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稲葉友×大鶴佐助×泉澤祐希「観たらきっと何年も会ってない誰かを思い出す」

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インタビュー

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(左から)泉澤祐希、稲葉友、大鶴佐助

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ともだち、ってなんだろうか。

自分は相手のことを「ともだち」と思っていても、相手は自分のことを「ともだち」と見てはいないんじゃないだろうかとか。「ともだち」という言葉を口にすること自体、気恥ずかしく感じるようになったりとか。「ともだち」はいつも心をほっこり温かくさせて、心をぎゅっと締めつける。

そんなふうに「ともだち」について考えたのは、この戯曲を読んだからかもしれない。

『髪をかきあげる』で第40回岸田國士戯曲賞を受賞した劇作家・鈴江俊郎の代表作のひとつ『ともだちが来た』。大学1年の夏、蝉の鳴く蒸し暑いアパートで、とりとめのない会話を繰り広げる<私>と<友>。そんなありふれたひとときが、せつなさとなって胸をせり上げる。

<私>と<友>を演じるのは、稲葉友、大鶴佐助、泉澤祐希の3人。まもなく30代。誰がどう見ても「大人」だ。だけどまだどこか「大人」の据わりが悪くて、「若者」との間を行き来しているような3人だからこそ、この戯曲がよく似合う。

演出家はつけない。どちらが<私>と<友>を演じるかも、本番当日、舞台上で行うコイントスによって決定する。そんな挑戦的な企画を引っさげ、公演に臨む3人は、今この戯曲についてどんなことを考えているのだろうか。

朝ドラに1シーンだけゲスト出演するような感覚です(笑)

――今回は、稲葉さんのリクエストで大鶴さんと泉澤さんに声をかけたそうですね。大鶴さんとは、2019年、今回の劇場と同じ浅草九劇で『エダニク』に挑みました。

大鶴 あのときの稽古場が結構ハードで。

稲葉 本当に(笑)。果てましたよね。

大鶴 おかげでぐっと仲良くなった。同じ修羅場をくぐった仲というか。

稲葉 『エダニク』が終わったあと、2人で浅草で飲んで。

大鶴 本当は本番中も飲みたかったんだけど、ハードすぎてそんな余裕がなくて。

稲葉 だから終わったら絶対飲もうって話をしてて。毎日、いわゆるホッピー通りに並んでいる飲み屋を「絶対ここで佐助と飲むんだ」って思いながら劇場に向かってた(笑)。

大鶴 で、無事に全公演が終わったあと、1日で今までの分を取り返すぐらい飲んだ(笑)。

稲葉 あのときはマジで飲んだ。何軒ハシゴしたか覚えてない(笑)。

――泉澤さんとは共演経験はないですよね。

稲葉 直接共演はしてないんだけど、祐希と同じ事務所の伊藤沙莉と僕が共演して。そのつながりで3〜4年前に2回くらい飲んだことがあって。つながりと言えるつながりはそれくらいなんだけど、今回、『ともだちが来た』を読んだときにパッと顔が思い浮かんだのが祐希だったんですよね。

泉澤 なんで浮かんだんですか?

稲葉 なんでって。浮かんじゃったんだから、しょうがないじゃん(笑)。

泉澤 それはもうありがたい話ですけどね(笑)。

稲葉 空気感が大きいかな。作品の空気と祐希がリンクしたというか。わりと理屈じゃないところの話になるけど。

泉澤 お話をいただいたとき、びっくりしましたもん。本当飲んだだけで、そのあと一緒に遊びに行ったりしていたわけじゃないから。

大鶴 でも確かに僕も読んだとき泉澤くんがパッて浮かびましたけど。

泉澤 本当ですか。

大鶴 実は僕も泉澤くんと20歳のときに居酒屋で会ったことがあって。そのときの印象もそうだし、やっぱり泉澤くんというと等身大の役をよくやっているのを映像作品で観ていたので、稲葉くんから名前を聞いたときにぴったりだなと。

