BTS、“フィーチャーされる側”としての人気も? スティーヴ・アオキとの3度目のコラボから考察
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EDM界きっての人気DJ、スティーヴ・アオキが11月9日に5枚目のオリジナルアルバム『Neon Future Ⅲ』をリリースする。同作から先行シングルとして発表された「Waste It on Me」ではBTS(防弾少年団)をフィーチャー。BTSとしても全編英語で歌唱する楽曲はこれが初めてとあって各方面から話題を呼んでいる。
すでにBTSとアオキは「MIC Drop」のリミックスや「The Truth Untold」などでコラボレーションを重ねてきたこともあって、盤石の座組だ。肝心のサウンドは、ゆったりとしたテンポでチルな雰囲気を漂わせた王道のEDMポップス。とにかくアグレッシブだった「MIC drop」のリミックスと、意表を突くバラードだった「The Truth Untold」の間をいく、両者の多くのファンが求めるサウンドなのではないだろうか。
さて、“ケーキ投げ”でもお馴染みのDJパフォーマンスはもちろん、プロデューサーとしても数々のヒット曲を持つスティーヴ・アオキのこれまでの作品を眺めてみるとわかるのは、とにかくコラボレーションとフィーチャリングが多いということ。EDMのDJやプロデューサーに限らず、リル・ウージー・ヴァートやMigos、リル・ヨッティといった人気ラッパーから、Weezerのリヴァース・クオモやLinkin Park、Fall Out Boyのようなロックバンドに至るまで多様なミュージシャンと共に楽曲を制作してきた。その並びにBTSが加わるということは、ポップミュージックの世界でいかにいまBTSがホットかの証明でもある。
自らヒップホップグループを名乗ることもあってヒップホップの文脈から語られることの多いBTSだが、楽曲ではフューチャーベースやトロピカルハウスなど、EDM的なサウンドや構造を取り入れながら多彩なジャンルにチャレンジしてきた。変わったところではニッキー・ミナージュをフィーチャーしたリミックスも話題を呼んだ「IDOL」がある。同楽曲には、ゴム(Gqom)と呼ばれる南アフリカのダンスミュージックを取り入れていた。
EDMを基調としたキャッチーなサウンドに洗練されたボーカルとダンスを組み合わせたパフォーマンスが彼らをスターダムに導いた一因であることは間違いない。スティーヴ・アオキとの度重なるコラボレーションも、そうした彼らの資質との相性の良さによるところも大きいはずだ。
BTSと欧米の注目ミュージシャンとのコラボレーションといえば、先日発表されたRMのソロ作『mono.』ではイギリスのエレクトロデュオ・HONNEが楽曲提供を行っている。HONNEがトラックを手がけた「seoul」は、メロウで温かいディスコサウンドで人気を集める彼ららしい、少し霞んだような音像で綴られるミッドテンポのバラードだ。BTS本体やスティーヴ・アオキとのコラボレーションでの、いかにもメインストリームのポップス然としたプロダクションとは打って変わり、しっとりとした親密さを感じさせる。
こうした親密なムードはHONNEの提供曲に限らず、作品全体に通底するものだ。RMが2015年にリリースしたミックステープ『RM』が、リリックの内容もビートの選び方もアメリカのヒップホップシーンを意識したつくりになっていたことと比較すると、Rap MonsterからRMへ改名した彼のモードの変化が如実に見える。あえてミックステープではなく「playlist」と銘打ったコンセプトや、アトモスフェリックで内省的なトーンも相まって、ドレイク『More Life』以降のポップミュージックの流れを見据えた作品に仕上がっている。
この1年で世界的なポップスターとして知名度を飛躍的に伸ばしたことで、BTSの活動の中に今後もこうしたコラボレーションやフィーチャリングが増えてくる可能性は高い。自身の楽曲に有名なシンガーやラッパーをフィーチャーするだけではなく、むしろフィーチャーされる側としてもBTSが人気を得ることに期待したい。(imdkm)