【山本耕史×磯村勇斗】劇場版『きのう何食べた?』インタビュー「抱きしめられてキュンとしちゃいました」
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撮影:小嶋文子
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すべて見る男性同士のカップルの日常と、その日々の中で起こる波風を、“食”と“笑い”を交えて描く『きのう何食べた?』。2019年に連続ドラマ化され、2020年元日にはスペシャルドラマを放送、そして、11月3日より劇場版が公開されている。
主人公は西島秀俊が演じる“シロさん”こと筧史朗と、内野聖陽が演じる“ケンジ”こと矢吹賢二のカップル。山本耕史と磯村勇斗は、その友人カップルの小日向大策と井上航に扮する。知人の紹介で知り合ったシロさんと小日向は、その後、お互いの相手であるケンジと航くんこと“ジルベール”を引き合わせ、複雑な乙女心もありながら4人で仲良く過ごしている。
劇場版はシロさんとケンジに訪れた新たな局面を中心に描かれるが、小日向とジルベールもドラマ版同様、物語のいいスパイスとして登場。いつも通りの痴話げんかからひと騒動を巻き起こす。
連ドラから始まり今回で3度目の共演となる山本と磯村。劇場版で明かされた小日向とジルベールの関係性が始まったシーンでのエピソードや、これまで共演してきた中でお互いに感じていたことなどを明かした。
安心してできる現場
――劇場版の制作が決まったときの心境を教えてください。
山本:以前から(作品の)評判がいいとは聞いていましたけど、本当なんだ、と実感する瞬間でした。連続ドラマからスペシャルになって、スペシャルドラマから劇場版になって。皆さんが応援してくれている作品なんだと改めて感じました。
それと同時に、内野さんとは昔からよくご一緒させていただいているし、西島さんとはドラマ版のときが初めてだったんですけど、それをきっかけにご一緒する機会がやたら多くなって(笑)。なので、安心してできる現場に入れるな、と。
実はこの作品の撮影が、最初の緊急事態宣言が明けて一発目の仕事だったんです。だからまだどうやって撮影するのがいいのか、とか、マスクはどうするのか、とか、現場でも探っているような時期で。そんな中でもこの作品だったので、構えることもなく、いい精神状態で入ることができました。
磯村:僕はまず驚きました。『きのう何食べた?』はドラマと相性がいい、というイメージもあったので、「劇場版になるんだ」って。でも台本を読んでみると、ドラマの世界観の延長線上で作られていたので、アットホーム感というか、戻ってきたな、という感じで撮影に入れました。
――小日向さんと航くんを演じるのも今回で3回目になりますが、何かこれまでと変わったところはありますか?
山本:特に劇場版だから何かをしようとってことはなかったかな。台本も毎回、きっちり作られていますし。僕は最初のドラマ版で思ったよりも一歩突っ込んで役に入ったので、それからは何か特別なことをやらなくても小日向さんに見えるというマジックをかけているような感じ(笑)。ただ今回は二人(小日向と航)の関係が始まったシーンがあって。
――土砂降りの雨の中、お互いへの想いを確認する熱いシーンでしたね。
山本:僕としてはそこがちょっとというか(笑)。磯村くんはまだあると思うんですけど、この年齢になって青春と愛のスタートをやることがないから。まあ相手が美少年の磯村くんだから良かったですけど、冷静に考えると20代の男女がやるようなシーンで、よくよく考えるとおかしいですよね(笑)。
磯村:確かにそうなんですよね(笑)。
山本:でもすごく真面目にやりましたよ(笑)。
――そんな設定すらできるくらい、山本さんの中に小日向という役が入っている、ということでもありますよね(笑)。
山本:いやまあ、引くに引けなくなってるところもあるけど。自分で作ったものだから基本的には思いっきりやるしかない(笑)。
実は小日向が男性役で、ジルベールが女性役
――お二人の関係性がしっかりと出来上がっていることを感じます。
山本:けど、二人のときの小日向は受け身に見えるかもしれないけど、わりと投げてもいるんですよ。航くんも投げているようで、受けてもいて。やればやるほど表面的に見えている関係とは違うところも出て来て、それがやっていて楽しいんですよね。
磯村:意外と攻防戦なんですよね。台本の文字だけ見ると、ジルベールが一方的に感情を投げつけて、それを大ちゃんが受け止める形にはなっているんですけど、山本さんが大ちゃんを演じて二人でシーンを作っていくと、不思議とお互いに波のように引いたり押したりしていて。そうやっていくうちに、台本以上のものが出来上がるのはすごく楽しかったです。
――それは劇場版を経ての感想でしょうか?
