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「令和の鼠小僧として演じたい」菊之助・丑之助親子が語る「鼠小僧次郎吉」

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左から尾上丑之助、尾上菊之助。(c)松竹

2月に上演される「二月大歌舞伎」に向けて、出演者である尾上菊之助と尾上丑之助の取材会が、昨日1月19日に行われた。

2人は第3部「鼠小紋春着雛形 鼠小僧次郎吉」に出演する。河竹黙阿弥によって四代目市川小団次のために書き下ろされた本作は、1857年に初演され、その後五代目、六代目尾上菊五郎が鼠小僧を演じてきた音羽屋ゆかりの作品。今回、菊之助が稲葉幸蔵(鼠小僧)、丑之助が蜆売り三吉を勤める。

菊之助は作品について「鼠小僧がなぜ鼠小僧になったのか、ということが話の発端になります。江戸時代では、その人がいつ生まれたかで、その人がどんな因縁を持ち、どんな業を負って生まれてきたかがわかると考えられていました。幸蔵は石川五右衛門と同じく庚申の生まれで、庚申生まれの人は盗みの業があると考えられていて、それで幸蔵の父親も一度子供を捨て、業を断ち切るということをするというわけです。でも黙阿弥さんは、そういった因縁や業を断ち切って曇りない心を取り戻すには(仏教で説かれる喜心・老心・大心を合わせた)“三心”が大事だと書かれていて、その点は今を生きる私たちにも通じることだと思います」と話した。

なお先日行われた本作のスチール撮影は、1925年撮影の六代目菊五郎扮する幸蔵と七代目尾上梅幸扮する三吉が並ぶ写真をもとに行われた。その撮影を振り返り、丑之助は「寒そうにしたり、向きが難しかったです。(衣裳を着て)笠が自分でできるのか心配になりました。あと、手ぬぐいを頭に巻いて、お父さんといっしょに泥棒の姿で写真を撮ってもらいました」とコメント。菊之助もそのときの様子を楽しげに話して、会場は和やかな雰囲気に包まれた。

また丑之助は稽古について「セリフは全部覚えました。でもまだ言い方や、どんな心で言ったほうが良いのかは、あまり整っていないです」と話す。そんな丑之助に目をやりながら、菊之助は「先日ちょうど雪が降ったので、雪の寒さは子供も身近に感じたようです」と続ける。さらに自身の実感として、「衣裳を着て先人の型をいただいて撮影に臨むと、改めて自分たちは先人たちが築き上げてきたものの上に立っているということを再認識しました。撮影を通じて、丑之助も私も、型の上に自然と心情が乗っていくことを感じ、勉強しているところです」と話した。

また記者から、本作のどういった部分が音羽屋にぴったりと感じるかと問われると、菊之助は「私自身はまだ江戸の風情が身体からにじみ出てはいない役者ですが、代々の音羽屋の役者たちはそれがにじみ出て、七五調のセリフや音羽屋ならではの形の良さでお見せするということを大事にしてきたと思います。ですので今回は、江戸の世に生きている人の風情が出るようになれよ、という宿題をいただいているのではないかと思っています」と真摯に語る。さらに「『鼠小僧』は音羽屋が代々やってきた演目になりますが、私は令和の鼠小僧として、黙阿弥さんから宿題をもらったと思い、演じたいと思います」と意気込みを語った。

続けて記者から丑之助の成長ぶりについて問われると、菊之助は「お芝居が好きになったことですかね。長いものも観ていられるようになりましたし、よくお芝居を観に来るようになりました。いつも『かぶき手帖』を持ち歩いています(笑)」と笑顔を見せる。記者からお気に入りのページを問われた丑之助は「最近の『かぶき手帖』では、僕のページです!」と元気良く答え、会場を笑いで包んだ。「二月大歌舞伎」は2月1日から25日まで、東京・歌舞伎座にて上演される。

「二月大歌舞伎」

2022年2月1日(火)~25日(金)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」

作:真山青果
演出:真山美保

出演
徳川綱豊卿:中村梅玉
富森助右衛門:尾上松緑
中臈お喜世:中村莟玉
上臈浦尾:中村歌女之丞
小谷甚内:片岡松之助
新井勘解由:中村東蔵
御祐筆江島:中村魁春

二、「石橋」

出演
獅子の精:中村錦之助
獅子の精:中村鷹之資
獅子の精:尾上左近

第2部

一、「春調娘七種」

出演
曽我十郎:中村梅枝
静御前:片岡千之助
曽我五郎:中村萬太郎

二、「義経千本桜 渡海屋 大物浦 片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候」

出演
渡海屋銀平実は新中納言知盛:片岡仁左衛門
源義経:中村時蔵
女房お柳実は典侍の局:片岡孝太郎
入江丹蔵:中村隼人
銀平娘お安実は安徳帝:小川大晴
相模五郎:中村又五郎
武蔵坊弁慶:市川左團次

第3部

一、鬼次拍子舞

出演
山樵実は長田太郎:中村芝翫
白拍子実は松の前:中村雀右衛門

二、「鼠小紋春着雛形 鼠小僧次郎吉」

作:河竹黙阿弥

出演
稲葉幸蔵:尾上菊之助
刀屋新助:坂東巳之助
芸者お元:坂東新悟
杉田娘おみつ:中村米吉
蜆売り三吉:尾上丑之助
石垣伴作:中村吉之丞
左膳弟子左内:市村橘太郎
養母お熊:嵐橘三郎
与之助:坂東亀蔵
早瀬弥十郎:坂東彦三郎
本庄曾平次:河原崎権十郎
大黒屋抱え松山:中村雀右衛門
辻番与惣兵衛:中村歌六