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慰安婦テーマの「主戦場」上映禁止をめぐる裁判、監督と配給会社が勝訴

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勝訴したミキ・デザキと弁護団(写真提供:東風)。

旧日本軍による従軍慰安婦問題を扱ったドキュメンタリー「主戦場」の出演者の一部が、監督のミキ・デザキと配給会社・東風(とうふう)に映画の上映禁止や損害賠償などを求めた訴訟の判決が明らかに。1月27日、東京地方裁判所は原告の請求を棄却し、デザキと東風ら被告側が勝訴した。

2019年4月に封切られた「主戦場」は、慰安婦問題における論争の中で疑問を抱いた日系アメリカ人の映像作家デザキが、日本、韓国、アメリカで渦中にいる人物たちを訪ね回り、イデオロギー的に対立する主張の数々を検証、分析したドキュメンタリー。全国60館以上で順次公開され、ロングランヒットを記録した。同年5月の時点で「映画『主戦場』に抗議する出演者グループ」は「その製作過程や内容に著しく法的、倫理的な問題がある」とし、上映中止を求める抗議声明を発表。6月には出演者である藤岡信勝、ケント・ギルバートら5人が上映差し止めと計1300万円の損害賠償を求め提訴した。原告はデザキから大学院の卒業制作を目的としたインタビューを依頼され撮影に応じたが、商業映画として一般公開されたと主張。内容も中立的でなく、撮影時の合意に違反するとしていた。

この余波により同年開催の第25回KAWASAKIしんゆり映画祭2019は、内定していた「主戦場」の上映見送りを決定。映画祭の共催に名を連ねる川崎市が係争中にある「主戦場」を取り上げることに懸念を示し、映画祭側が上映見送りの判断を下した形だ。この事態が「表現の自由の萎縮」の加速を招くとして、映画祭に作品を出品していた監督や俳優といった映画人を中心に抗議の声が数多く上がった。その後、映画祭は「主戦場」の上映中止を撤回。11月に無料上映が行われた経緯がある。

このたび東京地裁は「1. 原告らの請求をいずれも棄却する」「2. 訴訟費用は原告らの負担とする」と主文を言い渡した。裁判の主な争点となった「デザキが出演者をだまして映画を制作したのかどうか」については、「原告らは(中略)場合によっては商用として公開される可能性をも認識した上で、被告デザキに対し各許諾をしたものと認められる。被告デザキが(中略)原告らが主張する欺罔(きもう)行為によって原告らを欺罔したとは認めるに足りず、各許諾をするに当たって原告らに錯誤があったとも認めるに足りない。したがって、これらの点に関する原告らの主張には理由がない」と判断を下している。東風は公式サイトやSNSを通じて勝訴を報告し、88ページに及ぶ「判決書」に関して「各争点に対する双方の主張や証拠を丁寧に照らしあわせた裁判所の判断が記されていました」と言及。声明を「2年半以上にわたる裁判となりましたが、これまでご支援くださったみなさま、弁護団のみなさまに、心よりお礼を申し上げます」と締めくくっている。

(c)NO MAN PRODUCTIONS LLC