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SFアニメ『Sonny Boy』をオリジナルで作り上げた夏目真悟監督、「思春期の頃を思い出しながら観てほしい」

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『Sonny Boy』 (c)Sonny Boy committee

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突然、異次元を“漂流”することになった少年少女たちのサバイバルを描く新感覚SFアニメ『Sonny Boy』。謎が謎を呼ぶ展開と個性的なキャラクターの織りなす人間模様に、昨夏どっぷりハマった人も多いのでは? 『ワンパンマン』(第1期)や『ブギーポップは笑わない』を手がけた夏目真悟監督のオリジナルである本作はどのようにして生まれたのか。昨年末にBlu-ray BOXが発売され、1月12日からは秋田放送での放映も開始される本作について、夏目監督が作品に込めた思いと手応えを聞いた。

──本放送が終わった際の心境をお聞かせください。

夏目 正直ほっとしました。放送中はどんなリアクションがくるかドキドキしっぱなしで。やっと堂々と街を歩けるようになりました(笑)。

──どのような反響が寄せられたのでしょうか。

夏目 今回オリジナル作品ということもあり、自分の考えを赤裸々に詰め込んだのでどんな反響があるか少し怖かったんですよね。制作しながら自分でも「分かりづらいな」「親切じゃないな」と感じることはあったので、そういう反応はもちろんありました。でもその中で自分が伝えたかったことを的確に捉えてくれている人もいて。あらためて作ってよかったなと思いますし、いろいろな意見が聞けてうれしかったです。

──本作は夏目監督のオリジナル作品ですが、構想はどのようにふくらませていったのでしょうか。

夏目 本当にまっさらな状態からスタートしました。せっかくだから自分が好きなことをやろうと、これまで見てきた映画や小説について思い出しながら、それがなぜ好きだったのか考えていったんです。そのうちに物語の骨格ができ、長良という主人公の少年が生まれ、いろいろな“この世界”の設定とルール、ランダムで与えられる超能力といった世界観ができあがっていきました。「自分はこういう人間だから、こういうものが好きなんだな」と見つめ直すような作業でした。

──江口寿史さんが原案を務めたキャラクターも魅力的ですよね。

夏目 実は身近な人をモデルにしています。子供の頃に憧れたおじさんや、友人たち、長良は自分自身に近いかもしれませんね。

──映像や演出面でもチャレンジングな試みが多かったのではないですか。

夏目 まずは絵でアニメのオリジナリティを出したかったんです。ザッピングしていてチラッと映っただけで、「これってあの作品じゃない?」と思われるような映像を目指しました。手描きの背景美術だったり、セル時代に使っていたような手法の撮影処理を積極的に採用しましたね。結果、背景の絵の具の色の強さも際立って生命力の感じられる映像になったかなと思っています。

音楽も極力使わず、1話につき1曲か2曲。ストーリーのインパクトを高めるために削ぎ落としていきました。多少リスクがあっても難しい表現を選んでいったのですが、あんまり人がやってることをやりたくないなという思いもあったので、総じてあまのじゃくなんだと思います。

──銀杏BOYZによる主題歌はもちろん、挿入歌も全て書き下ろしなのは驚きました。

夏目 めちゃくちゃ贅沢です! アニメの音楽制作にはいろいろな“しばり”が発生することもあるのですが、今回はスタッフさんが頑張ってくれて自由にやらせていただきました。各ミュージシャンに楽曲制作をお願いする時点でシナリオがすでにあり、時間があったのも練り込んだ作りができた理由です。アドバイザーには渡辺信一郎さん(『カウボーイビバップ』などの監督)に入ってもらい、僕の知らなかったミュージシャンをいろいろ提案していただきました。

そして主題歌の銀杏BOYZは、昔から大好きだったバンド。最終話のエンディングは峯田和伸さんにアフレコスタジオで弾き語りをしてもらいました。監督っていいなと思いましたね。

僕がこの作品を作るにあたって歩いた足跡を、主人公にも歩かせかたった

──キャストの方々の自然な演技も印象的でした。アフレコ現場の様子はいかがでしたか。

夏目 ほとんどの方はこれまでにご一緒したことのある声優さんです。作品に合う自然な演技ができる方を選ばせてもらいましたし、キャストさんも自分の好みを分かってくれているのでアフレコ自体はスムーズでした。ただ長良役の市川蒼さんには苦労させた部分もあったかもしれません。長良って無感動なように見えて、何かにイライラしているようなちょっとズレた子。それを声で表現するには微妙なニュアンスのサジ加減が難しかったと思うのですが、それも1話2話くらいまでで、以降はバシっと捉えてくださいました。

──監督の仕事は多かれ少なかれ、自分と向き合う作業が必要になると思いますが、今回は特にその時間が多かったのではないですか?

夏目 そうですね。僕はアニメーター出身なのでコンテや絵を描くのは比較的早いのですが、今回は脚本でつまずきました。どうしても理屈でセリフを書けなかったので、思いつくまで待つというような“釣り”みたいなスタイルになっていて。1週間で1行くらいしか書けないときもあり、愕然としましたね。

──まさに産みの苦しみですね。

夏目 やっぱり身を切らないと面白くならないことはありますから。言葉だけを連ねてもどこか嘘っぽくなってしまいますし、それほど器用な方じゃないので、なるべく正直にキャラクターやストーリーを表現したいと思っていました。嘘のないものを作ろうとするなら、自分がこれまで経験したことから出していくのがベターだなと、今回はそういう作り方を意識しています。

『Sonny Boy』は長良が成長し、自分なりの選択をする物語。特に6話以降は、過去を振り返ったり、足下を見つめるようなエピソードが続きます。僕がこの作品を作るにあたって歩いた足跡を、長良にも歩かせかたったんです。

──監督が「私的な作品」とおっしゃる理由がよく分かりました。ちなみに『Sonny Boy』のキャラクターたちは中学3年生の設定ですが、監督の当時の思い出を教えてください。

夏目 『トム・ソーヤーの冒険』が大好きだったのですが、それ以外にも映画やアニメ、ゲームなどにもたくさん触れて過ごしていました。いい時代に生まれたとつくづく思います。ただその分、自由すぎるがゆえのストレスも感じていて、それが今回の作品にも反映されている気がします。恵まれていたがゆえにいろいろなことに飽きてしまった世代なのかな。もっと素直に生きたかったですね(笑)。

みなさんも思春期の頃を思い出しながら観ていただくとまた違った見方のできる作品になっていると思いますので、忘れた頃にでも観返していただけたらうれしいです。

取材・文:渡部あきこ

『Sonny Boy』
Blu-ray BOX:30,800円(税込)発売中
発売・販売元:松竹
(c)Sonny Boy committee



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