池松壮亮が一番言いたくなかったセリフとは、久々のラブストーリーに「恥ずかしかった」
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「ちょっと思い出しただけ」東京プレミア上映会の様子。左から尾崎世界観、伊藤沙莉、池松壮亮、松居大悟。
「ちょっと思い出しただけ」の東京プレミア上映会が本日1月23日に東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、キャストの池松壮亮、伊藤沙莉、主題歌を担当するクリープハイプの尾崎世界観、監督を務めた松居大悟が登壇した。
尾崎がジム・ジャームッシュ監督作に着想を得て制作した楽曲「ナイトオンザプラネット」。「ちょっと思い出しただけ」は、この楽曲に着想を得る形で松居が脚本を執筆したオリジナルストーリーだ。けがでダンサーの道をあきらめた照生(てるお)とタクシードライバーの葉(よう)を中心に、コロナ禍以前の6年間が描かれる。池松が照生、伊藤が葉を演じた。
松居は製作の経緯を「2年前の春に尾崎くんから『ナイトオンザプラネット』が送られてきました。それを聴いたときにバンドにとって何かすごく大切な曲と感じて。僕もそれぐらい強い覚悟で応えたいという思いで長編映画の脚本を書き始めた」と述懐。楽曲を「男女のラブストーリーのように感じた」と言いつつ、「その頃は(コロナ禍で)家にずっとこもっていて、昔のことを思い出す時間が多くて。昔より今のほうが久しぶりに映画館に来れたらうれしい、人と会えたらテンションが上がる。それが愛しい感情のような気がして、そういう何気ない感覚を抱きしめられるような話にしたかったとき、一番しっくりくるのがラブストーリーでした」と語った。
物語は別れたあとの照生と葉の姿から始まり、1年ごとに時をさかのぼりながら2人の二度と戻らない日々を紡いでいく。MCから「久々のラブストーリーですね」と振られた池松は「なかなか縁がないもので」と苦笑いしつつ「照れくさいですよ。とても恥ずかしかった。でも、そういう自分のてらいも利用しながらやってました」とコメント。池松とは初共演となる伊藤も撮影現場での緊張を明かしながら「お芝居をしていく中で、ちょっとずつ歩み寄れればいいかなと思ってました」と振り返る。
池松は照生のセリフの中でも「夢で待ち合わせね」という言葉にもっとも恥ずかしさを感じたそうで「一番言いたくなかった。なんで、こんなの書いたの?と(松居に)聞いたら『俺はけっこう言う』と。すごいなと思いました」と明かす。松居は「寝ると会えなくなっちゃうじゃないですか。ずっとつながってる感じがよかったんです」と理由を述べ、伊藤は「私は、その言葉がうれしくて。安心して眠りにつけるし、孤独、1人じゃないと思えるから。私けっこう好きですよと伝えたら、池松さんは『ええ』って(怪訝な)顔してました」と笑みをこぼした。
現在31歳の池松が「20代前半はとにかく一緒にいた。いろんな時間を共有して、映画を観に行ったり、同じ本を読んだり」と語るほど尾崎とは親交があるそう。本作への思いを「自分の青春と言っても過言ではない人たちと再会して、青春に決着をつけながらも、新しいものを生み出そうという気持ちでした」と吐露しながら、ミュージシャン役で出演している尾崎を「この映画における妖精のような存在。それを見事なあんばいで演じられている。いいエネルギーを映画に入れてくれてます」と称賛。一方で「ただ現場でカットがかかるたびに『俺どう?』と聞いてくるのは、ちょっと鬱陶しかった」と笑い混じりに回想し、尾崎は「現場は、ただただ不安で。邪魔したくなかった」と訳を話した。
最後に伊藤は「皆さんがこの映画を観て、決してネガティブな意味じゃなく、何を“ちょっと思い出す”んだろうと興味があります。何かを思い出すことで前を向くきっかけになるような、寄り添った作品になるといいなと思っています」と挨拶。また池松は「時代の変わり目にみんながコロナという圧倒的なものを経験して、もう戻れない“あの頃”がある。過去を再解釈することは映画の魔法。この映画を観て自分がどこにいたのか、ちょっとだけ振り返ってもらって、この映画と皆さんがいつか来る夜明けをともに迎えられたらと思ってます」と呼びかけ、舞台挨拶を締めくくった。
「ちょっと思い出しただけ」は2月11日より全国ロードショー。
(c)2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会