『あなたの番です 劇場版』原田知世と田中圭の“愛”がいっぱいの撮影現場を密着レポート!
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『あなたの番です 劇場版』
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すべて見る2019年にTVドラマで放送され大きな話題を呼んだ『あなたの番です』が、約1年半の時を経て、劇場版として帰ってきた! 週末の映画動員ランキングでは初登場1位となるなど大ヒットスタートを記録している本作だが、その撮影に密着した筆者が、主演のふたり、原田知世と田中圭の現場での様子をレポートする。
撮影初日は菜奈と翔太のイチャイチャからスタート!
死んでしまったはずの菜奈を演じる原田知世が優しく微笑んでいて、そんな菜奈をまぶしそうに見つめる翔太に扮した田中圭がいて、そしてふたりとも連続ドラマでは幻でしか叶わなかったウエディング姿に身を包んでいる。
12月10日に封切られ、現在大ヒット公開中の『あなたの番です 劇場版』。その本編の撮影が行われていたのは、2020年12月10日から2021年1月21日までの期間。公開初日にテレビ放送された『劇場版公開記念!「あなたの番です」金曜ロードショー完全新撮SP!!』と並行しながら制作は進められたが、奇しくも両作品の公開日と放送日のちょうど丸1年前にクランクインを迎えていたことになる。
その初日にまず撮影されたのが、冒頭に記した衣裳が物語るように、菜奈と翔太が豪華客船・カッチャトーリ号で開いたウエディングパーティー当日のシーン。現場へウエディングドレスとタキシードで現れ、スタッフ一同に拍手で迎えられたふたり。原田と田中の撮影入りを祝しての拍手ながら、ふたりの格好と笑顔もあって、まるで菜奈と翔太の結婚を祝ってのようでもあって、もちろん菜奈=原田、翔太=田中のベストカップルが揃ってもう一度本作に、加えて菜奈が生きている世界に戻ってきてくれたことへの拍手でもある。
シーンナンバーは#22〈カッチャトーリ号・704号室(菜奈と翔太の部屋・夜)〉。パーティーを終え、衣裳はそのままに部屋へ戻って来た菜奈と翔太。田宮淳一郎(生瀬勝久)と床島比呂志(竹中直人)がカラオケで暴走したことに腹を立てている翔太だったが、その理由はパーティーを台無しにされたからではなく、新郎である自分が歌えなくなってしまったため! すねる翔太に苦笑しながらも目を細める菜奈が着替えに向かおうとすると、「それはまだ早い!」と引き留める翔太。そしてそこから始まるのは、本作でミステリー要素とあわせてファンを魅了したもうひとつのドキドキの要素! そう、ファーストシーンは、これぞ“あな番”とも言える菜奈と翔太のイチャイチャのやりとりで始まった。
段取り(動きの確認のリハーサル)に際して、「1回、フリースタイルで」とあえて演出をつけずに原田と田中が出してくる芝居を見ていた佐久間紀佳監督。連続ドラマで共に築き上げてきた世界観、キャスト陣が作り上げてきたキャラクター像にすでに自信も確信もあればこそのフリースタイル。実際、段取りの段階から原田も田中もこれぞ菜奈で翔太という甘くかわいらしいやりとりを早速見せていて、監督はただひと言、「素晴らしい!」。
台本とは違うセリフ「なんのためにさ」
さすがだと思わされるのが、原田と田中のニュアンスの膨らませ方だ。台本は決して壊さずに、尚且つ形になるものは台本以上になっていく。ドレスから着替えようとした菜奈を、まだ早いと引き留めた翔太。そこで翔太は、「なんのためにレンタルやめて、わざわざ買い取ったと思ってるの!?」と口にして、菜奈は「……なんのため?」とあえて翔太に聞き返す。そのやりとりから〈フレームアウトしてベッドへ消えるふたり〉という展開になっていくが、これは台本上でのセリフで、実際の本編ではセリフが少しだけ違っている。
現場で田中が翔太として口にしたのは「なんのためにレンタルやめて」ではなく、「なんのためにさ、レンタルやめて」と「さ」を足した言い回し。本当に些細なところながら、「なんのために」と流れるように理屈で言い含めるのと、「なんのためにさ」と語尾に「さ」を挟んで懇願するように言い伝えるのでは、翔太の雰囲気はだいぶ違ってくる。このすねたような甘えたような言いぶり、そこに感じられる子供っぽさや人の好さこそが翔太だ。
そしてそれを受けての原田の芝居。観念したように、少しだけ意地悪をしただけで本当は最初から待っていたように、「……おいで」と翔太を迎え入れる菜奈。台本にはそのト書きはないが、原田は連続ドラマのときと同じ手と指の動きを見せて、これには撮影後に田中も監督も「悩殺されました(笑)」。
また台本上の「……」に当たる部分で、原田はセリフになりきらない息で抜ける笑い声を発して見せた。その笑い声で「おいで」が強くなりすぎずにかわいらしく響いて、「おいで」のセリフ以上に翔太に対する愛おしさも伝わってくる。原田と田中がどこまで意識的にやっているのかは分からない。ただ、無意識的だったとしても、間違いなく原田と田中がそれぞれ菜奈と翔太を一番良く分かっていて、掴んでいるということだろう。初日のファーストシーンから、紛れもない菜奈と翔太がいた。
