文化勲章受章の尾上菊五郎、先輩への感謝を述べつつ「いつまでも色気を追求」
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尾上菊五郎(c)松竹
尾上菊五郎が2021年度文化勲章を受章することが10月26日に発表され、これに先駆け、10月末に東京都内で記者会見が実施された。
菊五郎は「このような栄えある勲章をいただけるのも、不器用な私に、時代物、世話物、舞踊と懇切丁寧にご指導くださった先輩方のおかげ。受章の連絡を受けたときは、先輩たちの顔が次々に浮かんできてありがたい気持ちになりました」と感謝の気持ちを述べ、「父(七世尾上梅幸)からは『基礎がしっかりしていれば、建物はいくらでも建て替えられる』と教えられました。私自身も、後輩には『基礎だけはしっかりしておくように』と伝えています」と教えを受け継いでいることを明かす。
思い入れのある役について、出世作として1000回近く演じてきた「青砥稿花紅彩画」の弁天小僧菊之助だと語る菊五郎。続けて「(二世尾上)松緑のおじから教わりました『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』、『新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎』も(思い入れのある役として)思い浮かびます」と話す。また、11月1日に開幕する「吉例顔見世大歌舞伎」では、十世坂東三津五郎の七回忌追善狂言として上演される「寿曽我対面」に、工藤左衛門祐経役で出演する。「(十世三津五郎は)面白いやつでした。『寿曽我対面』では、(十世三津五郎の長男・坂東)巳之助が曽我五郎時致を勤めます。巳之助には一所懸命勉強してもらい、大和屋の家をしっかり継いでもらいたいですね。音羽屋の若手も育ってきていますので、とても頼もしいです」と思いを語った。
菊五郎は「『このような勲章を、自分がいただいて良いのだろうか』と、夜に布団に入って考えます。それだけ重みのあるものだと、考えさせられました」と受章への思いを改めて口にし、「役者はいくつになっても発展途上。『これで良い』と思ったらそれでおしまいですね。いつまでも色気を追求し、『モテたいな、褒められたいな』という煩悩を持って、勤めていきたい」と意気込む。さらに「まだまだ役者の道は続きますが、このあとも歌舞伎が持つ独特の形式美と、色気、艶、愛嬌、そして江戸っ子気質を研究し、お客様に楽しんでいただける役者になりたいと思っています」と決意を新たにし、会見を締めくくった。
なお菊五郎のほか、10月20日に大腸がんで死去した舞踊家・振付家の牧阿佐美も2021年度文化勲章を受章。文化功労者には人形浄瑠璃文楽太夫の豊竹咲太夫、劇作家・演出家・俳優の唐十郎、日本舞踊家の西川扇蔵が選ばれている。
文化勲章の親授式は11月3日、文化功労者の顕彰式は4日に東京都内で行われる。
「吉例顔見世大歌舞伎」
2021年11月1日(月)~26日(金)
東京都 歌舞伎座
第1部
一、「神の鳥(こうのとり)」
作・演出:水口一夫
出演
狂言師右近実はこうのとり(雄鳥) / 山中鹿之介幸盛:片岡愛之助
狂言師左近実はこうのとり(雌鳥):中村壱太郎
仁木入道:中村種之助
傾城柏木:上村吉弥
赤松満祐:中村東蔵
二、「井伊大老 千駄ヶ谷井伊家下屋敷」
作・演出:北條秀司
出演
井伊直弼:松本白鸚
仙英禅師:中村歌六
老女雲の井:市川高麗蔵
お静の方:中村魁春
第2部
一、「十世 坂東三津五郎七回忌追善狂言 寿曽我対面」
出演
工藤左衛門祐経:尾上菊五郎
曽我五郎時致:坂東巳之助
曽我十郎祐成:中村時蔵
小林朝比奈:尾上松緑
八幡三郎:坂東彦三郎
梶原平次景高:坂東亀蔵
化粧坂少将:中村梅枝
秦野四郎:中村萬太郎
近江小藤太:河原崎権十郎
梶原平三景時:市川團蔵
大磯の虎:中村雀右衛門
鬼王新左衛門:市川左團次
後見:坂東秀調
二、「連獅子」
作:河竹黙阿弥
出演
狂言師右近後に親獅子の精:片岡仁左衛門
狂言師左近後に仔獅子の精:片岡千之助
浄土僧専念:市川門之助
法華僧日門:中村又五郎
第3部
「花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)」
作:河竹黙阿弥、渡辺霞亭
補綴:戸部和久
構成・演出:石川耕士
演出:市川猿之助
出演(五十音順)
顔世御前後に葉泉院 / 大鷲文吾:尾上右近
河瀬六弥:中村歌之助
源蔵姉おさみ:市川笑也
高師直 / 戸田の局 / 河雲松柳亭:市川猿之助
晋其角:市川猿弥
大星由良之助:中村歌昇
井浪伴左衛門:中村錦吾
桃井若狭之助 / 清水大学:松本幸四郎
足利直義 / お園:坂東新悟
寺岡平右衛門:澤村宗之助
大星力弥:中村鷹之資
塩冶判官 / 槌谷主税:中村隼人
龍田新左衛門:大谷廣太郎
赤垣源蔵:中村福之助
小浪:中村米吉