岨手由貴子、TAMA映画賞授賞式で「目を引くネタはできるだけ排除した」理由語る
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岨手由貴子
第13回TAMA映画賞の授賞式が本日11月21日に東京・府中の森芸術劇場 どりーむホールで行われ、最優秀作品賞に輝いた「あのこは貴族」の監督・岨手由貴子が登壇した。
2015年の第7回TAMA映画賞では、最優秀新進監督賞を獲った岨手。「TAMA映画賞の受賞者にはとても納得感があると思っていたので、選んでいただけて励みになりました」と言い、今回の賞にも喜びをにじませる。「日本では、普通の女性が主人公になる作品がすごく少ないと思っています。なので『あのこは貴族』では人物を特別にデフォルメして個性的に描いたりせず、彼女たちを闘わせないようにもしました。目を引くようなネタのようなものをできるだけ排除して作ったことで、自分の物語として観客に受け入れていただけたのかなと思います」と語った。
同じく最優秀作品賞に輝いたのは「ドライブ・マイ・カー」。監督を務めた濱口竜介はビデオメッセージで「役者さんを観ていただきたい作品です。役者さんそれぞれが輝きを放っていると、自信を持って言えるものになっています」と胸を張る。またステージに上がったプロデューサーの山本晃久は、濱口の現場は「俳優中心主義」だと述べ、「俳優が生み出す奇跡のような価値ある芝居はささいなことで消えてしまう。もろいものだから大事にしていこうという考えなんです」とコメントした。
最優秀新進監督賞を受賞した「海辺の彼女たち」の藤元明緒、「サマーフィルムにのって」「青葉家のテーブル」の松本壮史も登壇。MCより在日外国人に着目して映画作りをする理由を尋ねられた藤元は「海外にルーツがある友人がいたり、僕自身がミャンマーの方と結婚することがあったりと、身の回りの出来事がきっかけなのかなと思います」と回答する。松本は「サマーフィルムにのって」終盤のシーンを思い返し、「2人の命を燃やすようなショットを撮れたとき、映画を作ってよかった、このために生きてきたんだと思いました」と深い思い入れを口にした。
「いとみち」で特別賞を手にした横浜聡子は、キャストの駒井蓮と登場。映画の舞台は、2人の地元・青森だ。駒井は「地元の方言で作品に出演するのが夢だった」と笑顔を見せ、「(劇中で演奏する)三味線は9カ月練習したんですが、最初は音が鳴らなくて。これは間に合うのかなと……」と当時の不安を回想。一方横浜は「駒井さんは津軽弁で言う“じょっぱり”なんです。負けず嫌い、根性があるという意味で、必ずやり遂げるだろうと思っていました」と信頼を垣間見せた。
「花束みたいな恋をした」で同賞を獲得した土井裕泰は「これは私たちの物語かもしれないと思ってもらえる作品を作ろうと心がけていました」と説明。「1つの恋愛にはいろんなことが詰まっている。恋愛映画はただ恋を描くのではなく、その後ろに社会や若者の状況も描くということだと思います」と持論を展開した。
第13回TAMA映画賞の受賞結果は以下の通り。
第13回TAMA映画賞 受賞結果
最優秀作品賞
「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介およびスタッフ・キャスト一同)
「あのこは貴族」(岨手由貴子およびスタッフ・キャスト一同)
特別賞
土井裕泰、坂元裕二およびスタッフ・キャスト一同「花束みたいな恋をした」
横浜聡子およびスタッフ・キャスト一同「いとみち」
最優秀男優賞
役所広司「すばらしき世界」「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」「竜とそばかすの姫」
菅田将暉「花束みたいな恋をした」「キャラクター」「キネマの神様」「浅田家!」
最優秀女優賞
尾野真千子「茜色に焼かれる」「明日の食卓」「ヤクザと家族 The Family」「心の傷を癒すということ《劇場版》」
有村架純「花束みたいな恋をした」「映画 太陽の子」「るろうに剣心 最終章 The Beginning」ほか
最優秀新進監督賞
藤元明緒「海辺の彼女たち」
松本壮史「サマーフィルムにのって」「青葉家のテーブル」
最優秀新進男優賞
藤原季節「のさりの島」「佐々木、イン、マイマイン」「空白」「くれなずめ」「明日の食卓」
金子大地「サマーフィルムにのって」「猿楽町で会いましょう」「先生、私の隣に座っていただけませんか?」ほか
最優秀新進女優賞
三浦透子「ドライブ・マイ・カー」「椿の庭」「おらおらでひとりいぐも」「アイヌモシリ」
伊藤万理華「サマーフィルムにのって」「息をするように」
※「アイヌモシリ」の「リ」は小文字が正式表記