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〇〇の異常な愛情 Vol. 6 俳優・伊藤万理華&マンガ家・大童澄瞳の場合:表現者として活躍する2人は如何にして鉱物に魅せられたか

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左から伊藤万理華、大童澄瞳。

何かに並外れた愛情を注ぐ人や、著名人の意外な趣味にスポットを当てる連載「〇〇の異常な愛情」。第6回は俳優・伊藤万理華と、マンガ「映像研には手を出すな!」の原作者で乃木坂46のアニメーションMVなども手がけるクリエイター・大童澄瞳にインタビューした。

2人は今年の夏に初対面を果たしたばかり。伊藤の主演映画「サマーフィルムにのって」が公開される際、映画ナタリーでは大童に感想を語ってもらう座談会を企画した。自身の趣味や好きなことを生き生きと語り合う2人だったが、座談会は盛り上がってきたところで時間切れに。そこで今回再び2人を招き、共通の趣味である“鉱物”の魅力を、自慢のコレクションを持ち寄ってしゃべり尽くしてもらった。

取材・文 / 金須晶子 撮影 / 大童鉄平

今日は石の話だけ

──お二人が対面するのは本日が2回目ですよね。先日の座談会からしばらく経ったあと、大童さんが「伊藤万理華さんとは趣味が合うとわかった。鉱物即売会の話をしそびれた。日本産オパール持ってる自慢とかしたかった」とツイートされているのを拝見しまして。それならばとお声がけして、このような場を設けさせていただきました。

大童澄瞳 前回は映画の取材でしたけど、今日は石の話だけという(笑)。

伊藤万理華 石の話だけ(笑)。うれしいです!

──大切なコレクションもたくさんご持参いただきありがとうございます。まずは鉱物にハマった理由からお話しいただければ。伊藤さんは苔もお好きですが、そこから派生した趣味なんですか?

伊藤 グループに所属していた頃、テレビで「苔が好きです」と言ったらファンの皆さんの間にわーっと広がって。でも私、鉱物も好きなんだけどな……みたいなところがあったんです。苔にしろ鉱物にしろ、昔から“小さなところに広がる世界”にワクワクするんです。苔も見方によれば、小さい芝生のように見えてくるじゃないですか?

大童 わかります。

伊藤 苔の“芝生”に小さな恐竜(の置物)を置いて、ジオラマみたいに小さな世界を作ったりするのが楽しいんです。

大童 わかるなあ。子供の頃、祖母の家によく遊びに行ったんですけど、庭の踏み固められた土の上に小さな庭を作って、そこに石を置いて眺めたりしていました。短く切った木の枝で柵を作って、苔を持ってきて……。

伊藤 一緒だ(笑)。

──お二人とも「小さな世界にワクワクする」という気持ちが原点なんですね。

大童 なんと言うか、フラクタル(図形の一部分と全体が同じ形になる構造)な感じがあって。遠くから眺めたときの石もきれいだけど、近くで見たときもまた別の美しさを持っている。

伊藤 石1つ取ってもその中にいくつも色があったり、外見はただの岩でも中は星みたいにキラキラしていたり、ただの石だと思ってひっくり返してみたら別の石がくっ付いていたり。いろいろな姿があるんですよね。ただの石にもこんな世界があるのかと魅了されました。

大童 ビスマスわかります? 階段状になっている結晶の。

伊藤 溶けて固まると、自然とあの形になる金属ですよね。

大童 そうそう。あの形とかも、やっぱり1つの世界だなと思います。

ミネラルフェスタでも、100均でも

──素敵な鉱物をたくさんお持ちですが、どこで入手されるんですか?

伊藤 1人でミネラルフェスタ(天然石、鉱石、宝石、化石、ビーズなどの展示即売会)に行って……。

大童 ミネラルフェスタ行くんですね! コミケの石バージョンみたいなものですよね。

伊藤 はい。コレクションや買い付けたものがたくさん売られていて。丁寧に並べられているのを眺めるのも好きですし、そういう人たちの元で自分が欲しいと思うものに出会いたいなという気持ちもあって。

大童 僕もだいたい同じですね。あと最近は100均にも売っているんですよ。そういうのも、いいなと思ったら買っちゃいます。

──100均でしたら初心者でも手を出しやすいですね。ミネラルフェスタでは膨大な数の鉱物が売られ、値段も種類も幅広いと思いますが、購入する際の決め手はありますか?