泉澤 ありがとうございます、うれしいです(照)。

――今回は、共演経験がある稲葉さんと大鶴さんの間に、泉澤さんが飛び込んでいくかたちになりますね。

泉澤 そうですね。朝ドラにちょこっと1シーンだけゲスト出演するみたいな感覚です(笑)。

稲葉 ちょこっとじゃないから、ずぶずぶに引きずりこんでいくから。

泉澤 何回かリモートで話したり本読みをしたりしてるんですけど、すごいいいカンパニーだなっていう感触はもうすでにあるので、2人と芝居をするのは初めてなんですけど、いけそうだなっていう手応えは感じています。

演じる人によって形が変わる本だと思う

――リモートでもうコミュニケーションをとっているんですね。

稲葉 そうですね。ここ1ヶ月くらいはよくこの3人でグループ通話をしながら本についての話をしたり。

泉澤 そのときの佐助くんの感じがめっちゃ好きなんですよ。ボトルのままワイン飲んでて(笑)。

稲葉 そう。リモート画面越しに海賊がいる(笑)。

大鶴 あの場なら許されるかと思って(笑)。

稲葉 わりとゆるい感じでやってて。稽古場でもないし、演出家もいないし。毎回、何を話そうと決めるわけでもなく。プライベートの話になったらプライベートの話でいいし、本の話になったら本の話でもいいし。むしろ酒がちょっと入ってるくらいの方が会話の調子もいいっていう。

泉澤 そのときに改めて思ったんですけど、稲葉くんは圧倒的なトーク力がある。頭の回転が速いんですよ。戯曲の読み解き方も、稲葉くん独特の視点から理論立てて説明してくれるから、すごくよくわかる。演出家がいない分、今回はそういうディスカッションをいっぱいしていくことになるだろうから、頼りにしています。

稲葉 そうやって改めて言われると恥ずかしいね。

――本読みをやってみて感じたこの戯曲の面白さについて聞かせてください。

大鶴 哀愁が漂っている作品ですよね。演じる人によって形が変わる本だと思う。特に今回は公演当日にコイントスで配役を決めるから、何が出来上がるかは僕たちですらわからないだろうなって。

稲葉 なんか、今しかできないなって思っちゃって。

大鶴 いや、20代のうちにやれてよかったと思う。

泉澤 楽しみです。めちゃめちゃ怖いですけど。

稲葉 怖いのはいいことだと思って。怖い方が人間って備えるし、バッドな意味じゃなく追い込まれるから、それはそれでいいかなって。この本のいいところは、余白がすごくあるんですよね。佐助の言う通り、誰が演じても違う形になるだろうけど、それでも本として壊れないのは、骨格がしっかりしているから。今はまだその骨組みを理解しようとしているところ。デカい屋台骨をうっかり見落としていることにならないように、俳優3人であーだこーだ言い合っています。

大鶴 一緒に本読みしているだけで、発見があるんですよね。ここの台詞をそういう声色で来るんだって驚くところがいっぱいあるし、それに反応して自分の音や感情も1人で読んでいたときとは全然違うものになる。

稲葉 同じ<私>と<友>でも3人それぞれ違っていて、こんなに違っていいんだってうれしくなるし、自分がやるときのヒントにもなる。1人2役って大変だけど、3人で2役をつくるのってめちゃくちゃ脳みそが煮詰まるというか、贅沢だなって思う。

泉澤 ずっと<私>と<友>の2人だけの会話が続くんですけど、その会話がリアルというか。わざと会話を噛み合わなくさせるところとか、この会話、友達としたことあるぞみたいなのがいっぱいあるんですよ。1本まっすぐな線が伸びているところを、あえてそこから脱線させて。逸らした線上でまた会話を重ねていくことで、その線が何本にも枝分かれしていく。どうなるかはわからないですけど、それが最終的に1本の線になればいいのかなって。今はそんなイメージで考えています。

