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「こんなフェス、聞いたことない!(笑)」板尾創路×吉岡里帆が語る『関西演劇祭2021』

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右から板尾創路、吉岡里穂 撮影:源賀津己

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今年も「関西演劇祭」が開催される。“つなぐ”をテーマに、2019年から劇団・お客様・審査員やスタッフなど、参加するすべての人をさまざまなカタチでつないできた演劇祭。3回目となる今年も、有名無名問わず、厳選された10劇団が参加するという。

審査員として、2019年・2020年同様、フェスティバル・ディレクターとして板尾創路、スペシャルサポーターとして西田シャトナー、行定勲、初参加となる一色隆司が参加。そして実行委員長を、関西小劇場出身の吉岡里帆が務める。板尾と吉岡に話を聞いた。

「“参加したい”という劇団が増えている、心地いいお祭りなんやなと」(板尾)

――「関西演劇祭」、3回目の開催となります。立ち上げから参加されている板尾さんはどのようなお気持ちですか?

板尾 2年間やってきてすごく手応えがあります。去年も、コロナ禍だったにも関わらず、とてもいい演劇祭になりました。今年も去年にも増して盛り上がりそうで、すごく楽しみですね。

――手応えというのは?

板尾 「参加したい」という劇団が増えているんです。これは、僕らも告知はしていますが、それ以上に、今まで参加した劇団さんから広まっていることで。一度出てくれた人も、「また出たい」と言ってくれていますし、「ああ、心地いいお祭りなんやな」と。それがなによりです。そうやってどんどん広がっていっている感じはすごく嬉しいですね。

――吉岡さんは今回、実行委員長として初めて参加されますが、いかがですか?

吉岡 私は関西出身で、関西の演劇にすごく背中を押されて今この仕事をしているので、面白い世界なんだということは一番感じていますし、あの世界とまだ出会ったことのない人には知ってほしいという気持ちがあります。だから今回、「実行委員長」という肩書は重いですが(笑)、参加できることはとても光栄です。私自身、東京で仕事をするようになって何年も経つので、当時の関西と今とで変わっている部分もたくさんあるでしょうし、新しい気持ちで新鮮に踏み込んでいくことができそうです。

――吉岡さんが小劇場に立たれていた頃の関西は、どんな印象がありますか?

吉岡 私は京都にいたのですが、劇場が多かった印象があります。「演劇の街」と言われていて、公演を打てる場所もたくさんあって、新しい演劇が生まれる仕組みのようなものができてたように思いますし、演劇に対して街が温かかった。今は当時より劇場が少なくなったと聞いているので、そういう意味でもこういう演劇祭があること……自分たちの公演を打つこともそうですし、演劇というものをより知ってもらうための場があることは、すごくいいなと思いますね。それにちょっとうらやましいです。当時の私もきっと「出てみたい」と思っていたでしょうし。だって板尾さんに見てもらえるんですよ?

板尾 ははは!

吉岡 自分たちの演劇を板尾さんに見てもらえたら、めっちゃ嬉しいです。私だったらめちゃくちゃテンション上がります。もちろん今も見てほしいですけど(笑)。

板尾 観に行きます(笑)。

吉岡 これからもっと活躍していきたいと思っている人にとっては、きっかけの日になったりもするのかなと思います。何が転機になるかわからないので。こういう日に自分も一緒に関われるということは、とても嬉しいです。

観客・審査員とともに対等な感覚で意見を交わす刺激的な空間

――この演劇祭では、1コマ2劇団がそれぞれ45分の公演を行い、各公演後に“ティーチン”という時間が設けられています。“ティーチン”では、板尾さんや西田シャトナーさん、行定勲さん、一色隆司さんというサポーター(審査員)と観客が、今観た芝居に対して質問をできる。これがすごく特徴的で面白いなと思います。

吉岡 面白いですよね。しかも褒めるだけじゃなくてダメ出しもしてくれるのがとてもいいなと思いました。審査員の皆さんも、上からいくのではなく、もっと対等な感覚で、本当に思ったことをおっしゃっている感じ。そういう時間は面白いし、刺激的ですよね。

板尾 「あれはこういう意味でよかったの?」とか聞いてみると、意外と違ったりもするんですよ。それを聞いてお客さんも「なるほど」と思うし。なんか、お芝居の見方として、あり得ない感じですよね(笑)。他ではなかなか。

吉岡 すごいと思います。行定さんが「フェスっぽい一面もある」とおっしゃっていたのですが、でも、フェスでライブして、そのあと観客に「どうだった?」って……

板尾 ははは!

