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加藤和樹×水田航生 尊敬し合う関係のふたりが挑む、愛憎劇『冬のライオン』稽古場インタビュー

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加藤和樹×水田航生  撮影:源賀津己

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英国国王ヘンリー二世とその家族を軸にが、愛と憎しみと欲望をたぎらせて激突する舞台『冬のライオン』。森新太郎の演出のもと、ヘンリー役の佐々木蔵之介や王妃エレノア役の高畑淳子など巧者揃いの布陣によって、赤裸々な権力争いのドラマが幕を開けようとしている。初日を目前に、長男リチャードを演じる加藤和樹、フランス王フィリップに扮する水田航生、人気と実力を兼ね備えた精鋭ふたりが、熱量高い稽古場での奮闘の日々を語る!

遠い中世の物語というより意外に身近な、家族間の揉め事

――開幕も間近ですが、稽古場ではどんな手応えを得ていらっしゃいますか? 作品の印象の変化、発見などもお聞きしたいです。

水田 いや、「手応えがある」なんて言ったら(演出の)森さんに刺されるので〜。

加藤 ハッハッハ!

水田 稽古場で起きていること、言われることをまだまだ純粋に吸収している段階で、必死です(笑)! 作品については、最初に思っていた感じとはガラッと変わりましたね。最初はすごく構えていた部分があったんですが、結構笑いどころが多く、今は皆で楽しく、笑いながら稽古が進んでいる状況です。

加藤 僕も、最初に4日間の本読みをやった時と、立ち稽古に入った現段階では、まったく印象が違いますね。最初、それぞれが思い描くイメージで各キャラクターを作って、読んでいた時に、森さんが「これ、コメディなんで」っておっしゃって。初めは意味がわからなかったけれど、立ち稽古を重ねていくなかで、あ〜確かにコメディかもしれないと思い始めたんです。佐々木蔵之介さんと高畑淳子さんが演じるヘンリー王と王妃エレノアのやりとりも、見ていてついクスッと笑ってしまうくらい面白くて。最初は取っ付きにくい、難しいお話かなと思っていたのが、だんだん我々の身近な話になっているなという感覚はありますね。

加藤和樹(手前左)・佐々木蔵之介(中央)

――英国王家を舞台にした権力争いのストーリーで、皆さんが精神的に追い詰められているのでは……と思いきや、おふたりともとても穏やかな表情をされていますね。

加藤 航生が演じるフランス王フィリップも、ヘンリーに対して負けじと向かう部分はあるんですが、やっぱり一番大変なのは蔵之介さんと淳子さんでしょうね。騙し騙され、隠し隠され、何が本音で何が嘘か。心の探り合いを繰り返していくおふたりは、相当精神的に大変じゃないかなと思います。

――おふたりが今感じている、この作品の面白さとは?

水田 さっき和樹君が言ったように、意外に身近な、家族間の揉め事と捉えると、とても共感出来るだろうなと。我々の周りの家族だってこうやってケンカしているんじゃないかな〜とか想像を膨らませながら楽しんでいただけるのではと思います。夫婦でものすごいケンカをしているけど、結局お互い、やっぱり好きなんやろ? それに巻き込まんといて〜!みたいな。(一同笑)

左から、佐々木蔵之介・高畑淳子

加藤 3人の子供たちやフィリップが翻弄され、巻き込まれていくんですけど、子供たちは子供たちで、親の愛をものすごく欲しているわけですよね。でも素直に受け入れられなかったり、ひねくれたり。見ていて、あ〜こういう反抗期の子供いるよな、自分にもそういう時期があったよなと思うんじゃないかと(笑)。とくに僕が演じる長男リチャードは、母親エレノアとの関係性がほかのふたりの兄弟よりも強くて、密なんです。その距離感を、淳子さんと一緒に作り上げていくのがとても面白くて。中世の物語をやっているという感覚はあまりないですね。

フランス王フィリップのイメージは「Siri」?!

――水田さんが演じるフランス王フィリップ、加藤さんが演じる長男リチャード、それぞれをどのような人物として立ち上げようとしているのでしょうか。

水田 最初に森さんに言われたのは、「Siriみたいにやって」と。それは、“機械的で、心の内を表に出さない”という意味での例えだと思うんですが、そう言われて、え!?って。とりあえずSiriを調べるところから始めました。「Hey,Siri!」って言うところから(笑)。

加藤 最初、面白かったよ〜! 本当にSiriみたいだったから(笑)。

水田 最初はSiriみたいな話し方でやっていたんですが、そこから稽古を積んでいく中で徐々に変化して来ています。根本的には、王としての毅然とした立ち居振る舞いと、内に隠した煮えたぎるような思い、そのギャップの面白さですよね。心の中はすごく熱いけど、クールぶって「動じないぜ、俺は」というフィリップを今、作り上げているところです。

