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「運命を感じながら役に臨みました」上白石萌歌、『ソロモンの偽証』に挑む

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ある高校の校庭で、男子生徒の死体が発見される。自殺と判断される中、事態はマスコミやSNSを巻き込む騒動へと発展。動揺する生徒、体裁を気にする教師、困惑する保護者……。第一発見者でもある女子生徒・藤野涼子は大人たちの対応に不満を抱え、さらなる事態に翻弄されながらも立ち上がる。「裁判をしませんか。わたしたちで」。宮部みゆきが著し、映画にもなったミステリー小説『ソロモンの偽証』をWOWOWが全8話構成で連続ドラマ化。前代未聞の学校内裁判を主導し、真相を突き止めようとする主人公・藤野涼子を演じた上白石萌歌に話を聞く。

──2015年に公開された映画版を劇場でご覧になっているそうですね。当時の上白石さんは物語をどう捉えたのでしょうか?

上白石 主人公たちは当時の私と同じ中学生で、学生ならではの繊細さや葛藤を抱えていました。いろいろなものを鵜呑みにしやすかったり、大人が絶対的な存在だと思う中で、大人と対峙したり、大人を疑ったり、自分の主張をしたりする学生たちの姿が印象的でしたね。キャストの方々の力強いお芝居と相まって、頭にガンッと衝撃を受けたのを覚えています。

連続ドラマW 宮部みゆき『ソロモンの偽証』

──今回のドラマは、高校生の設定に変わりました。

上白石  物語の舞台も、昭和から現代に変わりました。コミュニケーションを取るツールが変わり、SNSにおける誹謗中傷の問題なども出てきます。昭和に発せられたときとは違う温度の言葉が高校生たちの間を行き交い、さらに情報が増え、真実とは何かの問いが強くなっている。きっと、視聴者の方々も感情移入しやすいだろうなと思いました。

──藤野涼子を演じるにあたり、どんな準備をしましたか?

上白石  原作を読んだり、裁判を傍聴しに行ったりしました。本物の裁判の空気感を作品に生かしたくて、メモを取りながら。あとは、高校時代の日記を読み返し、当時の揺らぎやすい心を思い出したりもしていました。

──日記を役作りに使うということは、ご自身からの距離が近い役なのでしょうか?

上白石  作品を見るときって、自分に近い存在を探しがちなんです。映画館に足を運んだ当時も、自分に最も近く思えたのが藤野涼子ちゃんでした。彼女のことをもっと知りたいなと思えて。今回も、ある種の運命を感じながら役に臨みました。

涼子も私も、必要以上に責任感を感じてしまうところがあると思います。私の場合、作品に入る前に寝つきが悪くなったりして(笑)。周りの期待に応えたい、自分で自分を超えたい。そんな思いで圧をかけてしまうことが多いんです。そういった意味でも、共感しながら涼子を演じられました。

──裁判を傍聴したときのことも聞かせてください。

上白石  ドラマ『ファーストラヴ』で被疑者を演じたときも見に行きましたが、そのときは被疑者の方ばかりを見ていて。涼子が学校内裁判で検事役を務める展開上、今回は検事の方の動きを見るようにしていました。検事って、揺らいじゃいけないんだなと感じましたね。冷静さと正確さを求められる。それに、人の話をよく聞かなくちゃいけない。裁判中の涼子も、相手の答えを待つことが多いんです。発するだけでなく、受ける大切さはお芝居にもあるものなので、それにちょっと重なりました。

浮所飛貴くんと坂東龍汰くんがムードメーカー

──学校内裁判が象徴するように、この物語においては“事実と想像”もひとつの鍵になっていると言えます。上白石さん自身は、“事実と想像”にどう向き合っていますか?

