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リサーチ10年 『最後の決闘裁判』の裏にある徹底的な歴史考証、原作者エリック・ジェイガーが語る

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『最後の決闘裁判』 (c)2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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10月15日(金)に日米同時公開となる『最後の決闘裁判』。今回は緻密にリサーチを重ねた実話である本作の裏側を、原作者エリック・ジェイガーの言葉を借りながら紹介しよう。

アカデミー賞作品賞を受賞した『グラディエーター』などのリドリー・スコット監督が「アカデミー賞」脚本賞を受賞した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のマット・デイモンとベン・アフレックが黒澤明監督の『羅生門』から影響を受け、24年ぶりにタッグを組んで参加した脚本を映画化。マット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレック、そして 2019年にエミー賞主演⼥優賞を受賞した注目の演技派女優ジョディ・カマーという豪華キャストを迎え、歴史を変えた世紀のスキャンダルを描く。

決闘裁判とは、その名の通り、一向に解決を見ない争いの決着を、命を賭けた決闘で決定するというもの。真実を知っているのは神だけであり、その神が“正しい者”を勝利へと導くと信じられ、中世ヨーロッパで正式な法手続きとして広く認められていた。

舞台は14世紀フランス。権力と地位を求めて苦闘する騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)の美しき妻マルグリット(ジョディ・カマー)が、夫の友人であり、宮廷から寵愛を受ける家臣ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)に乱暴されたと訴えた。だがル・グリは無実を主張し、目撃者もいない。真実が藪の中へと消えかけた時、マルグリットの生命を賭けた闘いは“決闘裁判”に委ねられる。

本作は、2004年に出版された原作『最後の決闘裁判』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫・栗木さつき訳)の著者エリック・ジェイガーによる、広範囲なリサーチ研究を基に製作されている。およそ600年前に実際に行われた法で公認された史上最後の決闘裁判について、年代記や法律文書だけではなく、財産証明書や軍事関連の帳簿、建築設計図、古地図、更には歴史研究家が残した回顧録や歴史小説に至るまで、ありとあらゆる歴史的記録を、国をまたぎ探し出し、判読できないほど劣化した資料を翻訳もしながら、10年にもわたって詳細に調査したという。

ジェイガーは「鎧の専門家や、木に残された当時の天候パターンを研究していた年輪気候学の方など、様々な専門家と手紙のやり取りをしました。刀剣による接近戦とはどういうことなのか、その感覚をよりよく知るためにフェンシングのレッスンも受けました」と、徹底的な裏付けも行ったことも明かす。

映画化への流れは、エグゼクティブ・プロデューサーでもあるマット・デイモンが、この伝説と化した決闘裁判を詳細に描いた原作に注目したことから始まるが、ジェイガーはコンサルタントというポジションで脚本にも参加。「脚本家たちのために、系図学に関するものから、婚礼における慣習や葬儀における儀式、軍事的な専門用語など多岐にわたり調査しました」と、映画のためにより一層丹念に調べ上げたという。



さらに「初期のドラフトでは、決闘の前に行われるふたりの対戦者によって誓われる正式な宣誓が抜け落ちていたのですが、中世の世界では、宣誓というものは司法的な手続きのひとつで、その決闘の最も大事な部分であると指摘しました。例えば、結婚で誓いの言葉を宣誓する、主人に対して臣下であることを宣言する、市場で取引をするのも本質的には宣誓事なのです」この進言に代表されるように、ジェイガーが参加したことでより史実に忠実なリアリティと信頼性が保証されたことは言うまでもない。

実際決闘によって決着はついているものの、カルージュとル・グリのこの決闘については諸説あり、マルグリットを襲ったのはル・グリではなく別の人物であったのではないか等、さまざまな説が存在する。事実と矛盾が生じている部分も多く、当時の人々は、カルージュとル・グリのどちらが裁かれるべきかをめぐり真っ二つに分かれたという。ノルマンディー地方の歴史の大事な一部として、決闘を再現するお祭りまであるほど、今も人々を魅了する実話ミステリーなのである。

これまでも、女性が働きにくかった時代に弁護士となり、女性の権利を訴え続けアメリカの最高裁判事を務めたルース・ギンズバーグ氏の半生に迫る『ビリーブ 未来への大逆転』や、黒人への差別が根強い1980年代の米アラバマ州で冤罪の死刑囚たちのために奮闘する弁護士ブライアン・スティーブンソンの実話を描いた『黒い司法 0%からの奇跡』など、それぞれの時代において実際に歴史を動かす役目を担ってきた事象は、史実の見応えと人々を奮い立たせるだけの力を与えてきた。

女性が声を上げることのできなかった時代に立ち上がり、裁判で闘うことを決断した勇気ある女性の姿は、14世紀にしていわば女性の地位の転換を示したと言えるのではないだろうか。実話裁判映画としても見逃せない極上の実話ミステリー、この秋は本作で歴史の証人となってほしい。



『最後の決闘裁判』
10月15日(金)より公開