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グラミー最優秀新人賞は誰の手に? カーディ・Bらが除外されたルールの“問題点”とは

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リアルサウンド

 第61回グラミー賞の最優秀新人賞は誰だろう? カーディ・B? ポスト・マローン?  XXXテンタシオン?  答えは、全員ノミネートすらされない可能性が高い。すでにみな「除外」と報道されているのだ。2018年にシングル1位を獲得した面々だったために驚きを呼んだが、理由はシンプル。主に2017年から施行された新ルールに引っかかったと推測されている。この規則により、カミラ・カベロにも「除外」の可能性が生じている。「最も定量化が困難な部門」と言われる新人賞のルールは、どんなものなのか。「除外」と報じられたアーティスト別に紹介する。

(関連:アデルは“無敗伝説”更新し、ビヨンセは“ディーバ”の実力見せたーーグラミー賞授賞式を観て

・ノミネート歴:カーディ・B

 カーディの場合、理由は単純だ。AP News(https://apnews.com/8f49152bd7cd497f9183a2c8048e3f0b)によると、カーディはノミネート経歴があるため除外された(第60回で「Bodak Yellow」が最優秀ラップ楽曲部門、最優秀ラップ・パフォーマンス部門にノミネート)。 新人賞部門には以下のルールがある。「グラミー賞のパフォーマンス部門ノミネート経験を持つ場合、このカテゴリーの資格を持たない。ノミネーションされたシングルでゲストスポットで、その時フルアルバムをリリースしていなかった場合を除いて」(参照:https://www.grammy.com/grammys/news/what-qualifies-best-new-artist-grammy-winner-new) AP Newsによると、カーディは2018年にも新人部門にエントリーし、落選した。候補となるならこの年だった。

・楽曲数制限:XXXテンタシオン

 死後「SAD!」がナンバーワンヒットとなったテンタシオンは、まごうことなきブレイクスルーアーティストだ。彼の場合、暴行疑惑等も浮上していたため、グラミーが候補にするかは「コントラバーシャル」とされてきた。しかし、アワード側からすれば、元々「ノミネート資格」自体なかったようだ。推測要因とされるルールは、2017年度から適用された以下の制限。

新人部門ノミネートにおけるリリース数制限ルール

下限:5曲または1アルバム以上リリース
上限:30曲または3アルバム以上リリース
(アルバムの定義は5曲以上収録しているEPとする)
(参照:https://www.grammy.com/recording-academy/press-release/the-recording-academy-announces-rule-amendments-and-dates-for-the)

 この制限が「ノミネート対象期間中の数」または「キャリア通しての数」のどちらなのかは議論がわかれているが……Pitchfork(https://pitchfork.com/news/xxxtentacion-ineligible-for-best-new-artist-at-grammys-2019/)によると、テンタシオンが対象期間中にリリースしたトラックは24曲(2017年10月1日~2018年9月30日)。さらにフィーチャリングとして少なくとも7曲に参加しているため、ゲスト参加も計上される場合は30トラックを超える。制限が「キャリア通しての数」だった場合、ほかの有力候補も危うくなる。Billboard(https://www.billboard.com/articles/news/grammys/8478805/grammys-best-new-artist-qualification-rules)によると、カントリー歌手のケイン・ブラウンは、デビューアルバムに加え5曲以上収録した2つのEPをリリース済みだ(テンタシオンに関して、Pitchforkは後述する「ブレイクスルー時期」疑惑も挙げている)。

 このリリース制限は、現行の音楽シーンに見合っているのだろうか? ストリーミングの普及により、リリースされる楽曲数は増えている。Brockhamptonは1年で3作のアルバム、King Gizzard & The Lizard Wizardに至っては1年で5作のアルバムをリリースしたことがある。2017年には、クリス・ブラウンが2枚組45曲入りのアルバム『Heartbreak on a Full Moon』を出した。新人アーティストがブラウンと同じ曲数を収録したスタジオアルバムをリリースした場合、それが初リリースだろうと失格となる(参照:https://uproxx.com/music/streaming-increased-music-releases/)。

・ブレイクスルー時期:ポスト・マローン&カミラ・カベロ

 ポスト・マローンが失格となった理由は「対象期間以前から注目を浴びていた」ためと伝えられている。2017年施行の新ルールでは「対象期間中のブレイクスルー」が必須とされている(参照:https://www.billboard.com/articles/news/grammys/8478805/grammys-best-new-artist-qualification-rules/https://www.grammy.com/recording-academy/press-release/the-recording-academy-announces-rule-amendments-and-dates-for-the)。確かに、マローンは2017年10月以前から売れていた。2016年リリースの「Congratulations」 は全米ビルボード総合ソングチャートHOT100で8位を記録している。元々ヒットしていた者は「新人」賞に適さない……ここまで聞くとそれなりに納得できるが、問題がある。2018年に最優秀新人賞を受賞したアレッシア・カーラにまつわる議論だ。彼女は、2015年のデビューシングル『Here』がHOT100で5位を獲得していた。チャート記録だけ見ても、マローンと同じく「期間対象前から売れている」のだ。何故、カーラはOKでマローンはNGなのか? ここが難題だ。「ブレイクスルーした時期」は、一体どうやって決めるのだろうか? 「新人部門は定量化が難しい」とされる大きな要因だろう。

 Variety(https://variety.com/2018/music/news/grammys-2019-nominees-predictions-1202992346/)は、Fifth Harmonyからソロデビューしたカミラ・カベロも「グループ在籍時からヒットしていた」ことを理由に、ノミネートから除外されたと記している。AP NewsやPitchdorkはカミラ失格については報じていないため、他3人と比べると信頼性はやや低い。彼女がノミネートされるかも注目点だ。

・受賞者予想

 グラミー賞の最優秀新人賞ウィナーは誰になるのか? まず、知名度の高いカミラ・カベロがノミネートされた場合は強力だろう。グラミー主要4部門は全ジャンルの専門家が投票するため、知名度が重要とされる。また、票田が大きいとされるカントリーやロックの系譜を持つアーティストは、それだけで有利とされる。ナンバーワンヒットを輩出した知名度、カントリールーツ、この2つを併せ持つメーガン・トレイナーは2016年度で見事本賞を受賞した。カミラの場合、作風がラテンやアーバン寄りであるため、メーガンほど「強力な下地」は持たないかもしれない。前述したケイン・ブラウンはHOT100で15位を獲得したカントリー歌手なので、候補に入れば票を掴むポテンシャルがある。

 新人賞ノミニーは、2019年より5人から8人に拡大する。有名メディアには、以下の候補が予想されている。デュア・リパ、エラ・メイ、ジョルジャ・スミス、H.E.R.、ジュース・ワールド、ビリー・アイリッシュ、クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズ、 Greta Van Fleetなど。サプライズノミニーがあるとしたら「Gucci Gang」がHOT100で3位を記録したお騒がせ10代ラッパーリル・ポンプだろうか。

 新人部門から除外されたカーディ・Bとポスト・マローンにしても、主要3部門の可能性は残っているため、まだまだ注目株だ。マローンは、グラミー賞のことを“つい気にしないふりをしてしまう中学時代の恋に似ている”というような表現で語ったことがある(参照:https://www.billboard.com/articles/news/grammys/8478719/dua-lipa-ella-mai-post-malone-talk-grammy-awards)。彼の初恋が実ることを祈ろう。(辰巳JUNK)