菜奈を守るためだったら何でもする翔太、だからこその反応
脚本の福原充則が、原田と田中に関してこんなふうに語っている。「原田さんは一見自然体でさりげなく感じられるのですが、情報量の多い場面を、ものすごく丁寧にものすごい技術で演じられていて、尊敬しながら見ていました。翔太っていう役は、行動の動機のほとんどが“菜奈ちゃんが好き”っていう気持ちからなんですが(笑)、“誰かを好き”っていう感情を演じるって実は難しいんですよね。人を好きになる経験って誰しもあるとは思うので共感は呼びやすいんです。その反面、現実の経験や感情を上回るものを見せないと感動は得られないので、見ている方に“今、私が恋をしている人への思いよりも、翔太くんの菜奈ちゃんへの思いの方が強いかも”って思わせるものがなきゃいけなくて。田中さんの演技にはそれがあったんじゃないかなって」。
まさにそれを感じさせるシーンも初日に撮影されていた。場面は変わって、〈カッチャトーリ号・6階・エレベーターホール〉。シーンナンバーは♯91。乗船客2名が何者かによって次々と殺され、黒島沙和(西野七瀬)が怪しいと考えた翔太が彼女を呼び止めるシーン。事件の連鎖を止め、菜奈を危険から守るためにも一刻も早く犯人にたどり着きたい翔太はその焦りと苛立ちを黒島にぶつけてしまうが、黒島はあることから気もそぞろで翔太の呼びかけを拒もうとする。そこで黒島は涙を流すが、それでも翔太は黒島の腕を掴んで強引に引っ張っていこうとする。その現場を菜奈が見ていて、「……何してるの!?」と声をかけられてハッとするという展開だ。
段取りで監督は、「“何してるの!?”と言われて自分を取り戻すまで一拍いただいていいですか?」と田中に指示。つい頭に血が上って我を忘れてしまっていた翔太が、菜奈が現れて冷静になるという流れ。切り取り方で言えば、女の子を泣かせて強引に引っ張っている現場を最愛の妻に見られてしまい、やましさを否定すべく慌てふためくという見せ方にもなり得る場面だ。しかし田中はその指示に頷きながらも、「翔太的には“ヤバいところを見られた”ってならない気がするんです」と監督に持ちかける。いや、そうなのだ。作劇的な演出をさておけば、そのとおりなのだ。
翔太は、菜奈を守るためだったら何でもする。菜奈のことだからこそ熱くなる。そもそも菜奈のことを愛しきっていて、他の女の子といようと何をしようと、その愛がぶれることはない。愛しているからこそ、それは菜奈も分かっているはずだと信じきってもいる。だから菜奈が現れたからと言って硬直することも、この現場を見られたからと言ってうろたえることもないはずなのだ。
本当に愛しているとは、そういうこと。惑うことなくそうできるのが翔太で、迷いなくそう演じることができるのが田中だ。そして原田が演じる菜奈の「……何してるの!?」も事態にとまどって飛び出た言葉ではなく、黒島を労わってのもの、何より翔太を案じてのものとして響く。
初日の撮影現場から伝わってきたのは、まさに“愛”
初日はこの他、自分たちのパーティーが事件を招いてしまったと気に病む菜奈を翔太がバックハグで抱きしめて慰めるシーン、ベッドに入りながらもそれぞれ眠れずに考え込むというシーンも撮影された。原田と田中のふたりのやりとりが多い撮影となったこともあるが、初日の現場から伝わってきたのはまさに“愛”だ。スタッフ・キャストの作品に寄せる愛。菜奈と翔太の愛。そして、菜奈と翔太というキャラクターに対する原田と田中の愛。
映画化発表に際してのコメントで、鈴間広枝プロデューサーは「“菜奈ちゃんが生きてる……”。撮影初日、知世さんとの共演シーンの後、圭さんがセットの廊下でひとり泣きそうになっていました」と明かしていたが、田中自身も「またこの作品にもう一度戻れたのは本当に嬉しかったですし、何よりも菜奈ちゃんが生きている世界は翔太が誰よりも望んでいるものだったと思うので、それは僕・田中圭としてもやっぱりすごく嬉しかったです」と語っている。翔太と田中にもはや境目はない。
その愛をもって駆け抜けた、1カ月強の期間。キャスト陣の言い回しや表情ひとつ取っても、スタッフ陣の画作りにおいても、愛は伝わるはずだ。完成した作品が極上のミステリー、至高のエンタテインメントにして珠玉のラブストーリーとなっていることは観た人は承知のとおり。愛するとは、愛されるとはどういうことなのか。そこで何がもたらされ、何が生み出されるのか。それを“あなた”が考える“番”。
細かな点にも注目しながら、未見の方はぜひ一度、またすでに観られている方はまた何度でも、劇場へ足を運んでほしい。
取材・文:渡辺水央
『あなたの番です 劇場版』
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(C)2021『あなたの番です 劇場版』製作委員会
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