井ノ原快彦「自分が楽しめば、幸せ。」マイペースなすみっコたちが教えてくれること
映画
インタビュー
『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』でナレーションを務めた井ノ原快彦
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すべて見る俳優、司会者、タレントと幅広く活躍する井ノ原快彦がアニメーション映画『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』(11月5日公開)でナレーションを務めている。サンエックスの人気キャラクターで、“すみっこ”が好きな少しネガティブだけど個性的なすみっコたちを主人公にした劇場版アニメの第2弾。「5年に1度おとずれる、青い大満月の夜。魔法使いたちが町にやってきて、夢を叶えてくれる」。そんな伝説のとおり、ある秋の日、キャンプに出かけたすみっコたちの前に、魔法使いの5人きょうだいが舞い下りてきた。
井ノ原は2019年に公開された前作『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』からの続投となり、「ガッツポーズをしました」と大喜び。作品の魅力はもちろん、本作のテーマである「夢ってなぁに?」にちなみ、経験豊富なキャリアを振り返りながら“夢”に対する思いを語ってくれた。
――前作はSNSを中心に口コミが広がり、観客動員122万人のスマッシュヒットを記録しました。井ノ原さんが考える“人気の秘密”は何だと思いますか?
井ノ原 まず、何よりすみっコたちのかわいさですよね。丸っこくて、プニプニしたキャラクターが動くだけで、もう無条件にかわいい(笑)。それと一見すると、子供向けの作品なのかなと思われがちですけど、実際に見てみると、大人の自分も感動してしまった。作り手の皆さんが作品の世界観やキャラクターに対し、愛情を持っていて、それが見ている側にも伝わるんですよ。思いが乗っているというか。
周りの友達や同業の人たちからも「うかつにも泣いちゃった」「考えさせられた」という声をよく聞きました。かわいいだけじゃない“深さ”があって、侮れない魅力が『すみっコぐらし』にはありますね。だから世代も性別も関係なく、誰もが楽しめる作品だったんだと思います。
――まさに“大人が泣ける”作品でした。
井ノ原 キャラクターそれぞれの背景がしっかりしているので、物語がより深くなるんだと思います。かわいい見た目をしていますけど、「あー、このコはこういう性格なんだ」「えっ、そんな気持ちでいたのかな」とか、内面的に深いものを感じさせますよね。
すみっコたちが、セリフをしゃべらないというのも大きいかも。表情の変化も多くはないですし。だからこそ、いろいろと想像させられるし、その分、愛着も沸く作品になっていますよね。
――それだけに、ナレーションの役割も大きいものがありますが、心がけていることを教えてください。
井ノ原 すみっコたちの存在で物語が成立しているから、僕の説明がどこまで必要なのかなとか、ここは感情を乗せすぎないほうがいいかなとか、葛藤はありますね。それと見ている皆さんに「声の主ってどういう存在なんだろう。神様?」って思われてしまうのも、ちょっと邪魔になってしまうかなと。僕のナレーションこそが“すみっこ”にいるべきだと思うので、そこはできるだけ意識しています。
あとは(空腹で)お腹が鳴らないようにすることかな(笑)。マイクの性能がすごく良いので、「ぐ~」って音も拾ってしまって。
――今回は映画オリジナルのキャラクターとして、夢を叶えてくれる魔法使いたちが登場し、すみっコたちの“夢”がテーマになっていますね。井ノ原さんご自身は子供の頃、どんな夢を抱いていましたか?
井ノ原 よく“子供がなりたい職業ランキング”とかあるじゃないですか。子供の頃って、漠然とあのランキングから職業を選ばないといけないのかなって思ってしまっていて(笑)。こういう職業が人気なんだとか、大人たちってこういう職業を期待しているんだとか。
でも、ぼんやりと「有名になりたい」って思いもあって、それを父親に話したら「そうは言っても、悪いことしても有名になれるんだぞ」って(笑)。なので、これまた漠然と「芸能人かなあ」って。
――そうだったんですね!
