新作『華氏119』が公開! マイケル・ムーアが日本の観客に向けたメッセージを独占公開
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『華氏119』 (C)2018 Midwestern Films LLC 2018
マイケル・ムーアの最新作『華氏119』が日本での公開をスタートしたのを記念して、ムーア監督が日本の観客にあてたメッセージが公開になった。本作はブッシュ再選阻止を目指した『華氏911』を継ぐタイトルがつけられており、劇中には現米国大統領ドナルド・トランプも登場するが、ターゲットにしているのは“大統領本人”ではない。彼が新作で描き、訴えるものとは?
GMの生産拠点だったミシガン州フリントで生まれ育ったムーアは、著述、映画、テレビシリーズなどを通じて、アメリカ社会に潜む様々な問題を指摘してきた。アメリカでの銃の扱いを巡るドキュメンタリー『ボウリング・フォー・コロンバイン』は大きな話題を呼び、『シッコ』ではアメリカの医療問題を、『キャピタリズム』では金融恐慌を取り上げた。中でも2004年にジョージ・W・ブッシュ政権を批判し、再選を阻止するべく製作された『華氏911』は、カンヌ映画祭で最高賞に輝き、世界中で注目を集めた。
そんなムーアは最新作でドナルド・トランプ大統領を題材にしている。しかし彼は「この映画はこれまで作った映画の中で一番大変な映画だった」と振り返る。「トランプがこれから先2年も大統領でいる、ひょっとしたら6年、いやそれ以上になるかもしれない、と思うと落ち込んだ。だからこそ、彼を阻止する具体的な行動をとらなければならないと感じた」
そこでムーアは意外にも「トランプを無視する」策に出た。「この映画の中にトランプは20分しか出てこない。マイケル・ムーアのトランプについての映画であるにも関わらず。2時間中たったの20分。映画館に来た観客にトランプを2時間も見せたくなかった。だから映画つくりの方法を変えたんだ」。思い返せば、『華氏911』ではブッシュの生い立ちを丹念に調査し、批判し、新たな事実を暴いた。映画は高い評価を集め、ヒットもした。しかし、ブッシュの再選を阻止することはできなかった。その後、オバマが大統領になり、これで世界がよくなると思った。その結果は? そして、誰もが“冗談”だと思っていたトランプ出馬は現実になり、彼は大統領になった。なぜだろう? どうしてこんなことになった?
これまでのムーアの映画は“真実”を明るみに出すために製作されてきたが、本作では“真実”が機能しなくなってしまった社会を、そんな社会を構成し、動かしているのは一体、誰なのかを容赦なく描き出す。トランプを叩くだけでは社会は変わらない。だとしたら、私たちはどうすればいい? 本作でムーアは観客にある“問いかけ”をする。
ちなみに彼は日本の観客に向けた緊急メッセージを寄せており「日本に行きたいのはやまやまなんだけれど、この映画の公開日が選挙(現地時間11月6日に行われるアメリカの中間選挙)の1週間前で、アメリカで選挙キャンペーンをやらなければならないから無理なんだ。この映画をもってまた東京には行きたいんだが。東京でやりたいことのリストは長いよ。世界でも特に興味をそそられる都市だから。東京には世界の他のどこにもないものが沢山ある。非常に独特な文化を持ちかつ活気がある。また良い意味でとても不思議な所でもある。来日したときは、とても楽しかった。また近いうちに是非来日したいよ」とコメント。
中間選挙が終わり何らかの結果が出たあと、マイケル・ムーアが来日し、日本の映画ファンと語り合うチャンスが訪れるかもしれない。その時、これを読んでいるあなたは、本作で描かれる“問いかけ”に何と返答するだろうか? 『華氏119』はアメリカ社会を描きながら、私たちにとって決して“他人事”ではない問題がギッシリとつまっている。
『華氏119』
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