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イニエスタが日本行きを意識したキッカケは、バルセロナの盟友の勘違い!?

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Jリーグの30年目となるシーズン開幕を前に、『イニエスタ・ジャパン! 日本に学んだ 人生で大切なこと』を読んだ。日本でアンドレス・イニエスタが見られる幸福をあらためて噛み締めつつ、人間は忘れる生き物だと痛感させたられた。

スペインの至宝がヴィッセル神戸と契約を交わしたのは2018年5月24日のこと。あの日受けた衝撃も、7月22日・湘南ベルマーレ戦でのJ1デビューのドキドキも、2019シーズンのポドルスキ、ビジャとの超豪華揃い踏みのワクワクも、2020年1月1日・国立競技場・『天皇杯』決勝・鹿島アントラーズ戦での初タイトル獲得の興奮も、2021年5月11日に2年間の契約延長を発表した際の安堵も、徐々に薄れていた。Jリーグにイニエスタがいる光景が当たり前になっていたのだ。

この物語は持って生まれた強靭なフィジカルとメンタルを兼ね備えた選ばれし者が日々の超人的な鍛錬によって世界の頂点を駆け上がるサクセスストーリーでもなければ、バルセロナFC、スペイン代表であまたのタイトルを獲得してきたスーパースターによる日本での冒険譚でもない。

本書では親元を離れてバルセロナの育成組織ラ・マシアへ身を投じた12歳の少年の不安と覚悟が刻まれている。プロとして大事な姿勢や家族の重要性が語られている。『UEFA チャンピオンズリーグ 2018-2019』決勝・マンチェスター・ユナイテッド戦、『アジアチャンピオンズリーグ 2020』準々決勝・水原三星戦でのケガの真相が綴られている。あらためてうつ病を患ったときの絶望も振り返られている。そして日本行きを決めたエピソードも収められている。

5年前の加入発表記者会見の席で、イニエスタは移籍の決め手を「ヴィッセル神戸に提示されたプロジェクトが興味深かったから。神戸は人としてプレイヤーとして私を信頼してくれました。私は日本の文化を楽しみ、プレーを楽しみたいと思います。一番重要なことはその国の文化に馴染むことです。この国の文化の一部になりたいと思っています」と語っている。

本書でも、

「私は三木谷オーナーが説くプロジェクトに興奮しました。もともと〝ゼロ〞からスタートできるプロジェクトを望んでいた私は、感激しました。
どんなに条件のいいオファーよりも、クラブを率いるトップの確固たる信念や行動力、気配りに高い価値があることがあります。まだまだ歴史の浅いクラブでも、オーナーをはじめ全員が本気でクラブを変えようとしていることが伝わってきました。」
と記されている。
では、なぜイニエスタは“日本”“ヴィッセル神戸”を意識するようになったのか。本書では意外なエピソードが明かされている。

「ある日、突然ひとりの仲間が近づいてきて私に尋ねました。
“中国の件は決まったかい?”
それは、カタルーニャの州都バルセロナから南へ延びる美しいディアゴナール通りを数キロ走った、サン・ジュアン・ダスピにあるバルサのクラブハウスでトレーニングをしていたとき。話しかけてきたのは、チームメイトのジェラール・ピケでした。」

バルセロナ、スペイン代表の盟友の言葉によって、
「私の頭のなかには明確に存在していなかった答えが、あのピケの一言によって逆に芽生えました。消されていた部屋の灯りがいきなりつけられたように。私が考えを巡らせていた果てしない日々のなかで突然パッと、明々と。想像すらしていなかった“日本”という選択肢が私の中に湧いて出たのです。」

日本のサッカーファンはピケに感謝しなければならない。なぜなら、彼の勘違いがキッカケとなり、今季もJリーグでイニエスタの色褪せぬ美技の数々を目撃することができるのだから。

『2022明治安田生命J1リーグ』は2月18日に開幕する。イニエスタを擁する神戸は翌19日(土)・名古屋グランパス戦から熱戦の火ぶたを切って落とす。

文:碧山緒里摩(ぴあ)
Photo:AFLO

『イニエスタ・ジャパン! 日本に学んだ 人生で大切なこと』
著者:アンドレス イニエスタ
発行:ぴあ株式会社
定価:1,650 円(税込)
版型:四六判/無線綴じ/216P
ヴィッセル神戸オフィシャルグッズショップ、全国の書店、ネット書店にて発売
https://book.pia.co.jp/book/b597992.html

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