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【ライブレポート】宇多田ヒカル、最新作の数々をバンドセッションで初披露「奥の方の特別な空間を初めて共有できた」

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宇多田ヒカル『Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios』

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極めて高い完成度! 宇多田ヒカル初の有料配信ライブ

不純物がひとつも入っていない、純粋な、そして根源的な愛の歌。このセッションで奏でられた音楽を、そう表現したくなった。1曲1曲に深く強く揺さぶられ続けて、終演した瞬間には放心状態になってしまった。それくらい素晴らしいライブセッションだったのだ。

宇多田ヒカルの誕生日であり、ニューアルバム『BADモード』発売日である2022年1月19日に開催された有料配信スタジオライブ「Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios」。

Air Studiosはビートルズの伝説的なプロデューサーだった故ジョージ・マーティンが設立したロンドンの名門スタジオだ。高品質の録音・ミックスをする設備が整っている。このセッションにふさわしいロケーションと言えるだろう。

参加ミュージシャンは宇多田ヒカルの2018年のコンサートツアーでバンドマスターを務めていたベーシストのJodi Milliner、アルバム『初恋』の「Good Night」でドラムとして参加していたEarl Harvinなど、屈指の顔ぶれが揃った。さらに最高のエンジニアと最高の映像チームが集結して、スタジオライブ映像作品としてもきわめて完成度が高い作品に仕上がった。このライブセッションを鑑賞することはとてもぜいたくな体験だろう。

演奏されたのは11曲。ニューアルバム『BADモード』収録の9曲とUtada名義のアルバム『Exodus』収録の2曲という内訳だ。

スタジオの扉が開いて、ミュージシャンたちがスタジオの中に入ってきた。最後に入ってきたのは宇多田ヒカルだ。ドラムとパーカッションは透明の仕切のあるブースの中にいるが、演奏している様子は見えるので、ミュージシャンそれぞれの表情や雰囲気も伝わってくる。

宇多田ヒカルが肩を回して準備体操をし、「キーキーキー」という動物の鳴き声のような声を出すと、サックスとギターがその声を真似て音を出す。スタジオ内にはリラックスした柔らかな空気が漂っていた。

だが、彼女の歌が始まると、全員が素晴らしい集中力を発揮して音楽を奏でていく。1曲目はアルバムタイトル曲「BADモード」。

楽器編成はギター、ベース、ドラム、パーカッション、ウーリッツァー、サックス。曲によって、楽器が変わったりもするのだが、基本的には6人、曲によってはピアノでもう一人加わって7人のメンバーでの演奏。歌も演奏も繊細で緻密でかつ自在。グルーヴィーな演奏とともにあの独特の歌声がじわじわと体の奥に届いてくる。

新曲パフォーマンスから見る、宇多田ヒカル最新の音楽性

1曲目でこのセッションがいかに素晴らしいものであるかを確信した。歌と演奏が影響を与え合って、高みを目指していると感じたからだ。

音のやりとりであると同時に、人と人とのエモーションのやりとりが成立している。1コーラスが終わり、間奏での演奏を経て、歌声にさらに生命力が満ちていくのがわかる。メンバーの奏でる音楽によって、彼女の歌の輝きが増していくようだ。

おそらく聴き手の胸の中でも彼女の歌の存在はより確かなものになっていったのではないだろうか。<私がいるよ>というフレーズに胸を突かれた。

彼女の最新の音楽性がうかがえるセッションでもあった。新作の楽曲がメインということもあるが、生のバンドに影響を受けながら、もしくは影響を与えながら音楽を生み出していく手法は、前作『初恋』の延長線上のものと感じた。

ミュージシャンの演奏の役割が大きくなった『初恋』での変化をさらに推し進めたのが今回のセッションであり、新作『BADモード』ということになるのではないだろうか。

彼女の歌の大きな魅力となっているのは純度の高さだ。不純物が入っていない。その純度の高さを、多くの人数が参加しているバンドサウンドの中で、しかもセッションによって、実現しているところが素晴らしい。参加ミュージシャンたちとの深いレベルでの理解とリスペクトがあるから、そしてまた、歌い手としての着実な歌唱力の向上があるからだろう。

吹き抜ける風のようだと感じたのは「One Last Kiss」。彼女の歌が素晴らしいのは、悲しみと喜びを二項対立で捉えていない点にあると思うのだ。すべての感情は渾然一体となっている。深い悲しみの奥底にも喜びの記憶が潜んでいる。悲しみを受容することは奥底にある喜びの記憶をさらに深く刻むことでもあるだろう。

彼女の歌声が多くの人々の胸を打つのは喜怒哀楽などの感情の深層にある、より根源的なものがダイレクトに伝わってくるからだと思うのだ。だからこそ、彼女は一瞬の中にある永遠を歌に刻むことができるではないだろうか。この曲ではキーボードを弾くシーンもあった。

Ruth O'mahony Brandyの繊細なピアノで始まった「君に夢中」も根源的な愛の歌として響いてきた。低音による表現力の豊かさは彼女のシンガーとしての成長のひとつの現れといえるだろう。「誰にも言わない」のメロディの波をたゆたうような歌声とフェイクも見事だった。