加藤 皆それぞれ、「〇〇みたいにやって」と言われているんですよね。僕が言われたのは元力士のある方で(笑)。自分の本音を言いたくても言えない、そんな態度の例えらしく、とくに母エレノアとのやりとりの稽古中に「今だよ、○○○!」って声がかかったり(笑)。リチャードは“獅子心王”と呼ばれるほどに戦に長けた人物なので、最初はもっと感情の起伏が激しい人として作っていたんです。でもそうではなく、胸の奥に本音をずっと隠して、フツフツとたぎらせている青年なんだなと。森さんには「感情をパン!と頂点に持っていかずに、淡々としたトーンで、本音を隠してほしい」と言われています。最初は少し戸惑いましたけど、稽古をしていくうちに体と心がリチャードとしていられるようになって来ていて、ちょっと不思議な感覚ですね。

水田 フィリップとリチャードは、似ている部分があるかも。

加藤 そう、このふたりの腹の探り合いみたいなものも、すごく淡々と進んでいく感じだよね。

――おふたりともに初体験の森新太郎演出について、ここまでの感触は?

加藤 森さんはすごく優しくて、ご自身の中に思い描いている絵がはっきりとあるので、おっしゃることが的確ですね。ちゃんとわかりやすく説明してくれたうえで稽古を進めるので、わからないままやることは絶対にないです。

水田 本当にその通り、おっしゃることがすごく理にかなっているなと感じます。森さんのひとことで、細かな疑問の一つひとつがクリアになっていくんですよね。

手前左から佐々木蔵之介・葵わかな・水田航生

加藤 稽古前と稽古が終わった後、森さんが台本を手に、セットのところを歩きながら考えていて。たぶん役者の立場になって、実際に動いてみているんだなと。この台詞でこっちには行けないな……とか、気持ちの伴わない動き、現実的に無理なことは絶対にさせない方ですね。

水田 森さんの稽古はすごく濃密です。約6時間、実がパンパンに詰まりまくっている感じで、お芝居をやった〜!って気持ちになれる(笑)。充実しています。

――そして先ほどお名前の上がった佐々木蔵之介さんと高畑淳子さん。稽古場で、ふたりの大先輩からどんな刺激を受けていらっしゃるのでしょうか。

加藤 おふたりともにエネルギッシュで、お互いに気を遣わないところが(笑)役にピタッとハマっています。とくに淳子さんは、森さんに言われたこと全部を全身で表現しようとするので、その姿勢は見習わなきゃなと。ちょっとした小返しでも本気でやるようにしていますね。

佐々木蔵之介

水田 淳子さんは100%全力じゃなく、150%くらいだよね(笑)。稽古場から本番以上のパワーで挑んでいる姿はすごくカッコいいです。ワンシーンごと着実に、どんどん完成度を上げていくところを目の当たりにして、本当に素晴らしい役者さんだなと。蔵之介さんは、僕は2回目の共演なんです。今日ガッツリと絡むシーンを稽古したんですけど、やっぱり蔵之介さんと芝居するのは楽しいな!って、僕の中のリトルミズタが叫んでいました。(一同笑)顔の表情や雰囲気だけで多くを伝えることが出来る、第一級の役者さんだなと思います。

共演する度に“お近づきになる”

――おふたりは、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(13年上演)と『怪人と探偵』(19年上演)に続き、今回が3度目の共演ですね。

加藤 今回の稽古に入る前に、航生に「よろしくね!」と言いました。お互いに支え合っている感じですね。イングランド王家の家族の前に、フランス王としてフィリップが登場するシーンがすごくサマになってる……って言ったらエラそうだけど(笑)、空気をガラッと変えるんですよね。そこはすごいな!と。

水田 嬉しい〜。

加藤 スタイルがいいし、歩き方に雰囲気が滲み出ていて、航生ならではのフィリップという感じがします。

水田 和樹君とは、最初は殺し合う仲で(注:『ロミオ&ジュリエット』で加藤がティボルト役、水田がマーキューシオ役)、次の作品では師弟関係になり、そして今回は……! 回を重ねるごとにどんどんお近づきになっていって(笑)。和樹君のリチャードは、まさしく獅子心王と呼ばれる立ち居振る舞いですし、台詞もすごく勢いがあってピッタリです。

――今回おふたりがどんなふうに“お近づきになる”のか気になります! 劇場でしっかり目撃したいと思います。

水田 かしこまる必要はまったくないので、フラットな心で観ていただきたいですね。人と人との関わり合いがあまり持てない時代だからこそ、これだけの愛憎が詰まったドラマを通して、人と人とのつながり、そこから生まれるものを感じ取っていただけたら嬉しいなと思います。

加藤 言葉が滝のようにザーッと流れてくるので、聞き取るのに集中力がいる作品かなと思うんですね。でも、森さんが舞台セットをシンプルに作っているので、きっと役者が吐き出す言葉に集中できると思います。航生も言ったように、誰もが愛を求めていながら、嘘や騙し合いを重ね、悲劇をも生む物語です。そんな人々の姿を見て、もっと相手に本音を言って、優しくなろう、と思う作品になるんじゃないかなと。ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。



取材・文:上野紀子 撮影:源賀津己(稽古中の写真を除く)



『冬のライオン』
2022年2月26日(土)~2022年3月15日(火)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス

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