“黄色い葉の精霊”ムラブリ族を追ったドキュメンタリー3月公開
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「森のムラブリ インドシナ最後の狩猟民」ポスタービジュアル
ドキュメンタリー「森のムラブリ インドシナ最後の狩猟民」が、東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で3月19日より順次公開される。
タイ、ラオス、ミャンマーにかけてのゾミアと呼ばれる山地に住み、平地民から姿を見られずに森の中を遊動してきた“黄色い葉の精霊”ムラブリ族を撮影した本作。監督の金子遊は、文字のないムラブリ語の語彙を収集する言語学者・伊藤雄馬とともに足かけ2年ムラブリ族を追った。伊藤はラオスで狩猟採集を続けるグループへの接触を試み、タイに住む別のムラブリ族グループと出会う機会を創出。さらに村に住んでいるタイのムラブリ族の1人に、以前の森での生活を再現してもらうなど、消滅の危機にある貴重な部族の姿を映像に収めることに成功している。
現代のムラブリの遊動民生活を記録したと説明する金子は「そこから見えてくるのは、人類にとって火を使うこと、食べること、住むこと、夫婦になること、子どもを持つこと、家庭をつくることは何かという、わたしたちの文明を逆照射し、内省を迫られる根源的な課題でした」とつづった。
金子遊 コメント
タイ、ラオス、ミャンマーにかけてのゾミアと呼ばれる山地に住むムラブリ族は、半裸で森を移動する遊動民で、長らく狩猟採集生活をしてきました。この映画はまず、タイ側で焼畑農業をおこなうモン族にジャングルを焼き払われた挙げ句、ムラブリ族が日雇い労働者として彼らの農業を手助けしている実体を描きます。そこには、現代の人類学やエコ・クリティシズムに共通する視点があります。無文字社会に生きてきたムラブリですが、即興的な歌唱法やフォークロアをもっています。
ムラブリ語を流暢に話し、インドシナ半島の各地に散らばったムラブリの言葉を比較研究する日本の言語学者・伊藤雄馬氏と出会ったことから、このドキュメンタリー企画はスタートしました。映画の後半では、伊藤氏とわたしのカメラはラオスの森の奥深くに踏みこみ、研究されることも撮影されることもなかった現代のムラブリの遊動民生活を記録しています。そこから見えてくるのは、人類にとって火を使うこと、食べること、住むこと、夫婦になること、子どもを持つこと、家庭をつくることは何かという、わたしたちの文明を逆照射し、内省を迫られる根源的な課題でした。
(c)幻視社