「国境の夜想曲」を池澤夏樹、小森はるか、藤元明緒、ブレイディみかこら17名が推薦
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「国境の夜想曲」ビジュアル
「国境の夜想曲」より作家の池澤夏樹、映像作家の小森はるか、映画作家の藤元明緒、ライターのブレイディみかこら計17名の鑑賞コメントが公開された。
「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」で知られるジャンフランコ・ロージが、3年以上の歳月を掛けてイラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯を撮影した本作。ロージは通訳を伴わずに1人で旅をし、侵略、圧政、テロリズムにより多くの人々が犠牲になった地域で残された者たちの声に耳を傾けた。
池澤は「人の世には不幸がある。政治と分断、迫害と逃避。しかし風景は、時には無残な廃墟の光景でさえ、人の眼を慰め、未来を見せる。この監督の映像の力である」と称賛。東日本大震災後のボランティアをきっかけに東北に移り住み「息の跡」「空に聞く」などを発表してきた小森は「境界線の周囲に広がる空と大地は見たことのない色をしていた。言葉よりも先に、起きた現実の鏡のように映し出された色。これを『美しい』と言って良いかわからない、矛盾した感情と向き合うことをこの映画が教えてくれた」と語っている。
「海辺の彼女たち」で知られる藤元は「少年が見つめる先に私たちは確かに暮らしている。今、世界に対する態度が問われている。どうか目を逸らさないでほしい。悲劇が灯した闇にのまれないように」と推薦。「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」のブレイディは、本作の印象を「国境地帯を撮ることで、人間の暮らしや情には国境はないことを描き出す。映画というより詩のような、映像というより絵画のような、静かな祈りに満ちた作品」とつづった。そのほかのコメントは下記の通り。
「国境の夜想曲」は2月11日より東京のBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次ロードショー。
池澤夏樹(作家)コメント
人の世には不幸がある。政治と分断、迫害と逃避。
しかし風景は、時には無残な廃墟の光景でさえ、人の眼を慰め、未来を見せる。
この監督の映像の力である。
枝元なほみ(料理研究家)コメント
夜明けの美しさに予期せぬ哀しみが込み上げるような、切ない映像でした。
胸の底にすうっと沈んだいくつもの場面を
私、きっと何度も何度も思い出します。
沖田×華(マンガ家)コメント
映像を見ていると。武者小路実篤の「進め、進め」が浮かんできた。
変革なのか侵略なのか今は分からないけど、地に足をつけて信じる道
一寸、一歩でも進んでいけば、きっと答えを見つけることができる──
と感じさせる作品です。
鎌田實(医師・作家)コメント
「無言のポエム」のような映画だ。
戦いに翻弄される人々を撮っているのに…。
暗闇に、いつでもどこでも僅かな光がさしている。
悲嘆の地の一条の光は、コロナ禍で疲れたぼくらの心も癒してくれる。
美しい映画だ。
小池昌代(詩人・作家)コメント
観終わった後に始まる映画だ。
寡黙で圧倒的な浸透力を持つ映像。
観たことが私の内に深く沈んだ。まるで経験のように。
小森はるか(映像作家)コメント
境界線の周囲に広がる空と大地は見たことのない色をしていた。
言葉よりも先に、起きた現実の鏡のように映し出された色。
これを「美しい」と言って良いかわからない、矛盾した感情と向き合うことをこの映画が教えてくれた。
サヘル・ローズ(俳優)コメント
空は広くて、不自由。母の嘆き、届かぬ悲痛。
その視線の先には、何があるのか。生きることは幸せ? 生き延びたかった?
そんな問いを感じた。美しい映像に宿る、問いかけの息吹き。
貴方には聴こえますか? 彼等の言霊が。
じょいっこ(スパイス系異国メシレビュアー)コメント
ドキュメンタリー映画なのに“物語”の中に迷い込んでしまったみたい。
先の見えない暗闇の中で奏でられる生活者たちのメロディのない夜想曲。
谷川俊太郎(詩人) コメント
目に見える事実の断片が目に見えない真実に触れている
高木正勝(音楽家)コメント
今もなお傷を抱えながら、でも毎日を生き続けている人間の美しさを、静かに、確かに見せてもらえて、助けられたと感じました。映画が終わった後も、じわじわと勇気をもらっています。
長崎訓子(イラストレーター)コメント
ざらりとした手触りの紙に、夜は丁寧に塗り重ねられて朝は粒子まで描き込まれている。
ただ見つめるだけでいい、と言われた気がした。
一青窈(歌手)コメント
永遠に銃声の響かない夜が来てほしい
星はやさしくいつも瞬き
あたたかく眠れる場所があれば
魂も心も奪い合わないで人はいられるのではないか
この地球で起こっていることを
この映画は静かに、教えてくれました。
日向史有(ドキュメンタリー監督)コメント
少年がソファで毛布に包まる。
彼の寝息はかぼそいけれど、確かに聞こえてくる。
それは深く傷ついてもなお、日々を生きる人間のエネルギーそのものだ。
藤元明緒(映画作家)コメント
少年が見つめる先に私たちは確かに暮らしている。今、世界に対する態度が問われている。
どうか目を逸らさないでほしい。悲劇が灯した闇にのまれないように。
ブレイディみかこ(ライター)コメント
国境地帯を撮ることで、人間の暮らしや情には国境はないことを描き出す。
映画というより詩のような、映像というより絵画のような、静かな祈りに満ちた作品。
丸山ゴンザレス(ジャーナリスト) コメント
戦火に巻き込まれた人たちの苦悩の欠片を丁寧に集めた本作。当事者たちには忘れたいこともあるだろう。
だからこそ消したい記憶を記録したこの映画の意義は大きい。
綿井健陽(ジャーナリスト・映画監督)コメント
これはどこなのか、彼らは誰なのか、そこで何が起きているのか……
全ては説明されないまま、シーンが展開していく。
しかし、幻想的な映像と静寂な空間に響く音、そして人間の確かな姿と声が浮かび上がる。
闇と光が織りなす不思議な映画に呑み込まれた。
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