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松下洸平「常に“音楽ファースト”であり続けた服部良一さんの魅力を伝えたい」―音楽劇『夜来香ラプソディ』にかける想い

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松下洸平  撮影:源賀津己

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上海を舞台にした歴史音楽劇として、2017年の音楽劇『魔都夜曲』に続き上演される音楽劇『夜来香(イエライシャン)ラプソディ』。第二次世界大戦末期、“魔都”と称された上海を舞台に、音楽家たちの友情と、激動の時代を華やかに描き出す。そこで主人公の服部良一を演じる松下洸平に、作品にかける想いを訊いた。

お洒落で斬新で懐かしい、服部サウンドの魅力

――今回松下さんは、第二次世界大戦末期、当時まだ新進気鋭だった音楽家の服部良一さんを演じられます。

当時服部さんはとにかく音楽をやりたい、ジャズが好きだって想いを抱いて上海に渡ることになるわけですが、その情熱は本当にすごいなと思います。ただもちろん怖さもあったでしょうし、実際かなりご苦労もされたようなんです。それでも常に“音楽ファースト”であり続け、その後の日本歌謡曲の世界に大きな影響を与えた。先日、服部さんのお孫さんにお話を伺う機会があったんですが、ご本人はとにかく優しくて、常に笑顔の絶えない方だったそうなんです。そういう方だったからこそ、あれだけの時代を切り抜け、素晴らしい音楽を作り続けることが出来たんだなと。僕が今回演じる服部さんの中にも、そういった部分はエッセンスとして混ぜていけたらいいなと思っています。

――音楽家としての一面も持つ松下さんから見て、服部さんの楽曲のどんなところに魅力を感じますか?

当時上海で見聞きしたジャズの世界観というのは、日本にいるころよりもずっと華やかで、特別な響きがあったと思うんです。まずルーツとなるアメリカのジャズがあり、服部さんいわく“中華風”の上海のジャズがあり、それらの刺激を受けた日本人の服部さんが作る。だからこそとても独特で、服部さんにしか作れない楽曲になっていったんだろうなと。さらに戦後の日本を元気にしたいという想いもあって、服部さんの音楽って非常に大衆性の高いものだと思うんです。誰もが踊れて、お洒落で、斬新で、でも懐かしさも感じる。それこそが服部さんの音楽の魅力だなと。日本人にとって普遍的であり、今でも惹きつけられるものがあるのは、そういった理由からだと思います。

――演出を手がけるのは、『魔都夜曲』に続いて河原雅彦さん。松下さんとは3度目の顔合わせとなります。

河原さんは本当に優しい方ですね。とても柔軟で、俳優にとことんつき合ってくれる。僕自身、あまり早くから答えを出さないタイプなのですが、一緒になって悩んでくれて。また河原さんもいろいろなことを試したいタイプの演出家さんなので、稽古終盤でも新しいことにトライしたりするんです。その時にどんな景色が見えるのか、河原さんが見たい景色はどんなものなのか。全身全霊で探る時間が僕はとても好きです。

稽古場では誰よりも悩み、苦しんでいたい

――中国人音楽家・黎錦光さん役の白洲迅さんなど、共演者にも強力な面々がそろいましたね。

白洲くんは同じ事務所の後輩で、入所時から知っているんですが、一緒にお芝居をするのは今回が初めて。たくさんの荒波に揉まれた彼が、今放つエネルギーを、存分に味わいたいなと思っています。(山内)圭哉さんにはずっと、「洸平くんはホンマアホやな~」と言われてきたので(笑)、このまま「アホやな~」って言われる存在でいたいですね。やまにい(=山西惇)とは『木の上の軍隊』という作品で長くご一緒して、数えきれないほど助けていただきましたし、僕のお芝居の師匠のような人。だから今回の共演で、少しでも成長したなと思っていただけたらいいなと思います。あとは上山竜治くん。僕は彼の持っている“陽”のエネルギーが大好きですし、彼がいると現場がいつも明るくなる。今回もそのエネルギーを発揮してもらって、いい稽古場になればいいなと思います。

――そんなカンパニーの中で松下さんは主役、座長という役割を担うことになります。

もちろん責任は感じています。でもモノ作りをする上では、みんなと楽しく、あまり肩肘張らずに臨んでいきたいですね。稽古場でも上下関係を感じさせないような先輩方とずっとご一緒出来てきたってことが、今の僕の大きな財産になっているので。とはいえ大変じゃない稽古場なんてないわけで、同じゴールに向かって、みんなで「難しい、難しい」と頭を抱えながら稽古をする。それこそがいい稽古場ではないかと思います。

――座長であっても他の共演者とやることは変わらない。ただその背中で稽古場を引っ張っていきたいと?

やっぱり僕が逃げていてはいけないですし、誰よりも苦労したいですし、悩んでいたい。そしてここに行きたいんだってものを、誰よりもしっかりと持っていなければいけないと思っています。

お客様に小さな勇気を届けられる作品に

――演劇を始めとするエンタテインメント業界にとっても厳しい時代が続きますが、こんな時だからこそ、お客様にはどんな時間を届けたいと思いますか?

エンタテインメントが制限された時代だという点では、この作品の時代と現代とでリンクする部分はあるのではないかと思います。そんな中でも自分たちが大切にしたいものを必ず念頭に置いて、考えることをやめない。そういったことが人間にとってはとても大切であり、生きていく上での原動力になっていくのではないかなと。今回は僕ら自身、『夜来香ラプソディ』という作品に救われる機会が多くなりそうな気がしますし、それを観ているお客様にも、なにか小さな勇気をお届け出来たらいいなと思います。

取材・文:野上瑠美子 撮影:源賀津己



cube 25th presents音楽劇『夜来香(イエライシャン)ラプソディ』

演出:河原雅彦
音楽:本間昭光
出演:松下洸平、白洲迅、木下晴香、壮一帆、上山竜治、夢咲ねね、仙名彩世、山内圭哉、山西惇ほか

2022年3月12日(土)〜3月27日(日)
会場:東京・Bunkamuraシアターコクーン
東京公演後、4月16日まで名古屋・大阪・長岡公演あり

2月12日(土)10:00よりチケット一般発売開始!

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