『奇想のモード』展、東京都庭園美術館にて開幕 シュルレアリスムとモードの共鳴を「奇想」をキーワードに紐解く
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展示風景より 中央はサルバドール・ダリ《抽き出しのあるミロのヴィーナス》(1936-64)
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すべて見る「奇想」というテーマで、モードと芸術の関係を俯瞰する展覧会『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』が、東京都庭園美術館で1月15日(土)に開幕した。20世紀最大の芸術運動・シュルレアリスムとモードとの関係を中心に、16世紀のファッションプレートからコンテンポラリーアートまでを紹介する展覧会だ。4月10日(日)まで開催されている。
アンドレ・ブルトンらによって1920年代に生まれた芸術運動「シュルレアリスム」は、文学や美術、映画などさまざまな創造活動に多大な影響を与えた20世紀最大の芸術運動となった。モードの世界も例外ではなく、それまでのファッションの文脈では使われない素材やモチーフなどが採用されるようになっていく。
いっぽう、シュルレアリストたちも、帽子や靴、手袋や針と糸など、ファッションに関連するアイテムをモチーフとした作品を作り出すなど、相互に影響を与えあっていった。同展は、このようなシュルレアリスムとモードの関係を起点とし、「奇想」をテーマに幅広い時代のファッションと芸術を8章構成で紹介していくものだ。
第1章「有機物の偏愛」では、スカラベをあしらったブローチのほか、本物の甲虫のタマムシの羽を大量に使ったヤン・ファーブルのカラーなど動植物をモチーフにしたドレスなどを紹介し、人類が最初に身に着けたと考えられる自然物と奇想との関係に思いを馳せる。
人類は、その歴史のなかで美しさを追求するあまり、ときには身体に無理をかけて理想の形に近づけていくこともあった。続く第2章「歴史にみる奇想のモード」では、極端にウエストの細いコルセットや、足を著しく変形させる纏足靴など、美のために人間の形状とかけはなれてしまった衣服や靴を紹介するほか、当時の着せかえ人形や資料を紹介する。
当人が亡くなっても、その形を留めつづける髪の毛に、不思議な力を感じる人達は少なくない。第3章「髪(ヘアー)へと向かう、狂気の愛」では、遺髪を入れて肌身離さず持ち歩くために作られたモーニングジュエリーや、髪の毛を使ったドレスなどを展示する。
そして1920年代、シュルレアリスムが生まれ、モードの世界にも影響が及ぶ。
第4章「エルザ・スキャパレッリ」は、シュルレアリスムに共鳴し、作品にも強い影響を感じさせるデザイナー、エルザ・スキャパレッリの仕事に着目する。だまし絵のテクニックを使ったセーターや、目に飛び込んでくる「ショッキング・ピンク」を発明するなど、スキャパレッリの服やアクセサリーは常に注目を集めていた。
スキャパレッリのみならず、当時のモードはシュルレアリスムに大きな影響を受けた。また、シュルレアリストたちもモードから大きな影響を受けていた。第5章「鳥と帽子」、第6章「シュルレアリスムとモード」、第7章「裏と表−発想は覆す」では両者の相互の関係をたどる。第8章の「和の奇想」では、日本におけるモードの奇想として、虫をモチーフとした帯留めなどを取り上げてる。
そして、展示は新館に移動する。花魁の高下駄に着想をえたという舘鼻則孝の《ヒールレスシューズ》や、蚕の遺伝子を組み換え、発光する糸を使ったANOTHER FARMのドレスなどからなる第9章「ハイブリッドとモード─インスピレーションの奇想」は、現在活躍するアーティストたちによる奇想のモードを展示する。
なお、ANOTHER FARM《Modified Paradice》は、専用のメガネを装着して鑑賞することで、ドレスが発光して見えるデザインとなっている。異なる見え方も楽しんでみよう。
美意識を優先し、追求しすぎた結果生まれたさまざまな「奇想」は、なぜ人々は装うのか?ということまで考えさせてくれる。この展覧会で、刺激的な美しさに心ゆくまで酔いしれよう。
取材・文:浦島茂世
【開催情報】
『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』
2022年1月15日(土)~4月10日(日)、東京都庭園美術館にて開催
※日時指定予約制
https://www.teien-art-museum.ne.jp/
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