どの曲からも彼女とバンドのメンバーの音楽の波動のようなものを感じた。歌声と楽器の音色の混ざり合いの美しさも堪能した。メンバーの演奏する気配や空気を的確にとらえた映像も見事だ。

『初恋』収録曲「あなた」でピアノを弾いていたReuben Jamesが加わった「PINK BLOOD」「Face My Fears (English Version)」などでもセッションのスリルを味わった。『Exodus』収録曲の「Hotel Lobby」では遊び心あふれる歌とリズミカルな演奏が楽しかった。

“シンガー・宇多田ヒカル”の素晴らしさ

伝承音楽的な雰囲気のあるアコースティックギターで始まった「Beautiful World (Da Capo Version)」は生の歌声とエディットされたハーモニーとが絶妙に融合。デジタルもアナログも包含していく深みと広がりのある世界観は人間の内面の小宇宙とシンクロするかのようだ。

彼女の歌い終えた瞬間を捉えた滲んだ映像も見事だった。鮮明でないからこそ、焦点が合っていないからこそ、描写できるものがある。

宇多田ヒカルのシンガーとしての素晴らしさ、集中力を実感する瞬間が何度もあった。最後の曲はUtada名義のアルバム『Exodus』の「About Me」。アコースティックギターで始まり、歌声がパーソナルなトーンで響いてくる。オリジナル音源の歌声よりも深くて人間味あふれるボーカルだ。

エモーショナルで自在で内省的。彼女が一瞬どこか上を見上げている。すべての思いを込めたような歌声が宙に放たれていく。

この日演奏されたすべての曲が純度の高い愛の歌だと感じた。彼女の胸の内側を奥深く掘り下げて表現すると、すべてが愛の歌になるのではないだろうか。このセッションで奏でられた愛の歌は、すべての人に向かって開かれている。共有することを容易にしてくれる、ヒューマンな歌と演奏が展開されたからだ。終演後のこんな彼女の言葉がこのセッションを象徴していた。

「普段は見せられない、共有できない、本当に中の奥の方の特別な空間を初めて共有できた気がしています」

この「Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios」のライブ映像は2022年1月23日(日) 23:59までアーカイブ配信される予定だ。ひとりでも多くの音楽ファンに観てもらいたいと思えるセッションなので、ぜひ!

文:長谷川誠

<ライブ情報>
Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios

アーカイブ配信:1月23日(日) 23:59まで

視聴チケット:2,800円(税込)
※DIGITAL INVITATION CARD 付き

『Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios』DIGITAL INVITATION CARD

一般発売:1月23日(日) 22:00まで
チケット購入リンク:
https://w.pia.jp/t/utadahikaru-pls/

特設サイト:
https://www.utadahikaru.jp/livesessions2022/

<リリース情報>
宇多田ヒカル ニューアルバム『BADモード』

2022年2月23日(水・祝) CDリリース
※1月19日(水) ~先行配信中

●初回生産限定盤(CD+DVD+BD):6,800円(税込)

宇多田ヒカル『BADモード』初回生産限定盤ジャケット
宇多田ヒカル『BADモード』初回生産限定盤 展開画像

●通常盤(CD):3,300円(税込)

宇多田ヒカル『BADモード』通常盤ジャケット

【CD収録内容】
01. BADモード
02. 君に夢中(TBS系金曜ドラマ『最愛』主題歌)
03. One Last Kiss(映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』テーマソング)
04. PINK BLOOD(アニメ『不滅のあなたへ』主題歌)
05. Time(日本テレビ系日曜ドラマ『美食探偵 明智五郎』主題歌)
06. 気分じゃないの(Not In The Mood)
07. 誰にも言わない(サントリー天然水CMソング)
08. Find Love(「brand SHISEIDO」グローバル・キャンペーン「POWER IS YOU」キャンペーン・ソング)
09. Face My Fears(Japanese Version) / 宇多田ヒカル & Skrillex (ゲームソフト『KINGDOM HEARTS Ⅲ』オープニングテーマソング)
10. Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー
Bonus Tracks
11. Beautiful World(Da Capo Version)(映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』テーマソング)
12. キレイな人(Find Love)
13. Face My Fears(English Version) / Hikaru Utada & Skrillex(『KINGDOM HEARTS Ⅲ』Opening Theme Song)
14. Face My Fears(A.G. Cook Remix)

【DVD / Blu-ray収録内容】
・『Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios』
・『Behind The Scene “Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios“』
・Music Video
01. Time
02. One Last Kiss
03. PINK BLOOD
04. 君に夢中
05. BADモード

宇多田ヒカル「BADモード」MV

宇多田ヒカル「Find Love」Live ver.

宇多田ヒカル「Face My Fears(English Version)」Live ver.

【購入特典内容】
・全国共通特典:オリジナルポストカード

宇多田ヒカル『BADモード』オリジナルポストカード

・Amazon.co.jp:メガジャケ(全2形態の内、どちらの商品をご購入いただいても通常盤ジャケット絵柄のメガジャケを差し上げます。)

配信リンク:
https://erj.lnk.to/a9OOyN

CD予約リンク:
https://erj.lnk.to/B12skU

『BADモード』特設ページ:
https://www.utadahikaru.jp/badmode/

宇多田ヒカルオフィシャルサイト:
https://www.utadahikaru.jp/

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