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ボストン美術館から「武者絵」の名品の数々が里帰り 『THE HEROES 刀剣×浮世絵−武者たちの物語』開幕

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江戸時代、庶民から絶大な支持を受けていた「武者絵」の世界を、ボストン美術館が所蔵するコレクションで紐解いていく展覧会『ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵−武者たちの物語』が、3月25日(金)まで森アーツセンターギャラリーにて開催されている。世界最高水準の日本美術コレクションを誇るボストン美術館の至宝を、これまでにない切り口で楽しむことができる。

江戸時代、浮世絵はさまざまなジャンルに分かれ、発展していた。葛飾北斎や歌川広重らによる「風景画」や、鈴木春信や喜多川歌麿の「美人画」、歌川豊国や東洲斎写楽らが描いた「役者絵」とならび、武者たちが活躍する場面を描いた浮世絵「武者絵」は庶民の人気の的となっていた。

同展では、この「武者絵」の世界を、世界屈指の日本美術コレクションを持つボストン美術館の浮世絵や刀剣で紹介。浮世絵の初期に活躍した菱川師宣から、幕末の歌川国芳、月岡芳年に至るまで、有名絵師たちによる武者絵118点を展示する。また、同館の刀剣コレクション、そして国内所蔵の刀剣も合わせて特別出品される。

展示風景より

展覧会は、神話の時代から平安、鎌倉、室町、戦国時代と、主に題材の時代順に構成され、様々な姿の武者を紐解いていく。

冒頭のセクション「神代の武勇譚」では、古事記や日本書紀などに登場する神代の豪傑たちを紹介する。ヤマタノオロチを退治したスサノオノミコト、クシナダヒメをはじめ、神話の神々が力強い活躍を見せる。

左:歌川国芳《武勇見立十二支 辰 素戔雄尊》1842年頃  中:歌川国輝《本町英雄伝 牛頭天王 稲田姫》1847~48年頃 右:月岡芳年《大日本名将鑑 素戔鳥尊 稲田姫》1879年

浮世絵とともに展示されているのは、6世紀に制作されたと見られる《直刀 無銘》。日本で刀剣が使用されるようになったのは弥生時代の末期で、古墳時代に全国へと普及していった。

《直刀 無銘》(6世紀)国学院大学博物館蔵

武士が集団を形成し、日本を統治するまでの過程も、江戸時代の庶民たちには非常に人気があった。「平安時代の武者」、「源平時代の英雄」、「鎌倉時代の物語」の章では、土蜘蛛や酒呑童子を退治した源頼光、牛若丸(源義経)と武蔵坊弁慶、「曽我物語」の曽我兄弟なども登場。どれも現代でも時代劇や歌舞伎の演目として人気の題材だ。

左:銘 生涼軒萩谷勝平(花押)《藤原秀郷図鐔》江戸~明治時代(19世紀) 右:勝川春亭《藤原秀郷の百足退治》1818~20年頃
左:歌川国貞《武蔵坊弁慶 御曹司牛若丸》1813~14年 右:歌川国芳《天狗の加勢を得て戦う牛若丸と弁慶》1850年

武者絵と合わせて展示されている鐔(つば)も見どころのひとつ。江戸時代の人々は、橋の上の少年が立っているポーズを見れば、すぐに弁慶と牛若丸の話であるとわかったという。鐔にほどこされた数々の物語もじっくりと鑑賞しよう。

左:無銘(宗典派)《橋弁慶図鐔》江戸時代(19世紀) 右:連行(花押)《橋弁慶図鐔》江戸時代(19世紀)

華やかでインパクトの強い絵柄の多い「武者絵」であるが、浮世絵が生まれた初期の頃から制作されていた。同展では、菱川師宣や奥村政信など、木版多色摺りの「錦絵」が生まれる前、墨摺絵の頃の作品も楽しむことができる。

菱川師宣 酒呑童子 左《凱旋、酒呑童子の首》 中《首飛来》 右《首斬り》1680年頃

時代が進み、南北朝の動乱や戦国時代の物語も、江戸の庶民たちはこよなく愛した。「『太平記』の武将たち」「川中島合戦」「小説のヒーローたち」のセクションでは、人気のあった「太平記」、戦国時代の合戦のなかでも特に人気のあった川中島合戦、そして江戸時代に人気のあった読本の主人公らを取り上げ、その魅力に迫っていく。

大森彦七は南北朝時代、楠木正成を討ち取った武将。伊予国に帰郷の途中に、正成の怨霊に悩まされたという。このエピソードは現在でも義太夫節や謡曲、歌舞伎などの題材にされている。

左:歌川国貞《大森彦七》1828~30年 右上:銘 浜野矩隋(印)《大森彦七図鐔》江戸時代(18世紀) 右下:銘 無銘(宗則図)《大森彦七図鐔》江戸時代(19世紀)

『椿説弓張月』は、非常に人気があった曲亭馬琴作・葛飾北斎画の読本。読本のヒットを受け、絵師たちは同作品をモチーフにした武者絵を制作している。

左:卍楼北鷲《椿説弓張月 巻中略図 山雄(狼ノ名也)主のために蟒蛇を噛んで山中に骸を止む》1840年頃  右:二代歌川国貞《弓張月振分す双六》1847~48年頃

そして展覧会の最後は、ボストン美術館の刀剣コレクションで締めくくられる。平安時代から江戸時代まで、よりすぐりの20口をずらりと展示。その形や輝きの違いをじっくりと見比べよう。

展示風景より

ドラマや歌舞伎などでも描かれ、現代まで語り継がれているヒーローたち。江戸の人々は、彼らをどのように見ていたのかを「武者絵」を通して知ることができる、心おどる展覧会だ。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵−武者たちの物語』
1月21日(金)~3月25日(金)、森アーツセンターギャラリーにて開催。
https://heroes.exhn.jp/top.html

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