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『Chim↑Pom展』森美術館にて開催中 17年にわたる活動で彼らが問いかけてきたこととは?

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6人組のアーティスト・コレクティブ(複数名のアーティストのが協働する形態)、Chim↑Pomの回顧展『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』が5月29日(日)まで森美術館にて開催されている。結成以来、注目を浴び続けてきた彼らの初の本格的回顧展だ。


2005年に結成したChim↑Pomのメンバーは、卯城竜太、林靖高、エリイ、岡田将孝、稲岡求、水野俊紀の6人。現代の社会で起きている出来事や問題点を独自の視点で見つめ、ときにはユーモアや皮肉をまじえ、ときには物議を醸す作品を発表し続け現在まで至っている。同展は、結成17年目を迎えるChim↑Pomの新作を含めた本格的な回顧展となる。

《くらいんぐみゅーじあむ》2022年

展覧会は10のセクションで構成されており、順路は定められていない。美術館の出入り口にあるのは現在、託児所(予約制)であり、作品でもあるセクション《くらいんぐみゅーじあむ》。美術館に託児所を設置することで、だれもが気軽に美術館を訪れ、展覧会を鑑賞することを目指し、そして、美術業界だけでなく社会全体の子育て環境への問題提起も合わせて試みた作品だ。

二層構造になっている展示風景より 「ビルバーガー」のシリーズが並ぶ

「都市と公共性」のセクションに入ると、通常の森美術館とは異なる展示風景が広がっている。鉄パイプが張り巡らされ、上下2層にわかれた空間の下層部分には、《スーパーラット》の最新版、《スーパーラット ハッピースプリング》や、東京の空をカラスで埋め尽くした模様を綴った映像作品《ブラック・オブ・デス》、解体予定のビルを天井から床まで垂直にぶちぬき、ビル内にあった家具や家電などもまとめて固めた「ビルバーガー」のシリーズ作品など、都市を舞台にした作品、公共性を問いかける作品が並ぶ。

《スーパーラット ハッピースプリング》(2022)

《スーパーラット ハッピースプリング》は、森美術館の展示のためにネズミの形態に変更を加えた作品。渋谷や新宿に棲み着いた野良ネズミたちの捕獲シーンの映像を含めた作品となっている。

これらの作品が並べられている真上、二層にわかれた上層部分にあるのが「道」のセクションだ。アスファルトを敷き詰めた真新しい道は、世界中にある道とおなじように、人が歩き、自由に使うことができる空間だ。この展覧会中、道の上では様々なイベントやパフォーマンスが予定されているという。

美術館に作られた「道」

Chim↑Pomは、これまでにも自由に通行ができるよう私道を作ったり、美術館の屋内外に一本の長い道を作ったりするなど、さまざまな形の道を作り、そこで公共性についての問いかけを行っている。美術館内に現れた道もまた、新しい問いかけの場所となるはずだ。

「道」は各所に設けられた階段から出入りできる。

セクション「Don't Follow the Wind」は、2015年から現在に至るまで開催されている国際展の名称でもある。この国際展はChim↑Pomが発案し、国内外12組の参加作家の作品が会場に設置されている。

ただし、展覧会会場は 東京電力福島第一原子力発電所事故によって帰還困難区域内と指定された地域内にあり、一般の人は2022年になった現在も訪れることはできない。本セクションでは、この見ることができない展覧会を、サウンドインスタレーションとして展示。東京の風景を眺めつつ、福島の現在の状況に思いを馳せさせる内容となっている。

《Don't Follow the Wind》(2015/2022)

また、Chim↑Pomは広島との関わりも深い。広島の原爆ドームの上空に飛行機雲を発生させた《ヒロシマの空をピカッとさせる》は、さまざまな論争を呼んだが、その後も広島の人々と対話を重ね、プロジェクトを続けている。「ヒロシマ」のセクションでは、これまでに広島をテーマに取り組んできた作品を展示する。

「ヒロシマ」展示風景より

「東日本大震災」のセクションでは東日本大震災のさなか、渋谷駅に設置された岡本太郎の壁画《明日の神話》のそばにゲリラ的に展示された《LEVEL7feat.『明日の神話』》や、映像作品《気合い100連発》などを展示し、「エリイ」のセクションでは、Chim↑Pomメンバーのひとり、エリイが自らデモ申請を行い、新宿の路上で開催した結婚パレードを作品の形にした《ラブ・イズ・オーバー》など、エリイの多様な活動に焦点をあてた作品が展示される。

右下のカラーで描かれた作品が《LEVEL 7 feat.『明日の神話』》
《ラブ・イズ・オーバー》(2014/2022)

このほか、アメリカの国境問題をテーマにした「ジ・アザー・サイド」、コロナ禍の2020年春に制作した作品を展示する「May,2020,Tokyo」、ミュージアムショップを舞台に商品や作品を開発・販売する「金三昧」など、セクションごとにさまざまな切り口の作品が展示される。

社会の問題点やひずみを、さまざまな角度から眺め、芸術作品という形で人々に問いかけてきたChim↑Pom。託児所を開設し、美術館内に道を作ったこの展覧会そのものも、Chim↑Pomからの大きな問いかけだろう。その問いかけを、美術館のなかでぜひしっかりと受けとめ、考え、そして楽しんでみよう。

なお、森美術館とは別の場所には、サテライト会場として「ミュージアム+アーティスト共同プロジェクト・スペース」が用意されている。Chim↑Pomと美術館、立場や見解の相違ときっかけとなって生まれたこの場所では、同展とは別の作品が展示され、また議論を深める場所として今後活用されていく予定だ。この会場への入場できるのは、『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』の入場者のみ。美術館特設カウンターで申し込みを受付けている(当日予約のみ)。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』
2月18日(金)~ 5月29日(日)、森美術館にて開催

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