大童 なんだろう……安くても、自分がいいと思ったものが一番という基準で決めています。例えばオパールって赤色の入ったものが希少価値が高いとされているんですけど、僕は青と緑が好きで。キラッと青く光るオパールを見つけたとき、うわっこの光が欲しい!と強く思って買いました。あとは変なものですかね。これとか。

伊藤 硫黄、かわいいです。

大童 そうそう。安くても小さくても、自分がその中で一番好きだと思えるものを選んでいます。

──ミネラルフェスタでも、100均でも、選ぶ気持ちは変わらず?

大童 出会ってしまったら、“これ”しかないとなるので(笑)。替えは利かないんです。

──形も色もすべて違うわけですもんね。伊藤さんはいかがですか?

伊藤 私もときめいたものを買っています。価値とかじゃなく、この“1個”だ!というものを。最近だと、石を割ってむき出しになった状態や、いびつなものにときめきます。ちょっとグロテスクさを感じるようなのも。1つの石の中にどうしてこんな色や形が生まれるの!?というところから惹かれていくんです。

──ちなみにこの中で一番高いものっていくらぐらいですか?

伊藤 全然覚えてないんです。こんなちっちゃいものにお金出しちゃったなあという記憶はあるから、それなりなんだと思います(笑)。3000円ぐらいのもあります。値段は本当にピンキリですけど、誰が価値を決めるかっていうのは……。

大童 俺だ!って(笑)。

伊藤 そう(笑)。“俺”が決めるってことなんです、この価値を!

自慢の一品はこれ!

──本日持ってきていただいたコレクションの中でも、特にお気に入りはどれですか?

伊藤 私は名称とかには全然詳しくないんですけど……最近買ったこれ(アポフィライト)は、どうやってこんなふうに結晶が出てきているんだろう?と思いながら眺めています。このラメラメのも特別です。遠目から見たらマットな質感なのに、近くで見ると石なのにキラキラで。あと黒曜石は人からいただいたんですけど、ナイフにもなる石なので、ツヤがよく出ているんです。

大童 黒曜石は天然のガラスだから、光が透けるのもきれいですね。

──本当ですね、きれいです。そして大童さん、お待たせしました!

大童 この対談のオファーを受けたのも、これを伊藤さんに自慢したかっただけで(笑)。福島・宝坂(ほうさか)産のオパールです。とても貴重らしいんですけど、買ったときは全然知らなくて。手に取ってもらって大丈夫ですよ。

伊藤 (おそるおそる)失礼します。うわ、きれい!

大童 これは自分でトンカチで割ったんですけど、マジでガチャだった! 1個500円ぐらいのを4個買って。そのうち1個だけ中身がこれで、ほかのは真っ白でした。遊色(ゆうしょく / 光が乱反射して虹のような色彩が見える現象)になっているのは、これだけだったんです。

伊藤 ただの塊を割ったらこんなにキラキラしているなんて、ロマンしかない! 私もまたミネラルフェスタに再挑戦したいなあ。初心者だった頃より今のほうが石を選ぶ楽しみ方がわかっている気がするので。定期的に通って、もっと自分からいろいろ探しに行きたいです。刺激をもらいました。

いつかは自分で採りに行きたい

──お二人のお話から、鉱物への愛情がよく伝わってきました。

伊藤 思い出したんですけど、もっと前から……まだ小さい頃、カラフルな丸っこい石をつかみ取りするのが大好きで。もしかしたら今も、その延長線上にいるのかもしれません(笑)。

大童 ツルツルのやつありましたよね。

伊藤 そう! 誰かに見せるとかじゃなくて、集めたものを1人で眺めるのが好きで。キラキラしたアクセサリーを身に付けたいわけでもなく、ただそこにある“1個”が愛しい。それは昔も今も同じです。本当に自己満足なんですけど。

