修復によりキューピッドが現れた《窓辺で手紙を読む女》は見逃せない! 『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』東京都美術館にて開幕
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ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》1657-59年頃 ドレスデン国立古典絵画館蔵
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すべて見るコロナ感染拡大の影響で開幕延期となっていた『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』が2月10日(木)についに開幕。4月3日(日)まで開催されている。何といっても注目作品は17世紀オランダを代表する画家、フェルメールの初期の傑作《窓辺で手紙を読む女》。修復が施され、画中の壁にキューピッドが描かれた本来の姿を見ることができる。修復後の姿が所蔵館以外で公開されるのは、初めてのことだ。
ドレスデン国立古典絵画館は、ヨーロッパの古典絵画、特に15世紀から18世紀の絵画を多く所蔵していることで知られているドイツの美術館だ。同展は、このドレスデン国立古典絵画館が所蔵するフェルメールをはじめとする17世紀オランダ絵画の名品を紹介するもの。フェルメールのほか、17世紀オランダ絵画を代表するレンブラント、メツー、ライスダール、ヤン・ステーンらの作品約70点が展示されている。
展覧会は全7章で構成されている。冒頭の章「レンブラントとオランダの肖像画」では、17世紀に著しい発展を遂げたオランダの肖像画を、レンブラントやハルスらの作品で紐解いていく。続く「複製版画」の章では、18世紀から19世紀にかけて制作されたドレスデン国立古典絵画館の所蔵作品の複製版画を紹介。当時の肖像画、風俗画の盛り上がりをたどる。同館の所蔵作品の素晴らしさを世に広めるために制作されたこれらの複製版画からも、当時から素晴らしいコレクションを形成していたことが見て取れる。
「レイデンの画家──ザクセン選帝侯たちが愛した作品」の章では、ドレスデン国立古典絵画館のあるレイデンの画家たちの作品を取り上げる。メツーやテル・ポルフ、ダウらの作品は、当時の裕福な市民からも絶大な支持を受けていたという。
そして、いよいよメインとなる「《窓辺で手紙を読む女》の調査と修復」の章へ。
本作品は、1979年に行われたX線調査で背後の壁に画中画が描かれていることが判明。2017年より修復が開始され、上塗りされた絵の具を丁寧に取り除く作業が開始された。そして2019年に、壁からフェルメールが描いたキューピッドが出現。作品の佇まいは大きく変化した。
同展では、修復前の《窓辺で手紙を読む女》の複製画を作品の隣に配置。修復前後の違いを見比べることができるようになっている。
また、この世紀の大修復の過程を映像資料やパネルなどで紹介。気も遠くなるほどの緻密な作業が行われていたことがわかる。
フェルメールが得意とした風俗画のほか、オランダでは新しい絵画ジャンルが次々に生まれていた。「オランダの静物画―コレクターが愛したアイテム」の章では、16世紀後半以降に生まれた静物画を取り上げる。トロンプ・ルイユ(だまし絵)や、花や果物をモチーフにした静物画は、貿易で富を築いた市民に非常に人気があった。
「オランダの風景画」では、17世紀オランダで人気のジャンルだった風景画を展示する。オランダより先に風景画が成立していた南部フランドル地方では、風景画は理想に基づいた架空世界であることが多いが、一方、オランダの画家たちが描く風景画は、特に1630年代以降においては、自分たちの身近にある自然をモチーフとした。画家たちは自らが見た体験に基づいた風景画の制作に勤しんでいた。
最終章となる「聖書の登場人物と市井の人々」では、17世紀オランダで描かれていた歴史画を取り上げる。あらゆる絵画ジャンルの頂点とされていた歴史画と風景画、風俗画はそれぞれに影響を与えあっていたようだ。
修復されたフェルメールの名作とともに、17世紀のオランダ絵画の良品をたっぷりと鑑賞することができる展覧会。この機会を逃さないようにしよう。
取材・文:浦島茂世
【開催概要】
『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』
2月10日(木)~4月3日(日)、東京都美術館にて開催
※日時指定予約制。詳細は公式HPにてご確認下さい。
https://www.dresden-vermeer.jp/
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