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青柳翔、戦前の銀幕スターを描いた舞台『三十郎大活劇』は「今やることに意味がある」

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青柳翔 撮影:川野結李歌

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鈴木聡の脚本で1994年に初演された名作で、戦前の日本映画界の激動を駆け抜けた若者たちの青春を描いた『三十郎大活劇』がラサール石井の演出でこの4月よりリバイバル上演される。大部屋役者から一夜にして銀幕スターに駆け上がった主人公・紅三十郎を演じるのは、劇団EXLIEの青柳翔。初演から28年を経て、本作が現代の観客に響くものになるという青柳の“確信”とは――? 稽古開始を前に話を聞いた。

――最初にオファーが届いて、戯曲を読まれての感想、魅力に感じた部分を教えてください。

青柳 この作品に含まれている熱やメッセージ性が、今のお客さん――当時の時代(戦前の日本映画界の黄金期)を分からないお客さんにも、稽古して努力すれば伝わるんじゃないかと思いました。

1994年に初演されていて、その頃の人よりも僕の方が明らかに時代背景が分からない状態ではあるので、もちろん下調べをして、いろんな作品を見て研究した上で、今やることの意味などを稽古を通じて模索して、本番でお客さんに感じていただけたらという印象です。

――特に青柳さんが感じた“熱”や“メッセージ性”とはどういったものでしょうか?

青柳 たとえば、今「こういう描写はダメ」、「こういう作風はダメ」、「スポンサーがいるのでこういうのはダメ」、「映画ならできます……でもR指定が入ります」とかってよくありますよね。もちろん、いろんな方に協力していただいて作品を作っているので、さまざまな配慮が必要なのは当然ですが、ものを作る上で制限され過ぎてしまう現状は、僕自身、あまり良くはないと思っていて、この作品にはそういうメッセージがあるんじゃないかと感じています。

――そういう部分に関しては、もしかしたら1994年当時よりも今の方が、人々の心に響くかもしれませんね?

青柳 そんな気がしています。今やる意味がすごくあるなと思って、(劇中の時代に撮られた)昔の作品を観ています。この物語の時代の前後の銀幕スターの作品ですね。もちろんカッコいい部分はたくさんあります。この監督だから単調な言い回しでも渋く見えるという人もいますし、すごく風を浴びて立っていてこれは現代でやったらコメディだなというのもあったり。そういう滑稽さみたいなものも表現できたら楽しい舞台になるんじゃないかな?とか考えたり。「なんでそんなに前を見た?」「今、なんで首をカクっとした?」「舌出した?」、「常に爪楊枝を持ってるね!」など、いろいろあるんですが(笑)、そういう部分も楽しんでいただける舞台にできたらと思います。

――青柳さんは、紅三十郎というのはどんな男だと感じていますか?

青柳 そこがすごく難しくて、悪い人ではないけれど、その節々にどう捉えたらいいのか分からないセリフが結構あって、「野心なのか? 他人を悪く言っているようにも聞こえるし、でも悪い人ではないので、研究し甲斐があるよね」という話をラサールさんともしました。悪い人ではないんですよ、基本的には。その部分に関して、どうギラつかせて表現するかは研究していくしかないなと思っています。

ラサールさんは「当時の銀幕スターの新しい人が出てきたときのような佇まいを演じてくれたら」とおっしゃっていました。そこは今、さまざまな作品を観て勉強しています。

演劇への出演は“筋トレみたいなもの”

――過去の作品を観ながら、当時の銀幕スターに憧れの念を抱く部分は?

青柳 やっぱり、三船敏郎さんはカッコいいですよね。本当にカッコいいです。セリフ回しとかは単調なイメージなんですけど、そこもカッコいい。殺陣に関しても、当時は映像のスピードを変えて早く見せる技術がないですけど、それであのスピードということは、相当速いんですよ。聞くところによると、家で真剣を使ってロウソク斬りをしていたとか……。今、やったら相当ヤバいですけど(笑)。

――実際に参考資料としてどんな作品を観ているんでしょうか?

青柳 『用心棒』は前にも観たことはありましたが、もう一度、観ました。カッコよかったですね。『椿三十郎』もまた観ましたけど、やたら肩を回していました(笑)。あとは、『血煙高田の馬場』は、酔っ払いの演技が多くて、そこは参考になるか分かりませんけど、走るシーンがあって――それは今回の舞台でもあるんですが――躍動感があって、参考になりそうですし、最後の立ち回り(高田馬場の決闘シーン)もすごかったです。

あとは『丹下左膳余話 百萬両の壺』も観ました。見栄を切って首を動かす動きがすごく気になったんですけど、家で鏡を見ながらやってもなかなかできないんですよ(苦笑)。

――ポスタービジュアルで、既に昔の銀幕スターのような髪型、衣装を披露していますが、“変身“してみていかがでしたか?

青柳 おのずと現場に入るときに(昔のスター風に)「よろしくぅ!」と言ってしまいました(笑)。

――劇団での活動に加えて映像作品、そして今回のような外部公演への出演など、多方面で活躍されていますが、青柳さんにとって演劇への出演はどういう経験でしょうか?

青柳 筋トレみたいな感覚ですかね? 舞台をやっていないと、俳優としての能力が低下していく気がするんです。身体や脳、お芝居の質も含めて。スケジュールが合うなら、できるだけ頻繁に、年に1~2回はやりたいとマネージャーにも伝えています。

1カ月にわたって稽古を詰めるので、そこはとても面白いですし、その分、よいものを見せなくてはいけないプレッシャーはありますけど、役者としては嬉しいですね。それまでひとりで考えて作ってきたものを寄せ集めて、みんなで稽古場で作っていくという楽しさがあって、映像作品とはまたテイストが違うんですよね。

ただ、難点として、今はコロナ禍でコミュニケーションとしてみなさんと食事などに行けないというのが、僕にとってはとても大きなことでして……。みなさんと会って、いろんな経験について話を伺ったり、芝居について話すのが好きだし、やっぱりそういうコミュニケーションで、稽古場の風通しが良くなる部分も確実にあると思います。

最近読んだある記事で、今の若い人たちはそういう“飲みにケーション”を必要としてないと書いてあって、そういう記事を読んだうえでこういうこと言うと、自分もオジサンの領域になってきたんだなと思いますが(苦笑)、自分はそれが好きなんですよね。こういう状況で仕方のないことではあるんですが、そこは残念ですね。

――コロナ禍で多くの公演が中止となり、緊急事態宣言の発出中には、演劇をはじめエンタメに対し“不要不急”ということが言われたりもしました。演劇の存在価値を考えるという意味で、今回の作品は、戦争の影が近づく中での若者たちの葛藤なども描かれており、現在の社会と重なる部分があるのでは?

青柳 本当にそのとおりだと思います。昔の時代の人々が、好きなことに情熱を捧げている青春物語だけど、そんなピュアな人たちが時代に振り回されて、好きなことができなくなって……という部分に関して、今の人たちが観て、現在の時代と重ね合わせて考えさせられる部分が多いと思います。

ただ、時代に翻弄される若者たちを描いた青春物語ですけど、あくまで喜劇ですので、今抱えている鬱憤を晴らすためにも思いっきり笑ってもらえる作品にしたいと思っています!



取材・文:黒豆直樹
撮影:川野結李歌
ヘアメイク:KOHEY
スタイリスト:Jumbo(SPEEDWHEELS)



パルコ・プロデュース『三十郎大活劇』
東京公演:新国立劇場 中劇場
4月2日(土)~4月17日(日)
大阪公演:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
4月23日(土)~4月24日(日)

ぴあアプリでは青柳翔さんのアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。

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