吉岡 それで観客も「あそこの音が」とか「もっとできたでしょ!」とか言うフェス、聞いたことないですよね(笑)。でもだから3年目があるんだなとも思います。

板尾 今改めて思いますけど、お客さんには“見せて”いるんだけど、“さらして”いる部分もすごくある。通常のちゃんとした演劇公演にはない何かがありますね。この面白さって人に説明しにくいんですよ。「こうだから面白いよ!」とハッキリ当てはまるようなことがない。だからやっぱり観に来ていただかないと、もしくは出ていただかないと、なかなかわかりにくいところがありますね。

――公の場所でダメ出しされるってなかなかのことだと思うのですが、それでも毎年出たい劇団が増えているというのが、この演劇祭の魅力を証明しているのだろうなと思います。

板尾 いい刺激も悪い刺激もあるんでしょうけど、でもやっぱり参加したことで充実感はあったんでしょうね。

吉岡 いや絶対そうですよ。絶対アドレナリン出ますもん。皆さんに「こうしたほうがよかったんじゃないか」とか言ってもらえたら。

板尾 しかも各劇団公演が3回できるっていうのがね。

吉岡 それ大きいですよね。「ダメ出しを次の回に反映していい」っていうルールもいいなって思います。

――そうなると3回観たくなりますよね。

板尾 そう、お客さんとして3回同じ劇団を見続けるっていうことも、それをした人だけの達成感みたいなものもあるでしょうね。(1コマ2劇団なので)劇団の組み合わせによってお互い刺激になって、ちょっと見え方が変わったりもするし。



関西演劇祭は「こうあるべき」がない場所

――これまでで特に印象的だったことはありますか?

板尾 「観客賞」というのがあって、それは観客の方が良かった劇団に投票して、最終的な数で決まるんですけど。その結果は僕たちも読めないんですよ。そういうところで、僕たちが感じてないこともお客様が感じていたりするんだなとわかる。しかも数字になっているので認めざるを得ないですしね。

――お客様から得る刺激というのもあるんですね。

板尾 ティーチンで、お客さんからの質問を聞いて「ああ、お客さんはこういうことが聞きたいんや」ってこともありますしね。本当に不思議な演劇祭です。賞レースでもないし。

――最後に、今おふたりが「関西演劇祭」で楽しみにしていることを聞かせてください。

板尾 もうね、行われるだけで十分楽しいんですけど(笑)。なんやろうな。これは僕の好みだけの話かもわかんないですけど、うまい!っていうんじゃないけど、なんかこの劇団いいよねっていう。ヘタウマというか、「なんか魅力的やな、この劇団、この俳優さん」と思えるような相手と、ひと劇団でも多く、ひとりでも多く、出会えることが楽しみです。

吉岡 昨今は「こうあるべき」ということが言われる時代なのかなと思うのですが、この「関西演劇祭」は「こうあるべき」がない場所だと思うんです。自由で、なにをしてもいい。だからこそ強烈な個性に出会えることへの期待感がすごく強いです。私も「なんだこの人は!」とか「なんだこの劇団は!」というような感動に出会いたいです。楽しみです。

取材・文:中川實穗 撮影:源賀津己

『関西演劇祭2021』
2021年11月20日(土)~2021年11月28日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール
出場劇団:劇想からまわりえっちゃん、劇団不労社、劇団5454、劇団レトルト内閣、試験管ベビー、創造Street、project真夏の太陽ガールズ、メガネニカナウ、猟奇的ピンク、笑の内閣

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2128793

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