井ノ原 じゃあ、芸能人を目指すにはどうしたらいいんだろう、歌うのは好きだけど、踊りはやったことないし、人前で踊るなんて絶対やりたくないなとか。それとドラマとかで見ていたキスシーンも、子供ながらに「うわー、何それ?」って思ってしまって。
でも、いざ自分がお芝居するときには、全然できちゃう(笑)。それはなぜかと言うと、夢を叶える道の途中だからなんですよ。さっき言ったダンスもそうですけど、やってみると本当に好きになっていましたし。自分では想像できないことも、いくらでもできてしまう。夢の持つ力ってすごいなと思いますね。
――その積み重ねで、夢を叶えた現在の井ノ原さんがいると。
井ノ原 でも、大人になると分かるんですけど、「じゃあ、どこまで目指すの?」って問題もあって。ジャニーズ(事務所)に入れた、雑誌に載った、街で声をかけられるようになった……で、「もういいかな」って(笑)。実際には周りのみんなが頑張る姿を見て、「いやいや、おれも頑張らなきゃ」と思ったり、でも逆に自分のことを見失ってしまったり。そもそも夢だった「有名人になりたい」ってどういうことなんだろうって。
大人になるとよくある話ですよね。夢を追ってきたつもりが、「あれ? 普通に穏やかに過ごしたいだけなんだけど」と気づくことも。自分のあり方を見つめ直す機会って、人それぞれ訪れるものですし。
――すみっコたちのマイペースぶりは、大人にこそ大切なことを気づかせてくれますね。
井ノ原 本当に楽しいこと、本当に好きなこと、そして今できること。それをすみっコたちはちゃんと分かっているんだと思いますね。だから、とても輝いて見えるんだと思います。周りに振り回されない姿には考えさせられるし、勉強になるなって。
夢がビールでもいいんです
――そんな井ノ原さんにとって、今の夢は何ですか?
井ノ原 家に帰ったら、冷たいビール飲みたいとか(笑)。どのグラスで飲むか、いやいや缶のままでいくでしょとか。そんな小さなことだったりするんですよね。そういうことを考えていると、本当に幸せですよ。
それに今は、自分が幸せでいることが余裕につながって、それが周りへのサービス精神に結びつくのかなって思っていて。だから、夢がビールでもいいんです(笑)。自分が楽しめば、幸せ。それでひとりでも多くの皆さんに楽しんでもらえれば。日々、その積み重ねかなと思いますね。
――その夢を実現させる上で、26年間の活動を共に歩んだV6メンバーはかけがえのない存在といえますね。
井ノ原 みんなそれぞれ、しっかりとキャラや個性が際立っているんだけど、グループで活動する上では「ひとりでも欠けてしまうと困る」って思うことが多々あって。
メンバー全員がお互いを認め合っているから、誰ひとり「俺がいなくても大丈夫でしょ?」とは思っていないですし、言葉で確認し合ったことは一度もないですけど、リアルにそれは思いますね。
――前に進むという意味では、昨年から続くコロナ禍は乗り越えるべき大きな壁といえますね。
井ノ原 誰もが思うことだと思いますが、今までにこんなことあったかなって。大変な思いを抱える方々がたくさんいらっしゃるので、簡単には言えないですが、エンタテインメントに関わる自分としては、ピンチをチャンスに変えないといけないなと。
昨年のデビュー25周年も、配信ライブという形を選びましたが、そのおかげで“想像すること”の大切さに気づかされました。目の前にお客様がいれば、それは僕らだって盛り上がる。でも、配信だと「今、お客さんはどう思っているかな? うまく届いているかな?」って強く想像しましたね。
いろんな変化の中で、僕らも議論することが増えて、(物理的な)距離がある分、グループ内の関係性が密になっていくのも感じました。
――井ノ原さんご自身の中で、何か意識の変化は生まれましたか?
井ノ原 (コロナ禍は)自分たちでどうにもならない部分も大きいので、その分、冷静に未来のことを考える経験もできたように思います。マイナスに考えると、そっちに引っ張られてしまうので、プラスに捉えることも必要かなって。何より、医療従事者の皆さんへの感謝をあらためて思い出しましたし、いろいろなことを考えさせられました。
――ありがとうございます。最後に映画の公開を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
井ノ原 今回のお話には魔法使いが登場します。本来、魔法使いは僕らができないようなこともできてしまう存在なのに、すみっコたちの世界の魔法使いは完璧じゃない。それがまたすごくかわいくて。
「とにかくかわいいから見てください」のひと言に尽きるのですが、もちろん、それだけでなく、すみっコたちの中では、自分はどのタイプに似てるかなとか「あのとき、どう思った?」とか、深く語り合える映画だと思います。小さなお子さんから大人の方まで、みんなで楽しんで観てほしいですね。
『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』
11月5日(金)公開
(C)2021 日本すみっコぐらし協会映画部
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