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原作の言葉たちの、不思議できれいな世界観がそこに 「心の目で見る」ミュージカル『リトルプリンス』

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ミュージカル『リトルプリンス』より  写真提供/東宝演劇部

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サン=テグジュペリの不朽の名作「星の王子さま」を原作として、1993年に音楽座ミュージカルとして生まれた『リトルプリンス』。2020年の『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』、2021年の『マドモアゼル・モーツァルト』に続き、演出家・小林香が手がける3作目の音楽座ミュージカルがシアタークリエで上演中だ。初日を控えて行われたゲネプロのうち、王子役を土居裕子(加藤梨里香とWキャスト)が務めた回を取材した。

理屈では説明できないが、感覚的には泣きたくなるほどよく分かる――原作に書かれた言葉たちが与える、そんな不思議できれいな印象を、そのまま立体化したような舞台だ。象徴的なのが装置。単体で見るそれは、ところどころに大小さまざまな穴が開き、あちこちにボルダリングホールドが付けられただけの不思議な物体だ。だがそこに、言葉たちに導かれるようにして映像や照明やダンスが加わると、何が起こっているのかが一目瞭然となるのだ――その映像や照明やダンスは、決して具体的でないにもかかわらず。

この「説明し過ぎない分かりやすさ」は、標榜するのはたやすくとも、大勢のスタッフ・キャストが関わる舞台作品で実現するのは並大抵のことではないはずだ。関わる全員の、原作と音楽座ミュージカルへの深い愛とリスペクトを感じるとともに、ともすると自分もその一員となったような気持ちになる。 舞台を思い出そうとすると、シアタークリエの客席から眺めた景色ではなく、自分があの不思議できれいな装置の隅っこに体育座りをして体験したかのような光景が浮かぶ。それは舞台を、目ではなく心で見たからなのかもしれない。……と、思わずレポートまで、それこそ心の目で読まなければ分からない抽象的な内容になってしまったが。そうならざるを得ない舞台であったことを改めて強調した上で、最後に具体的なことも付け足すと、並大抵ではないことを演出の小林とともに成し遂げたキャスト陣が素晴らしい。

井上芳雄は飛行士を渋かっこよく演じながら、『キャッツ』に憧れてこの世界に入った彼にとっては念願とも言える動物(キツネ)役で生き生きと、可愛らしく躍動してみせる。花總まりの花はゴージャスでありながら繊細で愛おしく、大野幸人のヘビは蛇の概念が変わりそうなほど哲学的で魅惑的。

そして王子役の土居裕子は、あらゆるカテゴリーを超越した、まさに宇宙人的存在感でこの役にぴったり! とはいえWキャストの加藤梨里香もまた、可憐なだけでなく非常に達者な役者である。彼女の王子だとこの4人の関係性がどう見えるのか、大いに興味が湧いた。

取材・文:町田麻子

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