日向秀和、吉田一郎、MIYA……ZAZEN BOYS歴代ベーシストの特徴を探る
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ZAZEN BOYSが12月6日の赤坂BLITZを皮切りに恒例の『TOUR MATSURI SESSION』を開催する。昨年12月のツアーをもって、10年間という長きに渡ってベーシストを務めた吉田一郎が脱退。今年の夏から385のMIYAを迎えて、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』や『BAYCAMP』に出演するなどしているが、新体制でのツアーは初となる。本稿ではこれを機に、ZAZEN BOYSの歴代ベーシストを振り返るとともに、新ベーシストのMIYAを改めてクローズアップしてみたい。
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バンド結成時の2003年から、初代ベーシストを務めたのは日向秀和。当時はART-SCHOOLのメンバーとして、ロックファンにはすでに広く知られた存在であり、元NUMBER GIRLのアヒト・イナザワとのリズム隊は強烈なインパクトを与えた。
そもそも、ZAZEN BOYSというバンドは、Led Zeppelinのように個の立ったプレイヤーがぶつかり合いつつ、ロックはもちろん、ジャズ、ファンク、ヒップホップといったブラックミュージックのエッセンスも含んだ音楽性を志向して始まっている。日向はそれまでロックベーシストのイメージが強かったように思うが、もともとはヒップホップやR&Bを愛聴していて、そのセンスがここで開花したと言えよう。
2005年には元ズボンズのメンバーとして“PUNK TO FUNK”を体現していた松下敦を新ドラマーに迎えることで、日向のベースもさらにグルーヴを増し、2006年に発表された『ZAZEN BOYSⅢ』はバンドの最初の到達点となった。
2007年に二代目のベーシストとしてバンドに加入したのは、吉田一郎。ベースボーカルを担当したバンド12939dbや、NINE DAYS WONDERのサポートなどで活動していたが、日向に比べれば当時の知名度は低く、ファンには期待と不安を持って迎えられたように思う。しかし、テクニックはもちろん、修道僧のようでもあり、どこかコミカルなキャラクターは、ZAZEN BOYSに非常にフィットしていた。
NINE DAYS WONDERはもともと90年代末に激情ハードコアバンドとしてスタートしているが、結成10年目にサイトウケンスケのソロプロジェクト・9dwとして再始動し、吉田が参加した2008年発表の『9dw』ではアナログシンセを用いたエレクトロニックな質感のフュージョンを展開。これは同年に発表された『ZAZEN BOYS4』ともリンクしていたと言える。吉田が「吉田一郎不可触世界」名義で2015年に発表したソロアルバム『あぱんだ』も、ブラコンの要素がある作品で、やはり黒い要素はバンドにとって欠かせなかったのだ。
昨年加入したZAZEN BOYS初の女性メンバーであるMIYAは、1997年に地元沖縄で女性3人組のハードコアバンド・BLEACHを結成。メジャーデビューやアメリカツアーを経験するも2009年に解散し、それと前後して結成された385のメンバーとして上京している。ハードコア、ファンク、プログレを織り交ぜた音楽性はZAZEN BOYSとも親和性が高く、特に元School Food Punishment/現Siraphの蓮尾理之をキーボードに迎え、2013年に発表した『人間』は素晴らしい作品だった。
MIYA個人としては、MIYAVIが2011年に複数のベーシストとコラボした『WHAT’S MY NAME? e.p.』に参加し、この作品には日向秀和と吉田一郎も参加。また、同じくこの作品に参加していたKenKenとは親交が深く、つい先日もKenKenが沖縄で企画した『KenKenの宴 2DAYS』に385として出演している。
MIYAの特徴と言えば、野性味溢れるプレイスタイルで、特に強靭なスラップベースは前任の二者にも決して劣らない。また、以前筆者がインタビューをした際には、プリンス好きを公言し、生ものとしてライブを重視する考え方を語ってくれていて、ここも向井とシンクロする部分が大きく、彼女の加入はまさに納得だ。
ZAZEN BOYSが現時点での最新作『すとーりーず』を発表してから6年が経過。向井は向井秀徳アコースティック&エレクトリックやKIMONOSとしてのライブ活動、宮藤官九郎作品での音楽制作といった個人としての動きが目立ち、先日もNHK『シャキーン!』での人間椅子・鈴木研一との紙相撲バトルが大きな話題を呼んだ。
その一方、MATSURI STUDIOで繰り返されるセッションによって、メンバーの呼吸を合わせ、そこから独創的な楽曲を構築していくZAZEN BOYSは、簡単には動かせなかったのだろう。しかし、MIYAの加入が新たな起爆剤となることは間違いない。12月のツアーは今後のバンドの行方を占う意味でも、必見のツアーである。(金子厚武)