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練り上げてきた片岡仁左衛門の碇知盛、ついに見納め。歌舞伎座『二月大歌舞伎』『三月大歌舞伎』出演

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片岡仁左衛門 (C)松竹

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「一世一代と銘打たせていただきました」。

歌舞伎俳優の片岡仁左衛門が「義経千本桜 渡海屋・大物浦」で渡海屋銀平実は新中納言知盛を勤めるのは、この『二月大歌舞伎』が最後となる。

「役者には完成というものはないですし、まだまだ勉強したい、まだまだやりたいんですけれど、いかんせん体力がきつい。20kg近い衣裳を身に着けますのでね。この次やらせていただくチャンスがあっても、果たして1ヶ月間自分の納得いくやり方ができるかどうか、お客様に対して恥ずかしくない芝居ができるかどうか。(最後だと)謳っておかないと役者はどうしてもまたやりかねないので自分でブレーキをかけました。今回が最後と言えば、”次でええか”と思っていたお客様にも来ていただける。それを狙ってます(笑)」と語る。

『義経千本桜 渡海屋・大物浦』(H29.3歌舞伎座)銀平実は知盛=片岡仁左衛門(C)松竹

源氏への復讐を遂げようと凄まじい執念で源義経に迫る知盛。初演は平成16年4月の歌舞伎座だった。

「知盛を勤めた先輩方は既にいらっしゃらない。紀尾井町のおじさん(二世尾上松緑)と河内屋のおじさん(三世實川延若)を参考に、私なりにアレンジさせていただいて、私の型を作り上げました。ですからこの狂言には愛着を感じております」と語る。

物語を重視する大阪と、役者の見せ方を大事にする東京と、双方のやり方をミックスして知盛を描いてきたという。大物浦の瀕死の知盛が、自身に刺さった矢を抜き、その血で喉を潤す場面も凄まじい。

『義経千本桜 渡海屋・大物浦』(H29.3歌舞伎座)銀平実は知盛=片岡仁左衛門(C)松竹

「これは東京の先輩方はなさらない、河内屋のおじさんはなさっています。薙刀を舐める型もあり、どちらかにしようと思っています。壮絶な雰囲気を何とか出したいですね」。

東西をミックスした、いわば「仁左衛門型」の知盛だ。

「今回で消えるかもしれませんから、せいぜいよく見といてください(笑)。こればっかりはなさる人が(どの型で勤めるか)選ぶことなので、こちらの方から売り込むものではないんです。(仁左衛門型で)勤めたいと言ってくれる方が現れればもちろん伝えようと思います」。

『三月大歌舞伎』で勤める『河内山』の河内山宗俊についても触れた。

「これも好きな狂言です。私が勤めるときは必ず『質見世』の場から上演することにしているんですね。そうでないと初めてご覧になるお客様には、台詞だけでは何が起きているのかわからないと思いますので」。

河内山宗俊は幕府お抱えのお数寄屋坊主。上野寛永寺から使わされた北谷道海という高僧に化け、単身松江候の屋敷へと乗り込む。

『河内山』(H27.1大阪松竹座)河内山宗俊=片岡仁左衛門 撮影:福田尚武

「どんな悪人であっても、河内山がご直参であることを頭に置いておかなくてはなりません。下品にならないように。人間の大きさが出るように。かといってことさらに大きく見せるのではなく、今までの積み重ねを自然に出せればと思いますね」。

悪に強きは善にもと、という河竹黙阿弥らしい七五調の台詞で知られる。

「七五調で気をつけないといけないのは、言葉のリアルさを失いやすいことなんです。下座に乗って同じリズムで言うと、お客様が言葉の中から受け取れる意味が少なくなりがちなんですよ。リズムの運びを変える、緩急をつけることで頭に入ってくる言葉の意味が増えると思っていますので、そこは気をつけたい」。

『河内山』(平成24年2月新橋演舞場)河内山宗俊=片岡仁左衛門(C)松竹

勤めるたびに台本を読み込み、どういう人物か、何が起きているのかが分かりやすく伝わるよう腐心する。

「役が決まるとまずは映像を見てみる。そうすると自分でも分かりにくいところが出てくるので、そこから台本にチェックを入れていきます。自分で分からなかったらお客様も分かりにくいはず。お客様に分かっていただかないと値打ちがないですから。イヤホンガイドもありますが、できれば私の言葉でストレートにお客様の気持ちに訴えられればと思います」。

片岡仁左衛門 (C)松竹

『二月大歌舞伎』は2月1日(火)から25日(金)まで、『三月大歌舞伎』は3月3日(木)から28日(月)まで、東京・東銀座の歌舞伎座にて。

取材・文:五十川晶子

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