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舞台女優としての存在感をみせた大竹しのぶ、吉右衛門最後の石川五右衛門など 演劇ジャーナリスト・大島幸久が振り返る、2021年お芝居myベスト

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『the DOCTOR』より、大竹しのぶ  撮影:宮川舞子

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新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄された演劇界も2021年はようやく息を吹き返し、感染対策を施しながら、公演は前年より大幅に増加した。ちなみに観劇数は332公演となった。

①栗山民也が演出した『the DOCTOR』(PARCO劇場。11月10日所見)、フィリップ・ブリーン演出『夜への長い旅路』(シアターコクーン。6月9日所見)の翻訳劇2作で大竹しのぶが隋一の舞台女優であることを再認識させた。特に前者が医療機関の所長ルース。入院患者への面会を拒絶して起きる会話劇で、ディベート番組に出演した場面は圧倒的。次々と非難され、自身の過去が暴かれるが、神経を病み、混乱に向かっていく演技は後者の狂気の芝居と共に本領を発揮した。

『終わりよければすべてよし』より 左から 藤原竜也、石原さとみ 撮影:渡部孝弘

②彩の国さいたま芸術劇場が上演してきた「シェイクスピア・シリーズ」の完結作品が喜劇『終わりよければすべてよし』だった。シェイクスピア戯曲37作を松岡和子が完訳。1998年の第1弾『ロミオとジュリエット』から23年。演劇史上で快挙と言える成果だ。そのファイナル公演の演出が吉田鋼太郎。吉田は他界した蜷川幸雄氏の演出を継承して5作目。ヘレンの石原さとみ、バートラムの藤原竜也に生き生きと芝居をさせた。蜷川氏への熱いレクイエムになった。(5月15日所見)

『ガラスの動物園』より 左から 麻実れい、岡田将生 写真提供/東宝演劇部

③上村聡史が挑発的に演出した『ガラスの動物園』(シアタークリエ)は俳優の演技、美術(装置)、そして挿入された音楽にしても立体的な舞台となって刺激を受けた。日本でも多くのカンパニーが上演してきたが上村演出は過去にはないスタイルを持ち込んだ。母親アマンダの麻実れいは逃げた亭主を怨んでは若き日に拘り、娘ローラを溺愛、息子トムへの過剰な期待から口うるさいがむしろ普通の母親像をややヒステリックに好演。トムの岡田将生は口汚い言葉を叫ぶように吐き、若者の苛立ちが浮き彫りになった。三位一体の家庭劇である。(12月14日所見)

こまつ座『化粧二題』より 内野聖陽 撮影:田中亜紀

④こまつ座『化粧二題』(サザンシアター)は2019年6月以来の再演だった。大衆演劇の座長に扮した男性版が内野聖陽、女性版が有森也実の一人芝居である。内野が演じた市川辰三に男の色気がプンプンと伝わった。劇中劇の忠太郎と母おはま、相撲の「瞼の土俵入り」や恩師ジュール先生などの人物を演じ分けた描写が初演よりくっきりとした。自分を捨てた母親への怒りも濃く、その分、歩んできた道の苦しさ、厳しさが浮かび出た。舞台俳優としての先の楽しみが増した、と思う。(8月17日所見)

歌舞伎座『三月大歌舞伎』チラシ

⑤最後が歌舞伎。『三月大歌舞伎』の歌舞伎座第3弾。『桜門五三桐』で中村吉右衛門は石川五右衛門を演じた。吉右衛門最後の舞台となったその姿を5日と16日に観た。体調不良で途中休演した1月以来の出演であり、五右衛門はこれ限りかと目に焼き付けたかった。京都東山の南禅寺楼門。咲き誇る桜の春景色、大百日(だいびゃくにち)のかつら、どてら姿の吉右衛門が「絶景かな、絶景かな」。奇才の立役は名台詞名調子を響かせた。11月28日に他界。客席から観る大歌舞伎こそ、「絶景かな」であった。

プロフィール

大島幸久(おおしま・ゆきひさ)

東京都生まれ。団塊の世代。演劇ジャーナリスト。スポーツ報知で演劇を長く取材。現代演劇、新劇、宝塚歌劇、ミュージカル、歌舞伎、日本舞踊。何でも見ます。著書には『名優の食卓』(演劇出版社)など。鶴屋南北戯曲賞、芸術祭などの選考委員を歴任。「毎日が劇場通い」という。

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