品の企画、製作、劇場公開までトータルでプロデュースする。これまで、園子温、橋口亮輔、矢口史靖、李相日、荻上直子、内田けんじ、石井裕也ら、錚々たる監督たちの商業映画デビュー作を世に送り出してきた。

このPFFスカラシップ作品の新たな権利を手にしたのは、PFFアワード2018でグランプリを獲得した『オーファンズ・ブルース』の工藤梨穂監督。

工藤梨穂 監督

まず上映前、舞台挨拶に立った工藤監督は「このような大変な状況の中、これだけ多くの方にお越しいただいて幸せです。ご来場ありがとうございます」と観客に感謝の気持ちを伝えた。

同じく登壇した佐々木は、「最初にお話をいただいたとき、自分には荷が重すぎると断ろうかと思った。現場に入ると、プレッシャーもすごくあったが、自分と役が一致していくような感覚を初めて体験しました。自分にとってとても大切な作品。みなさんの心のどこかに届けばいいなと思います」と語り、諏訪も同調するように「撮影中、(役を演じているときは)暗闇の中を走っているようだった。でも、工藤監督が考え込んだりしているときの背中をみたら、いろいろな責任を背負っているように見え、俺はこんなところで弱気になっちゃいけないと踏ん張ることができた。なので(佐々木さんと同じく)僕にとっても大切な作品になって、これだけ多くの人がこれからみてくださって、今日は本当に幸せです」も感無量といった様子。

伊藤も「台本を読んだ時点から、『これはすごい作品になる!』と思いました。この作品がおもしろくなくなったら、わたしたちの責任だと思うぐらいでした。みんなで魂削り合ってという瞬間がたくさんありました。みなさんの感想が気になっています。今日楽しんでいってください」と喜びの言葉が並んだ。

伊藤歌歩さん

その後、世界初の作品のお披露目となり、上映後はアフタートークへ。再び、工藤監督、佐々木、諏訪が登壇し、撮影時の思い出や、工藤監督が脚本を書く際にずっとリピートしていた曲のことなどの舞台裏のエピソードが明かされた。

これを撮るためにいままでの人生があったんじゃないか

『裸足で鳴らしてみせろ』は、佐々木演じるナオミと、諏訪演じるマキが、「自分の代わりに世界を見てきてほしい」というマキの養母で盲目のミドリに、世界各地の音を届けようとする物語。ミドリに音を届ける過程で、次第にひかれあうようになった二人の関係の行方が丹念に描かれるが、とりわけ佐々木と諏訪の魂も身体も丸ごとぶつかりあうような演技が強く印象に残る。

実際、佐々木、諏訪ともにそうとう役にのめりこんだようで、なかなか役が抜けなかったことをそれぞれ告白。佐々木が「いままで何本か映画に出演してきたが、初めて実人生ともうひとつ別の(ナオミという人物)の人生を歩んだような感覚がある。演じてこういう感覚になったのははじめてのこと」と語れば、諏訪も「撮影は昨年の10月で、作品が完成して2月にはじめて作品をみたときは、まだ役が抜けきっていなかった。そのときはまだマキと自分を切り離して考えることができなかった。撮影が終了後は、マキロスに陥って、寂しかった。今日も佐々木さんに会うとナオミの匂いがして、なんかドキドキします」と明かした。

佐々木詩音さん

この二人の演技に対し、工藤監督は「大げさかもしれないけど、これを撮るためにいままでの人生があったんじゃないか。そう思えるすごい芝居を二人はみせてくれたと思っています。そういういましか撮れない場に立ち合えた」と二人に感謝するとともに彼らの演技を絶賛した。

トークは40分を超え、最後に佐々木「撮影後は、ほんとうに燃え尽きて、もうこれ以上何もできないと思ったけど、今日多くの方にみていただいて、改めてこの作品をいろいろな人に届けるまでが自分の責任だと思った。これからいろいろな人に作品を届けたい」諏訪「こうして作品を見る時間を共有できて、忘れられない1日になりました」工藤「完成から約半年、今日までPFFという場で観ていただけることをずっと想像して心待ちにしていました。一方で初めての観客の方々に、この映画どう映るのかという恐怖もありました。でも、今日、ほんとうにこのように多くの方にみていただいてとてもうれしいです」とそれぞれに言葉を寄せ、会は無事終了した。

諏訪珠理さん

なお、同映画祭は昨年に引き続き新型コロナウイルス感染拡大予防を徹底した上で、9月25日(土) まで東京・京橋の国立映画アーカイブで開催される。メイン・プログラムで、第1回から続く世界でも稀な自主映画のコンペティション「PFFアワード2021」は、489本の応募作から18作品が入選。平均年齢25.4歳という若手映画作家たちが、グランプリほか各賞を競いあう。

最終審査員を務めるのは、俳優の池松壮亮、最新作『かそけきサンカヨウ』が公開間近の今泉力哉監督、今年『あのこは貴族』が公開された岨手由貴子監督、芥川賞受賞作家の監督の『寝ても覚めても』(18) の原作者である柴崎友香、脚本家の高田亮の5名。24日(金) に各賞は発表される。

そのほか、カンヌ、ベルリンをはじめ、今世界の映画祭で脚光を浴びるタイの新鋭、ナワポン・タムロンラタナリット監督をフィーチャーした世界初の大特集『ナワポン・タムロンラタナリット監督特集~タイからの新しい風』、沖田修一監督、松居大悟監督らが大ファンを公言する今は亡き森田芳光監督の傑作を語り尽くす『森田芳光70祭~伝えたい、モリタを~』、一昨年から始まり好評を呼ぶ、ピーター・バラカン氏が作品の選定からナビゲーター&トークまでを務める『映画と音楽シリーズ「ブラック&ブラック」』、映画監督の石井岳龍や音楽家の長嶌寛幸らを講師に招いた『PFFスペシャル講座』など、本映画祭でなければ実現しないオリジナルな企画・特集が目白押し。新たな映画との出会い場となっている。

また、「PFFアワード2021」の入選作品18本に関してはオンライン配信が本日からスタート。会場になかなか足を運びずらい方などは、こちらで新たな映画の才能に出会ってほしい。

取材・文:水上賢治

<開催情報>
「第43回ぴあフィルムフェスティバル」

日程:2021年9月11日(土) ~25(土) まで
開場:国立映画アーカイブ

公式サイト:
https://pff.jp/43rd/

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