大鶴 たぶん終わったときにこの話をハッピーととるかバッドととるかはお客さん次第。そこはお客さんに任せるとして、僕たちはこの作品の持っている温度感をちゃんと届けられたらいいのかなと思います。

無意識に蓋をした記憶を、優しく開けてくれる作品

――この<私>と<友>のやりとりを通して、「ともだち」について何か想起されるものはありましたか。

大鶴 僕にも幼稚園とか小学校のときにめちゃくちゃ仲が良くて、でも今は全然連絡をとっていない男友達がいて、そいつのことが浮かびました。時々元気かなって思い出すけど、だからと言って何かアクションを起こすわけでもなく、そのまままたふっと忘れるみたいな昔の友達なんですけど。たぶんみんな共通でそういう相手っていると思うんですよね。だからと言って、じゃあこの『ともだちが来た』を観ても今すぐ会いたいとなるわけではないけど。

稲葉 わかる。会いたいとはならない。そういう距離感だよね、<私>と<友>って。自分の人生だったら<友>は誰だろうって考えるのは結構大事なことで。僕の場合も、こいつか〜っていう人の顔が浮かんできた(笑)。変な話、この本を読まなきゃ思い出さなかったレベルの、ギリギリ名前を覚えてるくらいの関係なんだけど。

大鶴 うんうん。

稲葉 やっぱり人生、生きているといろんな人と関わりを持つし。いろんな記憶を全部覚えているとキツいから、人って色濃い記憶でも無意識のうちに蓋をしているところがあって。たぶん観た人も何かしら蓋をしている記憶があると思うんですけど、それを優しく開けてくれる作品だと思う。

泉澤 自分が<友>だったら、たぶんこの人に会いに行くだろうなというのは僕にもあって。だから、このお話って全然不思議な話じゃないと思ったんですよ。むしろすごい現実味を帯びている話だし、わかるって感じがしました。

大鶴 これってさ、<私>が<友>に持っている感情と、<友>が<私>に向けている感情って違うじゃない?

稲葉 たぶん違う気がする。

泉澤 <私>は<友>のことを本当に「ともだち」と思っているのか、それは2人だけにしかわからないものがあって。でも少なくとも<友>にとって<私>はものすごくデカい存在だったのかなって。高校を卒業して、しばらく会っていない間も心の拠り所になっていた。そういう人はみんなたぶん1人はいるんだなって思いましたね。

――台本を読んだとき、<友>の視点で読んでいたので、その友情の非対称性にせつなさを感じました。

大鶴 不思議なのが、最初は<友>の方に感情移入するんですね。

稲葉 俺も、最初やるなら<友>だと思った。

泉澤 俺もっす。

稲葉 なんだろう。めめしいのかな、俺たち(笑)。

泉澤 <友>の方が意図がはっきりしているから。<私>は感情が複雑だから、わかりづらいんですよね。

大鶴 でもこの間、3人で本読みしたときに、<私>がわかりやすくなって、逆に<友>の方が難しいのかなって感じがした。

稲葉 結構前に書かれた本ではあるんですけど、今にも通じるものがあるなって思うし。友達の関係性っていろんな定義づけがされる時代じゃないですか。「ともだち」って何? 親友とどう違うの?みたいな。同じクラスだったけど、「ともだち」かと言われたらと微妙だからクラスメイトって呼んだり。先輩でも仲が良かったら「ともだち」っていう関係値だったり。いろんな考え方があるけど、そこを踏まえて『ともだちが来た』っていうタイトルがすごい好きで。「友が来た」じゃなくて、『ともだちが来た』っていうところに余白を感じるんですよね。その余白の埋めるところは埋めて、空けるところは空けて、観た人に持って帰らせてくれるものがいっぱいあるものを劇場でお届けできたらと思います。

