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直球勝負のエンタメ作品を! 今石洋之監督が語る『スター・ウォーズ:ビジョンズ』

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『THE TWINS』 (C)2021 TM & c Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

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日本のアニメーション作家たちが9つの新しい作品を手がける『スター・ウォーズ:ビジョンズ』がディズニープラスで配信されている。今回のプロジェクトでは7つのアニメスタジオが参加しているが『キルラキル』『リトルウィッチアカデミア』『プロメア』などで知られるTRIGGERも参加。『THE TWINS』の今石洋之監督はこれまでの作品同様、圧倒的なテンションと密度でリピート鑑賞必至の16分を描き出している。

TRIGGERは先に紹介した作品のほか、『キズナイーバー』や『SSSS.GRIDMAN』などクオリティの高い作品を発表し続けるアニメーションスタジオで、今石監督が手がけた『プロメア』のように一度観ると何度も“体感”したくなる作品が多いのが特徴だ。

「うちは社長が会社の中で一番『スター・ウォーズ』を愛しているので、会社としては“やらない”という選択肢が存在しないんですよね」と今石監督は笑顔を見せる。TRIGGERの社長でもある大塚雅彦監督は大の『スター・ウォーズ』ファンで、本シリーズでもサーガへの愛情があふれる短編『The Elder』を手がけているが、今石監督はこれまで通り“直球のエンターテイメント作品”に挑んでいる。

「『スター・ウォーズ』ですから、すごく熱いファンが大挙してやってくるんだろうなというイメージはありました。でも、それ言っていたら何もできないですし、実写映画の世界をアニメーションでやるというのは、この仕事をしていると“つきもの”ではあるんですよ。ただ、そういうものってクオリティ至上主義で終わってしまったり、作品の世界観を見せるだけで終わってしまったりして、エンターテイメントになりきらないものが多かったりもするんです。だから、短編だけど直球勝負でエンターテイメントになるものを狙ってつくりたいと思いましたし、そこは最初からブレずにできましたね」

『THE TWINS』の主人公は、銀河皇帝が放ったダークサイドの力によって誕生した双子の暗黒卿Am(アム)とKarre(カレ)だ。ふたりは銀河帝国の再興を企み、新帝国旗艦“ツインスター・デストロイヤー”起動の最終調整に入っているが、そこで事件が発生する。時間は16分だが、新キャラクターの登場、アクション描写、メカ描写がふんだんに盛り込まれ、『プロメア』や『宇宙パトロール・ルル子』に負けない密度で物語が進んでいく。“起承”をすっ飛ばして”転転転転転…”と見せ場が続く今石作品の魅力は本作でも健在だ。

「いつも“どれだけ本気になれるか?”を自分に課しているんですけど、『スター・ウォーズ』という題材でどこまで逸脱しつつ、逸脱しきらないかが狙いどころだと思っていました。というのも、やりたい放題やって破綻するのは意外とラクだったりするんですよ。だからこそ今回は、逸脱しきらないところを狙って作業していきました。デザインをやったコヤマ(シゲト)さんと、脚本の若林(広海)は僕よりも何倍も『スター・ウォーズ』について詳しいんです。だから作業していく中で細かい部分は教えてもらいましたし、僕としては彼らがスタッフとしている限り、自動的に『スター・ウォーズ』になるって安心感の中でやってましたね」

『スター・ウォーズ』の世界を“日本のアニメ”として描く意味

その上で今石監督は、『スター・ウォーズ』のデザインや世界観を日本的なものに置き換えないことにこだわった。

「よく“日本文化の影響を受けて生まれた『スター・ウォーズ』を日本でアニメーション化することの意味”みたいなことを質問されるんです。そういうコンセプトでつくると、時代劇になったりしがちですけど、『スター・ウォーズ』は日本的なものを“解釈”したり“翻訳”してジェダイのようなものを作り出したわけですよね? 僕は解釈や翻訳された状態の方が好きなんですよ。だから、今回の作品でもそれを解釈される大元の状態に戻そうとは思っていなくて、意訳されたままアニメーションに意訳したい。『スター・ウォーズ』の中にある“日本っぽさ”は、“日本のアニメっぽい表現”によって達成しようと最初から考えていました。デザインや画面のイメージは本家『スター・ウォーズ』なんだけれども、それを日本のセルアニメで描くことの良さ。そこをめざしました」

その結果『THE TWINS』が達成したアクションの豪快さ、語りのテンポの良さとスピード、キメのカッコ良さとその精度、何度も観たくなる中毒性は圧倒的だ。本作は『スター・ウォーズ』を最初に目撃した時に感じた衝撃や、無条件に“カッコいい”と感じた瞬間を改めて体験できる内容になっている。

「エピソード4の最後でハン・ソロが助けに来るじゃないですか。ああいう時間が永遠に続いてほしいんですよね(笑)。エピソード4はああやって最後、西部劇で騎兵隊が助けにくるみたいな感じで“やったー!”って終わって、表彰式で映画が終わる。最初の映画だからできたことかもしれないですけど、あの無邪気な終わり方というのは一番の魅力だと思っているので、そういう部分は忘れないようにつくってましたね」

主人公のAm(アム)とKarre(カレ)のドラマは魅力的で今石監督は配信前から「我々の生み出したキャラクターたちがいつか正史に登場したらうれしいです」と語っており、続編やシリーズ化も期待したいところだ。「先ほども言いましたけど、TRIGGERは『スター・ウォーズ』の案件が来たら断ることはないと思うんですよ(笑)。断ったら社長にクビにされるかもしれない!」と笑う今石監督が再び『スター・ウォーズ』の世界で逸脱ギリギリの新作を手がけることはあるのか? まずは『THE TWINS』を繰り返し楽しみながら、朗報を待ちたい。


『スター・ウォーズ:ビジョンズ』
ディズニープラスにて独占配信中
(C)2021 TM & c Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.