上白石  例えば人を殺す役を演じるとき、刃物で人を刺すのがどんな感覚なのか、どんな心の動きがあったのかを経験することはできません。涼子みたいに、クラスメイトが死んで真実を暴く立場になることも現実では起こり得ないですし。想像するしかないんですよね。

私は字を書くことが好きで、どの作品に入る前も役についての妄想を書き出すようにしています。好きな色は何か、猫派か犬派か、どんな夢を持っているか。台本に書かれていないことを連想ゲームみたいに膨らませていくんです。そうすることで、直接役立つことはなくても、ふとした瞬間に何かが滲み出ることはあるかもしれない。お芝居が想像に助けられることはあると信じています。

──涼子を演じるにあたっても何か想像しましたか?

上白石  原作からも分かることですが、将来像を考えたりはしました。あと、まだ撮影セットを見る前に、「どんなお部屋かな?」と想像して。クッションは無地のような気がしたし、シーツもよく洗っていそう(笑)。その答え合わせを現場でするのも好きです。

──同世代のキャストの方々との共演はいかがでしたか?

上白石  共演したい方々ばかりだったので、すごく嬉しかったです。お芝居をしたり、たわいない話をしたりするのが楽しく、刺激的な撮影になりました。重い作品にもかかわらず、舞台裏ははっちゃけていて。ムードメイカーは浮所(飛貴)くんと坂東(龍汰)くん。賑やかなツートップです(笑)。

──浮所さん演じる野田と涼子の幼馴染らしい雰囲気が良かったです。

上白石  野田健一くんは涼子に最も近しい存在。なので、浮所くんともいいバランスを作っていかなくちゃと思っていたんですが、そう考える必要もないくらい自然と仲良くなれました。本当に人懐っこくて、スッと入ってきてくれるんです。何も言わなくても通じ合える仲の良さを、健一くんと涼子のお芝居に出すことができました。

──事件を一緒に調査する中、野田くんは肝心なときにあっさりバイトに行っちゃったりも(笑)。

上白石  本当に気心の知れた友達って、すごくさっぱりしていますから。そこもなんだかリアルですよね(笑)。

──一方、坂東さん演じる大出は、事件の犯人だと疑われる生徒です。大出が涼子を威圧するシーンが印象的でした。

上白石  図書室のシーンですよね。あのシーンの大出くん、本棚の本を1冊ずつ指で触りながら近づいてくるじゃないですか。涼子にとっては怖いシチュエーションなんですけど、実際の撮影はおかしくて。完成した本編を見たときも、手つきが独特でちょっと面白かったです(笑)。坂東さんは自由で、すごく挑戦心もある方。お芝居で圧倒される感じがありましたし、大出くんの役は坂東さんにしか演じられなかったと思っています。

──物語の中では、高校の残酷さも浮き彫りになってきます。

上白石  私自身、高校3年間は悩んだ時期でした。薄い膜がずっと自分にまとわりついていて、そこから出よう出ようと必死でしたね。ちょっとした傷がどんどん体に広がっていくようで。すごく傷つきやすかったですし、孤独も感じやすかった。長く感じた3年間でした。高校って、みんなが生きづらさを抱えている部分はありますよね。でも、学校だけが世界じゃない。外にも目を向けて、自分にとっての安らぎの場を作れば生き抜けると思います。

──上白石さんにとっては、デビュー作以来のWOWOWドラマですね、

上白石  『分身』でデビューしたときは、まだ小学校6年生でした。北海道ロケが楽しく、習い事のような感覚だったのを覚えています。でも、「またWOWOWの作品に出たい!」という気持ちは生意気ながら持っていて。戻って来られて嬉しいですし、原点を見つめ直すこともできました。作品に入る前に感じたプレッシャーも、いい作品にしたい思いがあってこそ。重圧も緊張も大事に噛みしめながら演じられたのが、私の成長かなと思っています。

取材・文:渡邉ひかる 撮影:川野結李歌
ヘアメイク:冨永朋子(アルール) スタイリスト:道端亜未



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WOWOW開局30周年記念
連続ドラマW 宮部みゆき『ソロモンの偽証』
10月3日(日)スタート(全8話)
毎週日曜夜10:00 放送・配信〔第1話無料放送〕

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