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人情味あふれる芝居合戦に心温まる こまつ座『雪やこんこん』上演中

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こまつ座第140回公演『雪やこんこん』より、左から 真飛聖 安久津みなみ 藤井隆 村上佳 前島亜美 小椋毅 大滝寛 熊谷真実  撮影:宮川舞子

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こまつ座の舞台『雪やこんこん』(演出:鵜山仁)が12月17日(金)より東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて開幕した。

舞台は、昭和28年の暮れ、北関東の雪深い旅館に併設された芝居小屋・湯の花劇場。ここに、人気も芸も関東一とうたわれた大衆劇団「中村梅子一座」がやってくる。芝居小屋には「一座総勢18名、大挙来演」との看板が掲げられ、心待ちにされていた。しかし、一座はお給金もまともに払えない状態が続いていて、“ドロン”(姿を消すこと)する者が相次ぎ、やってきた座員はたったの6名。普段は旅先で冷たい仕打ちを受けるのが常の座員たちだったが、湯の花温泉の女将・佐藤和子の心こもったおもてなしに感動しきり。実は和子は元大衆演劇のスターで、幼いころから中村梅子の大ファンだった。ところが、梅子と和子が親子だったという話が浮上して……。

左)真飛聖 右)熊谷真実

次から次へと息をつく暇もなく続く台詞の応酬が実に見事で、まるで名台詞のシャワーを浴びているよう。ストリップなどの新しい娯楽に押されて、斜陽気味な大衆演劇一座は果たしてどうなるのか。くすりと笑える場面もあれば、切なく胸がきゅっとなる場面もあって、終始一座の運命にハラハラドキドキさせられる。どんでん返しが続く展開も面白く、作者の井上ひさしの筆力に一本とられた。

紙吹雪と大量のスモーク(煙)で吹雪を表現するのだが、しっかりと季節感が合うのもいい。昭和の匂いを懐かしく感じながら、火鉢で体を温め、みかんをつまみつつ、積もる話をしたり聞いたり。気温が下がって冬らしくなってきた今こそみたい芝居だった。

熊谷真実
真飛聖

これまで市原悦子、宮本信子、高畑淳子と錚々たる女優たちが務めてきた中村梅子役に初挑戦するのは、熊谷真実。梅子の役そのもののように、芝居に対する強い覚悟を感じる熱演。小気味良い台詞回しがよかった。また、湯の花温泉の女将・佐藤和子役の真飛聖も、緩急ある芝居で魅せた。元大衆演劇のスターという説得力がありながら、女将としての義理深さや頭の良さを感じさせ、ハマり役だったと思う。

左)藤井隆 中央)前島亜美 右)小椋毅

ほか、大滝寛、藤井隆、小椋毅、前島亜美、村上佳、安久津みなみ、まいど豊が出演。出演者みな芸達者で、よく各々のキャラクターをつかんでいた。ラストは、役者たちが一列になって、まもなく幕が上がる芝居に向けて化粧を始めるところで終わる。中村梅子一座のこれからに思いを馳せつつ、このコロナ禍でも舞台に立つ覚悟を持った役者一同に精一杯の拍手を送りたい。

公演は12月26日(金)まで。

取材・文:五月女菜穂 撮影:宮川舞子

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