演出・大関真×脚本・伊勢直弘が語る『SK∞ エスケーエイト The Stage』の魅力
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インタビュー
左から、『SK∞ エスケーエイト The Stage』演出・大関真、脚本・伊勢直弘
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すべて見るスケートボードのレースに挑む男たちを描いたテレビアニメ『SK∞ エスケーエイト』。舞台化にあたって脚本を手がけた伊勢直弘さん、総合演出及び第1部演出を手がける大関真さんに、個性豊かなキャラクターを表現するキャストへの視線、世界観の再現などについて語っていただきました。
各キャストのメンバーが、演じているそれぞれのキャラクターを見事に表現
――伊勢さんは、ゲネプロをご覧になったんですよね。
伊勢 キャストの皆さんが、それぞれのキャラクターを演じることに対してすごく責任感をもってやっていると感じました。「形にしてくれてありがとう」という気持ちでいっぱいです。
大関 そう言っていただけると嬉しいです。暦役の木津つばさくんもランガ役の滝澤諒くんも、彼ら自身が暦とランガに結構似ていてぴったりのキャスティングだし、作品に取り組む姿勢も非常にまっすぐ。スケボーも、稽古中にプロのスケーターさんたちに教わってどんどん上手くなっていきました。
伊勢 木津くんのまっすぐで嘘のない姿勢は、暦にぴったりだと思います。滝澤さんは今回初めてでしたが、魅力的な役者さんですね。特に、スケートボードに初めて乗ったあたりの無垢な感じには感動しました。
大関 僕は「大人組」と呼んでいるのですが、Cherry blossom(桜屋敷薫)役の久保田秀敏くん、ジョー(南城虎次郎)役の伊万里有くん、愛抱夢(神道愛之介)役の小波津亜廉くんは、キャラクターの再現度の高さに加えて彼らなりの存在感を出してくれています。特に小波津くんの愛抱夢は、あの強烈なキャラクターをある種ナチュラルにやれるなんてすごいことですよ。暦とランガに対した時の存在感も素晴らしいし、まさに“肝”なキャラクターですね。
伊勢 愛抱夢は、ある意味見事に、気持ち悪くやりとげてくれましたね。この舞台がこれだけ熱い作品になったのは、彼の功績が大きいのではないでしょうか。
大関 久保田くんと伊万里くんは、暦とランガを見守るお兄さん的存在である一方、箸休めのコミカルな部分をオリジナルで創ってくれて、良いキャラクターになりました。伊万里くんはスケボー経験者ですし、キャストはみんな彼を信頼して稽古中もいろいろ教わっていましたね。役者とスケーター両方の目線をもって「こうした方がやりやすい」というみんなの意見をまとめて伝えてくれて、現場を回していくうえですごく助けられています。役者としてもビジュアルはもちろん、声を発した時の存在感が素晴らしい。
伊勢 メインキャストの中で、難しい技もやっていたのは彼だけ。「上手いな!」とびっくりしましたし、ジョーは第2部で大きな見せどころがあるので、俄然期待値が上がりましたね。
大関 久保田くんのビジュアルは完璧ですね。お芝居について「こういうふうにやっていこうよ」と自分の背中を通してみんなに見せてくれて、伊万里くんとは違った意味で座組を引っ張っています。
伊勢 Cherry blossomというキャラクターは、ジョーやシャドウとは違って我を出しにくい部分もあります。それでも彼らに負けない存在感を放っていたのは、久保田さんの実力ゆえ。堂々と舞台の空気を作っていると感じました。
大関 輝山立くんは、葛藤を抱えて裏表のあるMIYAを演じるのはとても難しかったと思います。でも、影の部分と、そこから暦とランガに出会うことによって陽の部分へ、という変化をしっかり表現してくれています。
伊勢 本当に達者で、信頼できる役者さんですね。背伸びしている部分がありつつ年相応の葛藤もあるというMIYAの心理を、丁寧に盛り込んでくれました。あそこまできっちり見せ切ったのは、輝山さんの手柄だと思います。
大関 石渡真修くんに演じてもらっている菊池忠は、第1部では一瞬しか出てこない。第2部への伏線ですね。でも出番・セリフが少ないなかでしっかりと、いろいろな感情を表現してくれています。
伊勢 僕も真修くんとの付き合いは長いですが、本当にまじめでまっすぐで、芝居に真摯。ピンポイントでも妥協はしないだろうと思っていたし、そこがしっかりと出ていた。第2部が非常に楽しみになりました。
原作の良さを活かしつつ、登場人物同士の人間ドラマも丁寧に表現
――今回の脚本で、伊勢さんが大切にしていたことは何でしょうか。
伊勢 スケートボードを題材にしたエンターテイメント性の高い物語ではありますが、レースの描写よりも、登場人物の関係性とか成長といった人間ドラマに重きを置きました。例えば暦とランガは彼らの出会いから描かれていて、他人だったところから、スケートボードを通してお互いを理解し、人間関係が深まっていく。そうした関係性や、それぞれがもっている信念といった、原作アニメで丁寧に描かれた部分は漏らさずに盛り込もうと気をつかいました。
大関 伊勢さんの脚本は、そういう原作の良さをキャッチする力が素晴らしいんですよ。お客様が良いと思うシーンやエピソードをちゃんとピークにもってきてくださるので、演出する側としては非常にありがたい。
伊勢 ありがとうございます! 光栄です。大関さんは僕の感覚にはない絵作りというか、形作りに長けていらっしゃる演出家。だからこそ、イチ大関ファンとして楽しみにしていました。特にオープニングは、顔見せ的な部分ではありますが、作品のルールや世界観がしっかりと描かれていた。僕はオープニングにこそ演出家の持ち味がフルに出ると思っているので、そういう意味でも素晴らしかったと思います。
大関 原作のオープニングシーンを活かして世界観を保ちつつ、舞台のオリジナリティーやキャラクターの個性を出す。これは、振付の本山新之助さんのお力が大きかったですね。作品をよく理解していただいて、非常に良いアクセントになったと思います。そもそも「SK∞ エスケーエイト」というアニメがとても良い作品なので、舞台になった時にあまりにもかけ離れてしまっては申し訳ない。そこは忠実に再現することを重視しました。演劇は生ものですし、メインキャストもアンサンブルも含め、全員が身体的にギリギリのところで表現していく大変さがあります。そこに映像を載せて、お客様の想像力もお借りしながら原作を再現していく。そんな面白い試みができたのではないかと思っています。
――第1部の公演がスタートし、第2部の公演も控えているという現在。おふたりのお気持ちは?
伊勢 僕としては、第1部で出会った暦とランガの関係性が、第2部でどう変わっていくのか。全編を通して、そこを感じていただけたらと思います。
大関 第1部の幕が無事に開きましたが、もっと良くなる要素はたくさんあります。そこを修正して、千秋楽に向けてもっと良い作品にしていきたいと思っています。
取材・文:金井まゆみ
『SK∞ エスケーエイト The Stage』
日程・会場:
■第一部
2021年12月2日(木)~12日(日)
東京・天王洲 銀河劇場
■第二部
2022年1月15日(土)~24日(月)
東京・日本青年館ホール
チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2181041
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