岩波ホールが7月末で閉館、ミニシアターの先駆けが54年の歴史に幕
映画
ニュース

岩波ホール正面
東京・神保町の岩波ホールが7月29日をもって閉館することが明らかに。本日1月11日に公式サイトやSNS、プレスリリースを通じて発表された。
岩波ホールは1968年2月に多目的ホールとして開館し、半世紀以上の歴史を持つ単館系の映画館。このたび新型コロナウイルスの影響による急激な経営環境の変化、それに伴う劇場運営の困難を理由に閉館が決まった。公式サイトには「54年間の長きにわたり、ご愛顧、ご支援を賜りました映画ファンの皆様、関係者の皆様に心より御礼申し上げます」とつづられている。
岩波ホールの総支配人を務めた高野悦子が、川喜多かしことともに発足した名作映画上映運動「エキプ・ド・シネマ」は日本におけるミニシアター運動の原点とも言われる。同館を拠点としながら1974年2月に公開したサタジット・レイ「大樹のうた」を皮切りに、イングマール・ベルイマン、テオ・アンゲロプロス、アンジェイ・ワイダ、ルキノ・ヴィスコンティ、アンドレイ・タルコフスキー、マルガレーテ・フォン・トロッタの監督作など、国内外の芸術的・実験的な映画を数多く上映。トルコ、グルジア、韓国、中国、アフリカ、中南米などの知られざる映画も先駆的に紹介し、これまで65カ国の271作品が封切られた。
1983年には高野が製作に名を連ね、エキプ・ド・シネマが共同配給した、パウロ・ローシャによる日本とポルトガルの合作映画「恋の浮島」を公開。岩波ホール創立15周年作品となる同作はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された。1988年に公開された「八月の鯨」は31週のロングランで動員14万人を記録し、「エキプ・ド・シネマ」おける最大のヒット作として知られる。
現在、岩波ホールでは多角的な視点からホロコーストの証言を記録したドキュメンタリー「ユダヤ人の私」が1月14日まで上映中。今後「安魂」「金の糸」「メイド・イン・バングラデシュ」が順次公開される。最終上映作品は6月4日公開の「Nomad(原題)」。1月29日から2月25日にかけては「ジョージア映画祭2022 コーカサスからの風」が開催される。閉館に伴い会員制度「エキプ・ド・シネマの会」は7月29日で終了。新規募集・継続の受付も本日をもって終わりとなる。そのほか今後の詳細は公式サイトで追って発表される。