山本:さっきも言いましたけど、今回、特に劇場版だから何かをするってことはなくて、作り上げられた世界観に従いながら、膨らませられるところはやってみるという感じだったので、ドラマの頃からの感覚ではあります。
ただ僕としては特にスペシャル版のときに二人の関係性がより見えたというか。二人を中心に描く回があったので。そのとき「この二人ってめちゃくちゃ面白いな」と思って。それこそ現場では二人のどちらが女性役で、男性役なんだろう?という話もして。
――見えている関係性で考えると、小日向さんが女性役なのかな、とは思いますけど。
山本:それが実は逆なんですよ。スペシャル版で航くんが料理を作って、小日向に作ったことを「迷惑だったの?」って言うシーンがあるんですけど。それに対して「そんなことあるわけないだろう」って返すとき、小日向が実は男性役というのをお芝居で見せてください、と言われて。
ちょっと目をギラっとさせてみた記憶があります(笑)。そういう設定を感じながらやると、絶妙におかしかったりもするんですよね。だからあのときの航くんはかわいいな、と思いました(笑)。
磯村:ジルベールはツンデレですからね。そんな目で見られたらね(笑)。
――そう考えると、またドラマ版から観直したくなりました。磯村さんは演じていて、山本さんのお芝居から影響を受けた部分はありますか?
磯村:ドラマ版の最初のころはジルベールが一方的に動く“動”のイメージでいたんですけど、山本さんと二人で作っていく中で“静”の部分も見えたというか。それも必要なんだ、と気づきました。
例えば大ちゃんが動くのに対して、こちらも一緒に動いてしまうとごちゃっとなってしまうので、そこは僕が引くとか。その引く瞬間があるから、二人の関係性がより見えることもあるな、と。
もちろん場合によってはそれでも“動”となっていく瞬間もありますけど、一辺倒で深みがなくなってしまうので、その二人の距離感は山本さんとやっていく中で引き出していただいた部分ですね。
本番で内野聖陽に無視される!?
――劇場版で印象に残ったシーンをお聞きしたかったのですが、やはり先ほど上がった二人の関係が始まったシーンですかね?
山本:そうですね。土砂降りでもありましたし。
磯村:ちょっと寒かったですよね。
山本:そう、寒かった。そのとき、磯村くんは次の作品のためにストイックに体づくりをしていたんですけど、その最中、結構な量の雨降らしの中で、おっさんと抱き合うみたいな(笑)。
磯村:いやいや(笑)、もうそれは大ちゃんと思って見ていますから。
山本:(笑)。もちろんそうなんだろうけど、よくよく考えるとね。だけど、今回、二人の始まりを描けたことは、今後(続編)があるにしろ、ないにしろ、二人の関係の終着点を表現できたような気がします。時系列としてはスタートですけどね。
磯村:あのシーンの前後の二人の関係については台本では触れられていなかったので、正直、気持ちの面では難しかったです。どうしてあんなことになったのかがわからないので。
ただ山本さんはがっしりされているので、抱きしめられたときはキュンとしちゃいました(笑)。すごく安心感がありました。僕も今回、劇場版であの部分が描けたことは、一番重要なポイントになったと思います。
――西島さん、内野さんも含めた4人でのシーンは、言葉上のやり取りだけでなく、その裏にある心の中のやり取りも見えてとても楽しいのですが、今回の劇場版にもありますね。
山本:航くんと賢二のバチバチを、二人(筧と小日向)がわりと包容力のある感じで見ているのが面白いですよね。そういうところを見ると、やっぱり(航や賢二より)小日向と筧さんの方が大人なんだな、と感じたりもしますね。
4人のときはわりと内野さんが、こういうことを(アドリブで)やってほしい、ってよく言うんですけど。今回もあったんですけど、それでやってみると、全然(内野が)反応しないとかもあって(笑)。
磯村:ありましたね(笑)。
山本:やり取りの最後に(磯村に)「これ、美味しい」みたいなことを言ってほしいって言ってて、テストのときは反応していたのに、本番になったらいきなり無視して。あれは面白かった(笑)。
磯村:めっちゃ無視されました(笑)。
山本:僕は傍から見ていて「この人(内野)、拾うのめんどくさくなったな」って思ってたんですけど(笑)。でももしかしたら、そのときの航くんの反応も含めて計算しているのかもしれないです。とにかく、そういうのが何ともおかしくて。賢二と航くんのやり取りは見ていてすごく面白いです。
――磯村さん自身はどんな感覚で演じているのですか?