大鶴 この間までセミが鳴いてたじゃないですか。それを聞きながら<私>と<友>はこういう状況だったのかって思ったりした。

稲葉 俺はコオロギが鳴いているのを聞いて思った、あ、夏が過ぎたって。

――蝉の鳴き声が聞こえるアパートという設定がいいですよね。自分は経験したことがないのに、なつかしさを感じるというか。

稲葉 原風景ってすごいな、めちゃくちゃパワーあるなと思いました。

――実際には、エアコンをガンガンかけてたはずなのに(笑)。

稲葉 そう(笑)。でも、この2人がいる部屋にエアコンがあったら嫌だなとか勝手に思う。扇風機もいらない。そういうのがない方が、動くものが多いというか。

大鶴 自転車とかもね。ここにあるのは人力のものですね、全部。

稲葉 そう、電動自転車じゃないし、おしゃれな折り畳み自転車でもなく。

大鶴 ト書きにもいわゆるママチャリって書いてましたね。わざわざそう書くということは、鈴江さんの中で絶対的なビジョンがあるんだろうなっていう。

――ト書きが独特ですよね。

稲葉 ト書き、独特なんですよ(笑)。

大鶴 ここまでリアルにト書きを書いてあるということは明確な意味があるんだと思う。

稲葉 めちゃくちゃ意図があるよね。

大鶴 「勝ってしまう者は負けてしまう者にどんないたわりをかけてやれる資格も持たないのだから」っていうト書きがあったり。なぜそれをここに書いてあるんだろうとか。よく3人でト書きの話もするよね、どういう意味かなって。

稲葉 めちゃくちゃでかい楔として置かれているような気がする。ト書きに乗っかって、ちょっと動きながらやってみると、感情が引っ張られるところがあって。

大鶴 まだ本を読んだだけでそれだけ動くものがあるから、実際に立ち稽古に入ったときにどういう形になっていくかは、すごい楽しみ。

泉澤 しかも演出家もいないですからね。3人でそういうのも全部決めていけるのはすごい面白いだろうなと思います。

大鶴 たぶん人のやっているのを見て、なるほどなって新しいアイデアが生まれたりするんだろうな。

稲葉 演出家がいて、俳優としての自分がいると、それぞれの役割に徹することが大事だから、本のここがどうっていう話を現場でする時間があんまりとれなかったりする。それを考えると、こんなにオープンにディスカッションして試せる現場があるというのは楽しいし、ありがたいなって。

大鶴 年が近い分、気を遣わず話しやすいしね。

稲葉 みんな正解じゃないけど、みんな正解だしっていうスタンスで話せているのが、今、すごくいいのかなと思っています。

大鶴 真ん中の道筋は通すとして、たとえば俺が<私>、稲葉くんが<友>のパターンもあれば、その逆のパターンもあって、俺が<私>、泉澤くんが<友>のパターンもあれば、その逆のパターンもある。本当、何通りの芝居になるんだっていう。このやってみないとわからない感じに、今すごくワクワクしてる。

稲葉 作品としての芯を1本通して。誰がどう演じても、そこに帰って来られればいいという着地点だけ決めておけば、あとは自由。その自由度を活かして、好き勝手やるけど、でもちゃんと地に足ついたものを今回はつくりたいし、この3人ならその工程を楽しんでやれると思う。つくるのは超大変だけど、超楽しい現場になる予感がしています。

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【応募方法】

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【公演情報】

『ともだちが来た』

作:鈴江俊郎
監修:中山祐一朗

出演:稲葉友、大鶴佐助、泉澤祐希
企画:稲葉友

●10/27~11/7◎浅草九劇
〈料金〉
劇場観劇チケット:4,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
取り扱い:チケットぴあ https://w.pia.jp/t/tomodachigakita/
オンライン生配信チケット:2,500円(税込・24時間アーカイブあり)
取り扱い:PassMarket
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02mpbistfjw11.html

撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明

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