大童 自己満足が一番いいですよ。僕もアクセサリーとか磨かれた宝石には特に興味なかったんですけど、最近すごいなと思ったことがあって。ダイヤモンドがなぜあんなに希少とされているかというと、ダイヤモンド特有の光の屈折率が影響しているんです。ブリリアントカットって、ダイヤモンドの代表的なカッティングがあるじゃないですか。あれってベルギーの数学者(マルセル・トルコフスキー)が考案したもので。光が全反射する角度を臨界角と言って、水が約45度なのに対して、ダイヤモンドは約25度。普通は透明なものって光を通過させるんですけど、ブリリアントカットのダイヤモンドは内部に入った光を全反射しやすいよう計算されているので、あらゆる方向から入ってきた光の多くを内側から上へ反射できる。なのでほかの鉱物やガラスなどと違って、こんなに小さくてもめちゃくちゃ輝くんだそうです。その話を聞いたら、カットされたダイヤモンドも面白いなと思っちゃいました(笑)。

伊藤 ものすごい発見だったんですね。こんな話を聞いたら、カットされた石にも興味を広げてしまいそう(笑)。

──興味は尽きないですね。鉱物好きとして、今後やってみたいことなどはありますか?

伊藤 やっぱり自分の足で採りに行くとか、そういうこともしてみたいです。

大童 何回かいろいろな川に行ったことがあるんですけど、そのときは全然なかった(笑)。ただの憧れで足を運んだだけですね。出会えたらいいなっていう。

伊藤 自分で見つけたら、きっと特別感がありますよね。本当にこれが埋まっているんだ!という状態も見てみたいです。

──自分で選んだ“1個”を手元に集めたいという気持ちは、鉱物に限らず、どんなジャンルでも同志がいると思います。集める楽しさって改めてどんなことだと考えますか?

伊藤 私は鉱物に限らず“集める”ことが好きで。自分のそばに置いておきたい、誰か別の人が持っていたら悔しい、ただそれだけです(笑)。だから鉱物も増えるし、洋服も増えるし、いろいろなものが部屋に増えていく。困りますけど、何年も前に買ったものたちと、今集めているものが一緒に存在しているのって、なんかいいなあと感じます。自分が石を1個1個ただ眺めるだけで楽しめる人間でよかった。こんなふうに誰かと語り合う日が来るとは、私も鉱物たちも思っていませんでしたが(笑)、今日は楽しかったです。

大童 僕も楽しかったです。手元に置いておくと、やっぱりうれしいんですよね。自分はちゃんと好きなものがある。それだけで幸せを感じられますし、今まで集めてきたものが応援してくれるような気もして。「これが好きだ」という自分の感覚って、他人と共有しなくても、1人で追い求めていいんだって後押ししてくれるんです。

──先ほど「自己満足」という言葉が出た際、お二人とも深くうなずいていました。結局、自己満足が自分を一番救ってくれるところがあるかもしれませんね。

大童 そうですよね。

伊藤 本当に。鉱物に限らず、趣味の話は話そうと思えば一生話せると思います(笑)。

伊藤万理華(イトウマリカ)

1996年2月20日生まれ、大阪府出身。2011年に乃木坂46に1期生メンバーとして加入。2017年12月にグループ卒業後、同年に初の個展「伊藤万理華の脳内博覧会」を開催した。以後、俳優として映像作品や舞台で活躍する一方、雑誌・装苑での連載や、2020年にPARCO展「HOMESICK」を開催するなどアート方面でも個性を発揮している。これまでに「映画 賭ケグルイ」やドラマ「ガールはフレンド」「東京デザインが生まれる日」「夢中さ、きみに。」などに出演。「お耳に合いましたら。」で地上波連続ドラマ初主演。第13回TAMA映画賞では、主演映画「サマーフィルムにのって」「息をするように」で最優秀新進女優賞を受賞した。根本宗子が脚本、山岸聖太が監督を担当する新作映画「もっと超越した所へ。」が2022年秋に公開予定。

大童澄瞳(オオワラスミト)

1993年3月19日生まれ、神奈川県出身。オリジナル同人誌即売会・コミティアに出品したところ、ビッグコミックスピリッツ編集部員に声を掛けられ、2016年にデビュー作「映像研には手を出すな!」が月刊!スピリッツで連載開始。同作は2020年に湯浅政明によりテレビアニメ化、同年に乃木坂46のメンバー主演で実写映画化・ドラマ化と数々のメディアミックスを展開し、シリーズ累計発行部数は100万部を突破した。最新刊となる6巻まで販売中。