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「80年代はLGBTQに対する理解も進んでいなかった」オリー・アレクサンダーが語る『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』

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80年代ロンドンに生きる若者たちが、忍び寄るHIVの足音に翻弄されながらも今をパワフルに生きる青春ドラマ『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』。イギリス本国で放送・配信されるやいなやHIVの検査数が記録的な伸びを見せるなど、社会現象へと発展した話題作に、ミュージシャン“Years & Years”としても世界的な人気を誇るオリー・アレクサンダーが主演。大学進学をきっかけに地元を離れ、ロンドンで青春を謳歌するゲイの青年リッチーを、LGBTQ+アクティビストとしても活躍する彼はどう演じたのか。リモートインタビューを行い、話を聞いた。

──90年代生まれのオリーさんは、80年代に対してどんな印象を持っていますか?

僕が子供の頃は、“ダサいファッションと髪型の80年代”という見方が普通だった(笑)。でも、個人的にはスーパークールな時代だと思っている。エレクトリックミュージックなどの登場で音楽カルチャーはぶっ飛んでいたし、本格的なデジタル時代が始まる前のノスタルジーもいいよね。どこか愛着を感じているよ。

──リッチーたちが暮らすイギリスの80年代にはシビアな面もありますね。

マーガレット・サッチャーが緊縮財政政策を推し進め、社会はその影響を大きく受けていた。だから国自体は貧しかったのだけど、社会的・経済的な活動は活発で。ゲイのコミュニティにとっても、非常に重要な時代だったと言えるよね。その主な理由はもちろん、HIVの蔓延。当時はHIVに対する誤解や偏見があったし、ゲイやクィアに対する理解も進んでいなかった。“恐れ”が時代を包んでいたんだ。

『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』(c) RED Production Company & all3media international

──リッチーとご自身の人生に重なる部分はありますか?

似ている部分は多いと思う。彼は役者を目指していて、18歳からロンドンに住み始めた。お芝居をしたり、ステージに立ったりすることで輝きたい。そういった大きな夢は、まさに僕自身も持っていたものだよ。もちろんすべてが同じではないけど、彼の言動の理由などを理解するのはとても簡単だった。

──ちょっと気まぐれで、つかめない部分もある青年ですね。

彼には常に隠し事があるんだ。セクシャリティを家族に隠していたし、HIV検査の結果も仲間たちに隠していた。現実をそのまま受け入れようとしないんだよね。その大きな原因は、自分のセクシャリティに対する恥の感情にあると思う。だから、自分をさらけ出せないんだ。僕自身、もっと若い頃はそうだった。ゲイである自分が嫌で、自分ではない誰かになろうとしていたこともある。リッチーはたまに、ジョークを言って注目を集めようとするよね。本心を隠すために。以前の僕も、同じようなことをよくしていたな。

──でも、彼ほど自己中心的ではないのでは?(笑)

そうだね。僕自身はもっと思いやりのある人間だと思いたい(笑)。リッチーは時々とても自己中心的で、そんな彼を仲間たちが諭してくれる。仲間を愛しているけど、たまに失礼なんだ。彼のそういった面には、正直なところちょっとうんざりした(笑)。とは言え、演じるうえで一番魅力的だったのはリッチーの複雑な人間性。まあ、人は誰でも複雑な内面を持っているものだけど、ドラマに登場するゲイのキャラクターから複雑さを感じられるのは珍しいことだと思う。

『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』(c) RED Production Company & all3media international

リッチーを演じたことで音楽活動の創作の幅が広がった

──ミュージシャンとしての表現手段も確立しているオリーさんが、役者としての表現で大切にしていることは?

音楽においては、曲を書くにしても、歌うにしても、ステージでパフォーマンスをするにしても生(なま)の表現が大事。ある意味、湧き出てくるものとも言えるかな。一方、お芝居も生の表現を届けるのに変わりはないけど、そのためには役にしっかりと入らなくてはいけないし、台詞も覚えなきゃいけない。もう少し脳を使う感じだね(笑)。

それに、俳優としての活動が音楽活動に影響を与えることもある。このドラマもそうで、リッチーを演じたことで創作の幅が広がった。撮影現場で聴いていた80年代の素晴らしい音楽が、インスピレーションやモチベーションにつながることもあったよ。物語が持つ強力なメッセージ性からも影響を受けたしね。とてもいい相互作用が生まれていたと思う。

──出演作はどのように決めていますか?

出演作に求めるものはいろいろあるけど、何よりもまず、語りがいのあるキャラクターを演じたい。ゲイのキャラクターがいいな。そう考えると、このドラマのリッチーに出会えたことは本当に幸運だったと思う。こんなにも素晴らしい作品の脚本が手元に届くことって、本当に稀なんだ。登場人物たちは魅力的だし、テーマはシリアスなのにユーモアがある。脚本を読んでいても、先の展開をもっともっと知りたいと思えたよ。

『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』(c) RED Production Company & all3media international

──ユーモアと言えば、リッチーたちの共同生活が楽しかったです。

ピンクパレス(リッチーと仲間が共同生活を送るアパート)ね! ピンクパレスのシーンは、脚本を書いたラッセル・T・デイヴィスの実体験を基にしているんだ。ピンクパレスの撮影はキャストがみんな集まることもあり、すっごく楽しかった。僕自身、実は数年前まで友人とハウスシェアをしていたんだ。いい経験だったよ。床で寝たり、夜な夜なパーティーをしたり、部屋を散らかしたりしてね(笑)。まるでリッチーたちみたいだった。

自分の人生を変えた、ガス・ヴァン・サントの『マイ・プライベート・アイダホ』

──社会に問題提起する作品であり、普遍的な青春ドラマである『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』が人生を変える1作になった人もいると思います。オリーさんにもそんな1作はありますか?

もちろん! たくさんあるよ。ひとつ挙げるなら、ガス・ヴァン・サントの『マイ・プライベート・アイダホ』かな。ふたりの青年が旅に出て、美しい恋模様を繰り広げる。リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーブスが素晴らしいし、映像美にも心を奪われた。楽しめたし、喜びを感じたし、胸を引き裂かれもしたよ。本当に、魔法みたいな1本なんだ。

──今後、一緒に仕事をしてみたい監督や俳優はいますか?

絶対にガス・ヴァン・サント! そしてメリル・ストリープ! 彼女の息子役を演じられたら最高だよ(笑)。あとは……、どうしよう。たくさんいるのに名前が出てこない(笑)。『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』の人たちとか? 最近のお気に入りドラマだから、あの中に混ざってみたいな。

取材・文:渡邉ひかる

(c) RED Production Company & all3media international

海外ドラマ 『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』 (全5話)
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https://ex.star-ch.jp/special_drama/OyYtj

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