誰の家にもきっとある！愛すべき「おかんアート」の魅力に迫る 　『Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村』東京都渋谷公園通りギャラリーで開催中

コロナ禍で久々に田舎に帰ったら、テレビの横にタオル犬が飾られてた（涙）。こっちは東京でミニマルでおしゃれな生活してるのに〜。そんなあなたにこそ、今、渋谷のド真ん中で愛を叫んでいる「おかんアート」を見てほしい！　母たちの手芸品、通称「おかんアート」を紹介する展覧会『Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村』が4月10日（日）まで東京都渋谷公園通りギャラリーで開かれている。作家・編集者・写真家の都築響一さんと「下町レトロに首っ丈の会」の共同キュレーションで、20人を超えるおかんアーティストの1000点を超える作品が集結しているのだ。

むろん、おかんたちにアートという意識はない。誰が「おかんアート」と名付けたのかも不明だ。2003年に２ちゃんねるで「脱力のオカンアートの世界」というスレッドが立ったのが最初であるらしい。都築さんと「おかんアート」の出会いは2000年代初め、「道の駅」にある地元の手作り手芸コーナーだった。一方、神戸の下町コミュニティをサポートする「下町レトロに首っ丈の会」でも地域の「おかんアート」に気づいたという。

プレゼンテーションルームのような会場構成で、おかんアートの見え方が変わる。「おかんアートタワー」には、毛糸やビーズから軍手、チラシなど日常にありふれた素材でつくられた作品の数々が並ぶ。作品１点１点を端正に撮影した写真や、おかんアーティストのポートレートが、壁一面に堂々と展示されている。

おかんアートの特色は、「まず断捨離はしない。荷物の紐とか冷蔵庫の脇に貯めていた紙袋とか、そこにあるものを素材とすること」「実用と装飾の境界がないこと」「片付けの終わった夜の台所などでつくれる、小さな作品が多いこと」。性別や地域による区別はない。

全国の手芸店から販売されていた「手芸キット」も多数展示されている。同じような作品が一斉に出現するのはこのためだ！　それでいて作り手のユニークさが現れる。皆で集まっておしゃべりしながらつくる「おかんコミュニティ」が全国にあるのだ。

トリを飾るのは、都築さんのキュレーションで、おかんアートに限りなく近く、なおかつ独創的なアーティストを紹介する「おかん宇宙のはぐれ星」のコーナー。名画座「早稲田松竹」で清掃の仕事をするかたわら、惣菜パックなどでジオラマをつくり館内に飾っていた荻野ユキ子さん、新聞紙でバッグなどをつくる嶋暎子さん、チラシの箱をつくる野村知広さんの3人だ。特に、嶋暎子さんがチラシから切り抜いたモチーフで制作した巨大コラージュ作品に圧倒される。

「おかんアートはやっている人が多いのに、マジョリティーだからと逆に無視されている」と都築さんは語る。だからこそ「おかんアート」を見直すことで「アーティストは特別な存在」「アートは学ばなければできない」といった既成概念を変えたいのだ。フランスの人類学者レヴィ＝ストロースは、ありあわせの道具や材料を用いて自分の手でものをつくる器用仕事を「ブリコラージュ」と言った。身近におかんアートがある実家も、決してアートから遠い場所ではない。この展覧会ではSNSで投稿も集めている。ぜひ参加してほしい。

取材・文：白坂由里　撮影：源賀津己

【開催情報】
『Museum of Mom’s Art　ニッポン国おかんアート村』
2022年1月22日（土）～ 4月10日（日）、東京都渋谷公園通りギャラリーにて開催
https://inclusion-art.jp/

【関連イベント】
■「おかんアート村　クラウド・ミュージアム」
近所で見つけたおかんアート、ご自身やご家族が作っているおかんアートなど、「おかんアート」作品や制作している様子の写真・動画をハッシュタグ「#おかんアート村」をつけてTwitter またはInstagram に投稿しよう。（１投稿につき画像1枚ずつ。画像比率1：1 推奨）　投稿された画像は、東京都渋谷公園通りギャラリー 特設ウェブサイト（https://inclusion-art.jp/archive/event/2022/20220122-128.html）や、展覧会会場内モニターでも見ることができる。

■トークイベント
（1）キュレーターズトーク
出演：都築響一、山下香（下町レトロに首っ丈の会）
開催日：会期中に配信予定（決まり次第お知らせします。）
会場：東京都渋谷公園通りギャラリーのYouTubeチャンネル（https://www.youtube.com/c/skdgallery_tokyo）

（2）都築響一によるギャラリートーク
開催日：2022年3月4日（金）18:00～18:30（東京都渋谷公園通りギャラリーInstagram〈＠skdgallery_tokyo〉でライブ配信予定
2022年3月19日（土）14:00～14:30（手話通訳付）
会場：東京都渋谷公園通りギャラリー
※会場での参加は、定員に達したため申込受付を終了しました。