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石丸幹二「歪んだ“パラレルワールド”見届けて」、ミュージカル『蜘蛛女のキス』開幕

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ミュージカル『蜘蛛女のキス』より 左)安蘭けい 中央)石丸幹二 撮影:渡部孝弘

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ミュージカル『蜘蛛女のキス』が11月26日に開幕する。これに先立ち、報道陣向けのプレスコールが行われた。

アルゼンチンの作家マヌエル・プイグの小説を原作にミュージカル化され、1993年のトニー賞7部門を制した本作。『キャバレー』『シカゴ』で知られるジョン・カンダー(音楽)とフレッド・エブ(歌詞)のコンビが手がける楽曲は人気が高く、1996年以降に日本でも定期的に上演されている。今回の上演版では、劇団チョコレートケーキの日澤雄介が初めてグランドミュージカルを演出する。

劇中では、ラテンアメリカにある刑務所の一室を舞台にした物語が展開。映画を愛するモリーナ(石丸幹二)は、社会主義運動の政治犯バレンティン(相葉裕樹 / 村井良大:Wキャスト)と同室に。最初は互いを理解できず激しく対立するふたりだったが、極限状態の中、モリーナが映画スターのオーロラ、また彼女が演じる蜘蛛女(安蘭けい:2役)について語るうちに、心を通わせていく──。

ミュージカル『蜘蛛女のキス』より 左)石丸幹二 右)村井良大 撮影:渡部孝弘

プレスコールは1幕から計6曲、2シーンが公開された。最初はモリーナとバレンティンが監獄で同室になる出会いの様子が綴られる。石丸は、オシャレが大好きな自分をバレンティンに知ってもらおうと“自己紹介”するモリーナの「ドレスアップ」でチャーミングな魅力を炸裂。投獄前に発揮していたウィンドースタイリストとしての実力をうっとりとした表情で歌い上げ、コーディネートされたマネキンを伴い現れたキャストと一緒にダンスを繰り広げた。

ミュージカル『蜘蛛女のキス』より 中央)石丸幹二 撮影:渡部孝弘

安蘭は「オープニング」でタイトルロールの蜘蛛女に扮し、「キスで苦しみを癒してあげましょう」と作品の象徴的な存在であることを冒頭から印象づける。一方で、バスタブに浸かり現れたオーロラを演じている時はとても優雅だ。いずれも落ち着いた低音をにじませながらも、声色や仕草に変化を覗かせる“映画スター”ぶりを見せつけた。

「ブルーブラッド」では、モリーナを疎ましく感じている相葉バレンティンが「黙れ!」「空気も空間も別だ!」と声を荒げ、強くワイルドに拒絶する。村井バレンティンは1幕中盤に登場する「嘆きの壁3」で鉄格子を握りしめ、死者を寝かせる空間の余裕もないほどすし詰めにされた牢屋から、恋人マルタに対する想いを切なく歌い上げた。

ミュージカル『蜘蛛女のキス』より 安蘭けい 撮影:渡部孝弘
ミュージカル『蜘蛛女のキス』より 相葉裕樹 撮影:渡部孝弘

プレスコール後に行われた質疑応答で、石丸は「あっという間に部活のようなチームワークができあがりましたね」と稽古を振り返る。「男性キャストが多い中、安蘭さん、香寿(たつき)さん、小南(満佑子)ちゃんの女性陣3人が揃うと花が咲いたようで、一緒になるタイミングを楽しみにしていました」と隣の安蘭を立てた。

ミュージカル『蜘蛛女のキス』より 石丸幹二 撮影:渡部孝弘

石丸は、舞台面(ツラ)に対して斜めに置かれた美術セットについても言及。「平行でなく少し歪んでいるのが、この作品の世界観を表しているような気がします」と述べたあと、「実際にステージに立つと、角度になじむのが大変ということがハッキリ身体に迫ってきました。迷いながらもベストを追求できたら」と劇場に入ってからの手応えと意気込みを語った。

作品の見どころを問われた安蘭は、蜘蛛女とオーロラの“早替わり”を挙げ「1幕だけで8回着替えますので、お見逃しなく」とアピール。開幕に際して「モリーナとバレンティン、ふたりの結末を見届けると『愛って何だろう』と考えさせられる作品です」「ぜひ劇場で“愛”を目にしてください」とメッセージを送った。

相葉は「対立し合うモリーナとバレンティンがどんな化学反応を見せるか、楽しみにしていてください」と期待を煽り、「この作品は『愛の尊さとは』という普遍的なテーマが込められた作品だと思います。観客の皆さん、それぞれが答えを見つけても見つけられなくても楽しくご覧になっていただければ」と笑顔を見せた。

作品について、村井は「予備知識なくフラットにご覧いただいても胸に迫って心に響く」とその魅力を紹介。「トランスジェンダーのモリーナに浴びせられる、コンプライアンスが無いに等しい当時のセリフ。こうした閉塞的な時代があったことを知って、心がどう動くか話し合ってみてください」と観客同士での“意見交換”を勧めた。

日澤は「モリーナとバレンティン、さまざまな思惑や葛藤を抱えるふたりが共同生活で育む濃密な時間を丁寧に演出しました」とこだわりを明かす。そのうえで「ふたりの関係がどう変化して結末を迎えるのか、蜘蛛女がどのようにモリーナの運命を後押しするのか。ぜひ見届けてください」と鑑賞の注目ポイントに触れた。

最後に石丸は「コロナ禍ではありますが、回復の兆しも見えてきました。もしよろしければ劇場で、私たちのつくり出す“パラレルワールド”をご堪能ください」と呼びかけ、プレスコールを結んだ。

公演は12月12日(日)まで、東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて。その後、12月17日(金)〜19日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティに巡演する。ぴあでは座席指定できるチケットのほか、当日引換券も販売中だ。

取材・文:岡山朋代 撮影:渡部孝弘

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