磯村:ケンちゃんとの駆け引きは目で示し合いながらいつもはやっているんですけど。ただそのとき(無反応だったとき)は、テストではちゃんと反応してくれていたのに、本番では全く無反応で。僕が大すべりしたみたいになって。「ケンちゃん、全然来ないじゃん!」って(笑)。
けど、そういうことも含めてその場で起こることを何でも楽しめるし、許される現場でした。それはすごく楽しかったし、良い経験になりました。
違う作品でも会えるんだろうな
――劇中では航くんが3人を振り回していますけど、実際には磯村さんが一番年下で、錚々たる先輩方を前に対峙するわけで、そこはどんな気持ちなのかな?と。
磯村:ドラマ版のころはやっぱりドキドキしていました。でも劇場版で久々に戻ってきたときは、家に帰ってきたときのような安心感がありました。僕もこの撮影がコロナ自粛明けの一発目のお仕事で、しかもクランクインがこの4人でのシーンだったんです。
このご時世の中、どういうふうに作品と向き合っていくか、というのは、一俳優としても考えていたことなので、それがこの4人でのシーンからだったことは、すごく安心できましたし、信頼して作品を作ることができたなと思います。
――最初のドラマ版の放送が2019年4月期だったので、そこから数えると約2年半が過ぎました。磯村さん個人として、この3人の先輩方とのやり取りがご自身の中で役に立っていると感じることはありますか?
磯村:皆さん、それぞれ違う角度から台本を読んでいて、それを毎シーン、毎シーン、ディスカッションをしながら丁寧に作っていて。それはすごく素敵だなと思いましたし、そこに入れることがありがたかったですし、楽しみでした。
みんなであーでもない、こーでもないって言いながら、僕はアドバイスもいただいたりして。とてもクリエイティブな良い空間だったので、現場作りの一つのやり方として、自分でも大切にしていきたいな、と思っています。
――山本さんはそんな磯村さんをどんなふうに見ていましたか?
山本:ドラマ版から2年半ですよね。もちろん当時から活躍はされていましたけど、ホントにすごく飛躍されましたよね。この作品ではこんな顔してると思ったら、また別の作品では全然違う顔になっていて。若いのにカメレオン的なことができる貴重な俳優さんだと思っています。ちゃんと自分のことを捨てることができるというか、塗り替えていけるんですよね。
特に若い頃って、大体みんなカッコよく映りたいと思うし、自分がこうしたい、ってことが、良くも悪くも見えがちなんですけど、磯村くんはこういう(航のような)役もやる。正直、一番抵抗ある役だと思うんですよ。難しい先輩たちに囲まれて、一番年下で、しかもかなり重要な役割の人物ですし。それを難なくやっていて。またこの作品でもいいですけど、違う作品でも会えるんだろうな、と思っています。
――違う関係性でのお二人や、西島さん、内野さんとのやり取りも見てみたいです。
山本:西島さんはもう見ない日がないくらいお忙しいですからね。本当に「きのう何食べた?」って聞いたら、答えられないくらいだと思います(笑)。内野さんとはプライベートでも仲が良いので……そういえば、磯村くんって今何歳?
磯村:29です。
山本:30目前のもう大人ですね。だから共演もそうなんですけど、まずはコロナがもうちょっと落ち着いたらみんなでご飯に行きたいですね。(磯村に向かって)行こうね。
磯村:行きたいです。ホントに行きたい。
――では、最後に劇場版の見どころを教えてください。
磯村:まず筧さんとケンちゃんの二人の愛が、劇場版ではより深まっています。それから、観てくださる方、誰でも共感できる食卓のシーンでは、このご時世で一人で食事をすることも多くなった中、改めて誰かと向か合って食事をする大切さが感じられると思います。現実では少し難しい部分でもあるので、そういう幸せな時間を劇場版を通して感じてもらえたら嬉しいですね。
山本:この『きのう何食べた?』という作品が抱えるテーマって、実は重たいんですよね。でもそれを食とうまく融合させて、笑いも交えて描いている。これが、男女が主人公の物語だったら全然違う響き方をしていたと思うんですけど、男性同士だからくすっと笑いながら観られる部分もあって。
まさにこういうみんながピリピリして、神経質になってしまっている時代だからこそ、必要なものが盛り込まれている気がします。
劇場版に限って言うと、大きなスクリーンで観られるということで、これまで以上に食は色どり鮮やかになっていますし、筧さんと賢二が訪れる京都のシーンは、ちょっとした旅気分も味わえると思います。一緒に食を楽しみ、愛を育み、旅行気分も楽しんでください。
それで僕ら二人のシーンでは、出会ったころのパートナーとの愛を忘れずに、ということも伝えられていると思うので(笑)、本当に見どころ満載の作品になっています。
物語の中では恋人同士の関係のお二人。現実も劇中さながらとはいきませんが(笑)、役者の先輩・後輩としてお互いを信頼し、尊敬しながら、また別の熱い関係で結ばれていることが伝わってきました。
そんなお二人が作り上げた “大ちゃん”と“ジルベール”は、スクリーンの中でも騒動を起こし、笑いを届けてくれています。ぜひ、“シロさん”と“ケンジ”の物語を楽しみながら、こちらの二人の物語にも注目して観ていただけると、より楽しめると思います。
文:瀧本 幸恵
作品情報
劇場版『きのう何食べた?』
公開中
公式サイト
https://kinounanitabeta-movie.jp/
劇場版『きのう何食べた?』予告篇
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